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ロシアのネオナチ戦闘部隊「ルシッチ」がプーチンに戦線離脱を通告、ワグネルに続く反乱になるか

2023-08-30 01:15:56 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


  ロシア民族統一の日にナチス式敬礼をする愛国主義者(2013年11月4日、モスクワ) REUTERS/Maxim Shemetov


<プリゴジンは死んでも、プーチンに挑戦することでその権威を揺るがす不満の種は死んでいない。ワグネルと手打ちをした上ネオナチにまで妥協すればプーチンの権威は地に落ちる>

頭蓋骨を片手にウクライナ人絶滅を誓う狂信的愛国主義者

ウクライナ戦争でロシア軍と共に戦ってきた極右のネオナチ戦闘部隊「ルシッチ」のリーダーであるヤン・イゴレビッチ・ペトロフスキーが先日、フィンランド警察に逮捕された

ルシッチはリーダーの解放を求めて、ウラジーミル・プーチン大統領に最後通牒を突き付けた、と戦争研究所(ISW)は8月26日のリポートで伝えた。

フィンランド当局がペトロフスキーを拘束したのは「ウクライナの要請によるもの」であり、ウクライナはテロ容疑に関連してペトロフスキーの身柄引き渡しを求めている、とフィンランドのテレビ局MTV3は8月25日に報じた。

ペトロフスキーは個人としてEUとアメリカから制裁を受けている戦争犯罪容疑者だ。

米財務省は、ペトロフスキーをルシッチの「軍事訓練指導者」と認定し、2022年9月に制裁を科した。

それは同年2月にプーチンが開始したロシアのウクライナ侵攻が、明らかに正当性を欠き、人権侵害が疑われるとして世界的な非難が巻き起こっていたときだ。

フィンランドは今年4月にアメリカ、カナダ、ヨーロッパの軍事同盟であるNATOに加盟したばかり。ロシアが欧州の近隣諸国により大きな影響力を行使しようとする懸念が高まるなかで、ペトロフスキーを拘束したことは、フィンランドと他の欧州諸国との結びつきを強化する効果があった。

リーダーの解放を要求

ロイター通信によれば「露骨なネオナチ部隊」として設立されたルシッチは、2014年にウクライナのドンバス地方でロシアが支援するルガンスク人民共和国軍の一部として戦闘に参加、その後もウクライナ侵攻の一翼を担ってきた。

だがアメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)によれば、ルシッチはペトロフスキーが解放されなければ、ウクライナ戦争から撤退するとロシア政府を脅しているという。

「ロシアの極右非正規準軍事組織である『ルシッチ破壊工作偵察グループ』は8月25日、ロシア政府が現在フィンランドに拘束されているルシッチの司令官ヤン・ペトロフスキーが釈放されるまで、ウクライナでの戦闘任務を拒否すると発表した」とISWは報告している。

ISWによれば、ルシッチはロシア政府を非難し、「ロシア政府が在外ロシア人を保護する義務を果たさないなら、われわれにもロシアを守る義務はない」と言ったという。

ルシッチは、ロシアの民間軍事会社ワグネルともつながりがあるとみられている。ワグネルは、創設者のエフゲニー・プリゴジンが飛行機「事故」で死亡したことで混乱している。

今年6月、ワグネルはウクライナ侵攻の停滞を理由にロシア軍指導部に対して反乱を起こし、プーチンとプリゴジンの関係は悪化した。

 
 

元駐ウクライナ米大使ジョン・E・ハーブストは27日、本誌にルシッチのロシア政府に対する最後通告は、ワグネル反乱未遂事件後の「プーチンの権威に対するもう一つの挑戦」であり、「ロシア政府が自国の政治と政策を完全にコントロールできていないことを示している」と語った。

ハーブストは安全保障問題を扱うシンクタンク、アトランティック・カウンシルのユーラシア・センターでシニア・ディレクターを務めている。

「たとえプリゴジンが死んでも、プリゴジン問題は死にはしないということだ」と、彼は言う。

しかも、もし「プーチンがルシッチの要求に応えれば、公的な地位もなく、必ずしも強力とは言えない組織の圧力に屈することになる」。

ハーブストはワグネルの反乱未遂事件に対するプーチンの反応からして、プーチンが今回、どのような反応を示すかは、いまだ未知数だと指摘。それでもこの件への対応には警戒が必要だろうと語った。

「プリゴジンの反乱に対処する際、プーチンは当初、プリゴジンの行動を裏切り行為と呼んだが、同じ日に彼と取引をしたことがわかっている。だから、プーチンが勇気を示したとは言えない」

一方、ISWは、ルシッチがウクライナの前線から離脱すれば、この夏に開始されたウクライナの反攻作戦を撃退しようとするロシア軍の重要な防衛の最前線に弱みが生じる可能性があると指摘する。

「ルシッチ・グループは、ザポリージャ州西部のロボティネ村とヴェルボベ村の間にあるロシア軍の防衛戦線で活動している可能性が高い。

この地域はロシア軍にとって非常に重要な防衛の最前線にあたり、司令部は所属部隊の反乱や戦闘拒否を許容する余裕などまったくない」と、IWSは述べている。

 



NEWSWEEK  2023.08.28 より引用

 

 

 



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