マクロン大統領㊧とアタル首相が率いる与党連合は下院での議席を大きく減らす見通しだ
(写真は6月18日、イルドフランス地域圏)=ロイター
【パリ=北松円香】
7日にフランスの国民議会(下院、定数577)の選挙の決選投票が実施される。
世論調査では極右のRN(国民連合)が第1党に躍進するが、過半数には届かないとみられている。
議会の多数派だった中道の与党連合は議席を大幅に減らし、RNと左派連合に次ぐ第三の勢力となる見込みだ。投票結果は即日開票される。
与党・左派の候補者調整が効果
調査会社Ipsosなどによる3~4日の世論調査では、どの党派も過半数を取れず、議会が迷走する可能性が高まっている。
共闘勢力を含むRNの獲得議席は175から205の見込みだ。下院解散前の88から大きく伸びるが、過半の289には届かない。左派連合の新人民戦線(NFP)は145~175議席で2番手に付ける。
同調査によると与党連合は118~148議席となる。解散前の250議席から大きく落ち込む。
6月30日の第1回投票前には、RNが過半数を獲得し、極右内閣が誕生するとの見方もあった。
だが与党と左派が多くの選挙区で候補者を一本化して票を集め、極右候補の当選を阻止する戦略を取ったことで形勢が変わってきた。
RNのバルデラ党首は、過半数が得られなければ首相に就任しないとしている。RNを率いるルペン氏はRN以外の議員と協力して過半数の勢力形成を目指す方針も示したが、同党に同調する議員がどの程度いるのかははっきりしない。
与党と左派の選挙後の連携の見通しも不透明感が拭えない。RNに議会の主導権を握らせないためには、両派が協力する必要がある。
だが左派の最大勢力である急進左派の「不服従のフランス(LFI)」と与党はこれまで激しく対立してきた。
ロシアが選挙介入か
下院選を巡る有権者の対立が深まり、仏国内では不穏な空気が漂う。
ダルマナン内相によると下院解散以降、全国で51人の候補者や支援者らが暴力行為に遭った。仏政府は7日夜から全国に警官など治安維持担当者3万人を配置し、治安悪化に備える。
ロシアによるとみられるSNSなどを通じた選挙戦介入も報告されている。
仏国立科学研究センター(CNRS)の分析によるとX(旧ツイッター)上で、中東情勢を巡る極右と左派の対立をあおる不自然なアカウントが見つかったという。ロシアの情報操作だとみられると指摘する。
7月3日には一部の仏メディアが、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が仏下院選後の治安悪化を警戒してパリ五輪の延期やキャンセルを視野に入れていると報道した。
IOCは直後に声明を発表し、「フランスとIOCに対する偽情報工作の一環だ」と報道を否定した。
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日経記事2024.07.06より引用