米首都ワシントンの国際開発庁本部=ロイター
【ワシントン=芦塚智子】
トランプ米政権で歳出削減を主導する起業家のイーロン・マスク氏は3日、対外国援助を管轄する米国際開発庁(USAID)を「閉鎖する」と表明した。トランプ氏も了承したと述べた。
米CBSは、同庁が大幅に人員を削減して国務省に吸収されると報じた。「米国第一」の外交政策が背景にある。
米メディアによると、USAID本部の建物は立ち入りが制限され、大半の職員が自宅待機を命じられた。ウエブサイトは3日正午現在、開けない状態になっている。
CBSによると、国務省に吸収後もUSAIDの人道支援機関としての役割は残る見通しだ。トランプ大統領はルビオ国務長官を同庁の長官代行に任命したという。
政府効率化省(DOGE)を率いるマスク氏はX(旧ツイッター)上で、USAIDを「犯罪組織」「修復は不可能」などと攻撃し「(トランプ氏に)詳細を説明し、彼は閉鎖に同意した」と指摘した。
トランプ氏は2日、記者団に対し、USAIDについて「過激な精神錯乱者が運営しており、彼らを追い出す。それから(組織をどうするか)決断する」と語っていた。
USAIDは1961年に設立され、世界各国への人道支援や開発援助などを担当してきた。議会調査局によると、2023会計年度は約400億ドル(約6兆2000億円)の予算を運用した。
国務省は1月末、同省とUSAIDなどを通じて資金提供する対外援助プログラムを原則凍結すると発表していた。声明で「すべてのプログラムの再検討を開始し『米国第一』の指針に基づく外交政策と一致しているか確認する」と記した。
USAIDの仕事を請け負う会社の社員は、1月末に業務停止の通達を受けたという。「今後どうなるか不明で、自分の職もいつまで維持できるか分からない」と不安をあらわにした。
民主党の上院議員10人は2日、ルビオ国務長官に対し「USAIDを国務省に吸収するいかなる試みも議会の承認が必要だ」として説明を求める書簡を送った。
トランプ氏は就任初日の20日に連邦政府職員のテレワークの禁止や新規雇用の凍結、解雇が可能になる政治任用を大幅に増やす大統領令を出した。政権はDEI(多様性、公平性、包摂性)の推進部署の閉鎖を命じ、連邦政府職員に対して早期退職を募集する通知も出している。
トランプ氏や連邦議会占拠事件の参加者の捜査に関わった司法省や連邦捜査局(FBI)職員の解雇も報じられている。
