リンムーの眼 rinmu's eye

リンムーの眼、私の視点。

コーヒーのある物語

2006-04-30 | book
もしあなたがコーヒーを飲みながら、一冊の本と共に幸せな時間を過ごしたいと思うのなら、この漫画を読んだらいい。
山川直人『コーヒーもう一杯』。
タイトルどおりコーヒーにまつわるエピソードを綴った短編漫画集だ。
レトロな絵柄で描かれる、ささやかな日々のストーリー。
物語に何気なく使われるコーヒー・喫茶店の小道具が魅力的だ。
背景の細部まで描き込まれることによって、濃密な空気がコマの間に漂う。
この漫画最大の魅力は、“アミカケ”にある。
“アミカケ”とは、斜線を重ねることで陰影を作り出す表現技法。エッチングのような手法だ。
山川直人は、この“アミカケ”を幾重にも丁寧に描く。その効果によって得られる、人肌を感じさせるあたたかな画面が、コーヒーという題材とマッチしている。

コーヒーを時間をかけて淹れるのが好きな人は、きっと気に入るだろう。
是非“アミカケ”によって紡がれる、「コーヒーのある物語」を味わっていただきたい。