リンムーの眼 rinmu's eye

リンムーの眼、私の視点。

古文について考えた

2007-04-19 | book
なんだかんだで「国語」という教科に携わっている私は、ほとんどの人が高校で卒業するはずの「古文」なるものと、未だに取っ組み合っているのです。
そんな私に頼もしい一冊が現れました。
田中貴子著『検定絶対不合格教科書 古文』(朝日選書)。

教科書には掲載されないであろう、古典作品を通して、「古文」という科目を逆照射する試み。大変刺激的でした。
著者は、皮肉っぽい文体で、現行の古典授業を批判しています。
特に第一章は、教科書の定番教材を最新の古典研究をふまえて読解しており、いかに古典の文献に対する多様な読みが可能であるか、逆に教材として扱われる際、いかに歪められ意味を狭められてしまうか、具体的に検証しています。

学校の先生方は、日々の忙しい学校生活の中で、教材研究に充てる時間も限られています。また、毎年、同じ教材を同じように扱う事で、ある種の「貫禄」が付いてくるんですから、なかなか新しい授業のアプローチを考える余裕もないのでしょう。古文が、金太郎飴のような「型」を学ぶ授業になってしまうのは、残念なことです。

知識・教養が細分化し、いかに使える情報であるかの“実学”が求められる時代に、「なんでわざわざ古文を読むの?」と冷遇されるのも、まあ、わかります。
短絡的な「美しい日本語」「日本の伝統」に結びつけるのも、違和感があります。
しかし、古文の授業を受けて覚えてるのは、「な・に・ぬ・ぬ・ね・ね」などの活用表だけっていうのは、さびしいことです。
少なくとも、何か好きな和歌一首とか、それくらいは残るような授業を望みたいところです。