リンムーの眼 rinmu's eye

リンムーの眼、私の視点。

新釈 現代文

2009-08-17 | book
高田瑞穂著『新釈 現代文』(ちくま学芸文庫)をお盆中に読了する。
ずっと絶版になっていた「伝説の参考書」が復刊されたので、読んでみた。

冒頭からすごい。
「この本は、結局「たった一つのこと」を語ろうとするものです。」

一貫した一つの方法論に沿って、例題を読解していく。
1959年(今から50年前!)に刊行された参考書である。示される例題も、現在の大学受験の問題文より堅い。
解説も、昨今の受験参考書のようなテクニックを伝授する式の懇切丁寧なものではなく、不親切でそっけない。
だが、近代精神に考え方の基盤を置き、評論文を読み進んでいくのは、正攻法でまっとうなことだ。
「論理的」っていうのはようするに「近代的」ってことなのだから。
ポスト・モダンやらなんやら、「近代」が流行らなくなって、知と戯れるのが評論だと思われがちなところに、正しいことを言われるとはっとする。

「現代文とは、何らかの意味において、現代の必要に答えた表現のことです。」
「「現代の必要」に答えようと考えるのが、つまり「現代の思想」なのです。」

『新釈 現代文』が、現代文を学ぶ“古典”なら、『高校生のための現代思想ベーシック ちくま評論入門』(筑摩書房)は、いま最もアップ・デートされた参考書といえるだろう。
評論がテーマごとに分類され、入試によく出る評論家の文章が多く掲載されている。
イキのいい評論家のアンソロジーとしても読める。

この本の「はじめに」もすごい。
「評論は、感情ではなく、理性に訴えるから、読者を考える人間に返す。この世界で必要とされる資質は、自分の頭で考えようとする意欲と、自由な人間であることを恐れない勇気である。」
かっこいい。

現代文の参考書は、オトナになって意外に面白い読み物であったりする。
是非、学生時代に戻ったつもりで手に取ってみてほしい。
オトナにはテストとかないしね。