雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

整形前夜/穂村 弘

2010-10-15 | 小説
 詩歌人、穂村弘の自意識てんこ盛りエッセイ。ともすればやるせなくもなりそうだけれど、なんだか可笑しい。たぶんその可笑しさは、この人の自意識過剰っぷりに共感できてしまうからだろう。
「自分をコントロールできない」「世の中とチューニングが合わせられない」「常識からズレる」
 たぶん、そういうのって多くの人がうなずける、ふつうのことなのだろう。でもそのふつうにはなりたくない、っていうか認めたくない、自分は特別なんじゃないのか? そういう思春期的な思い込みというのが、さすがに歳を重ねていけば薄れてはくるのだけれど(それは経験であったり、諦念であったり)土台がもうそういう人っていうのは、やっぱり、いくら歳を経ても名残っているものだ。
 それでも自意識の高い人間というのは、周りもよく観察しているし、そこにきて自分自身の姿や内情をことごとく突き詰めるのだから、世間とのちょっとしたズレでもやっきになって探し当て「自分は特別」を無意識に保持しようとするのだろう。そういう人は、はっきりいってなんの問題もない。
 なんせ、性質の悪いのは、まったくもって世間とのズレなど気にせずに、世の中の基準を自分に置いている者だろう。

 身勝手な人よりも、自意識過剰な人のほうが断然好い。と、断言してしまう自分も身勝手であることに変わりはないので、世の中とはままならなくてやるせない、生き難い処であるなぁ……と目を瞑り、日々を誤魔化す。
コメント
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