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Midnight Surfer

2010-11-04 14:36:00 | 小説
 小気味良いレゲエのオムニバスがマリブコークのペースを上げた。

 マリファナは肌には合わない

 奴らはひたすらビールと水パイプで呆けてる。
唯一の女オータムが妙に色っぽく、妖艶にすら感じた。

 ボブマーリーのエクソダスがLSDと相性が良いなんて誰か言ってたけど、
アルコールだって十分イケる。

「思えば、ずっとズレっぱなしだったんだろな・・・。」

 虚栄心は満たされること無く、更に後戻りもできない虚像を作り上げている事に、
僅かだが気づき始めていた。

 マスターがテキーラを振舞う頃には、店の中も相当に活気付いてはいるが、一見客は
まるで授業が始まる前の教師のような扱いを受ける。
それとともに、水商売の一段落の時間だからか、仕事を終えた女達が集う。

「ナオキさん。」

聞きなれた声だ。キャバ嬢のヒダリだった。

 ジャックダニエルの入ったロックグラスを傾けながら、マルボロライトメンソールに火をつけ、ため息混じりに煙を天井に向かって思いっきり吐き出した。        
煙を吐く唇の使い方が水商売慣れしている様はあんまり好きではないが、
この街の女達は生活に困らない程度の仕事を運んでくれる。

「忙しい?」

取って付けたような質問だけど、話下手な俺の言葉一つを拾って広げてくれるのは
さすがだと思った。

「まあまあ、最近2店舗目出したんだよウチのオーナー。」

「マジで?儲かってんね。」

「そうでもないよ。最近は営業時間気にしてるし、勝負じゃん。」

微笑みながら首をかしげる姿、いちいち男心をくすぐる演出を究めている様は尊敬すらする。

「年末だもんな。取り締まりもあんだろうし。もぐりだろ?社長もよくやるよね。金あんだ?」

「闇金で稼いだって言ってたよ。お金はあるけど、知識はないみたい。」

まるで他人事のように何でも話してくれる。これが信頼なのか、何かの策略なのかわからないが、頭の良いヒダリのことだ一瞬で篩いにかけながら言葉を選んでいるんだろう。

「そうそう、でね、うちに入った若い子なんだけど20貸して欲しいんだって。」

「何で?」

「成人式で地元帰ってちゃんとやりたいんだって。」

「地元は?」

「北海道・・・。」

「むりっしょ。」
鼻で笑った。

「真面目な子だから、会うだけ会ってみたら?」

「珍しいね?連保つけるよ。」
真顔で言ったが、嫌な顔しないヒダリのウインクに照れくさくて苦笑してしまった。

「だって、成人式って気持ちわかるもん。私は、成人式出られなかったし、女の子のそういう気持ちはホントだよ。」

「ヒダリの頼みなら聞かないわけにいかないでしょ。それに、オマエやさしいな。俺にわざわざ仕事振ってくれてんじゃん。」

「そういうわけじゃないよ。私はあげるお金は持ってるけど、貸すお金はもってないもん。」

「なんだそりゃ。」

harder they come
by jimmy clife

 この街の住人の殆どは金に困っている。正確には金の使い方に疎いだけなのだが。
あればあるだけ、入れば入るだけ使ってしまう。
だから、急な入用でたかだか十万単位の額を高利で借りる。
給料でさえ泡銭感覚だから、酒に女に薬にギャンブル、金は右から左だ。



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