黒式部の怨念日記

怨念を恐るる者は読むことなかれ

母ネタVol.3肉嫌い~給食の脱脂粉乳

2024-12-06 08:52:18 | 家族

母は、肉が大っ嫌いであった。母の料理に肉が入ってたのはカレーだけである。しかも、細切れをほんのわずかだけ使ったから、宝探しのように注意深く探さなければありつけなかった。母は、宝探しが上手で、自分のためによそったカレーの中から的確にお宝を発見しては子供の皿に入れてくれた。絶対に肉を口にしてなるものかとの執念が感じられた。

あるとき、母が数日家を空けて、母の代わりに母の母(私の祖母)が私らの面倒を見にきてくれて、そのとき、初めてトンカツとやらを食べた。超美味しくて、私は祖母に「おばあちゃん、こんなに美味しいものがこの世にあるんだね」と言った。私を不憫に思ったは祖母は、後で母を「普段子供に何を食べさせてるんだ」と言って叱ったそうである。

母が肉嫌いになったのは、子供の頃食べて気持ちが悪くなったことが原因だと言う。すなわち、生理的に受け付けないのである。それに対し、観念的に受け付けない人もいる。ドイツのドイツ語学校で懇意になったドイツ人の先生が東京に来たとき、居酒屋に連れてったのだが、ヴェジタリアンの先生がまぐろの赤身に手を付けない。どうやら私の発音が悪くて肉と勘違いしたらしい。誤解が解けるとすぐ食べた。すなわち、先生は、同じ色、カタチであっても、肉だと思えば食べないし、魚だと思えば食べるのである。

そんな母が、私が実家を出て相当経った頃、「肉を食べられるようになった」と言い出したので、じゃあ、久々に里帰りをして、実家の面々にステーキを振る舞ってやろうと思い、サーロインを焼いて面々の前に芳香を漂わせる肉塊をどんと置いてやると、母は、オペラ「影のない女」の皇帝のように、あるいは、「怪物くん」で怪物ランドに言ったひろしのように石になってしまった(固まってしまった)。それではまるで私が「食べなきゃゆるさへんからね」と拷問をしている風であった。

そういう拷問を私達は実際に経験したことがある。小学校の給食である。悪名高き脱脂粉乳は不味いを通り越して気持ち悪かった。何でも食べる私もコレだけは無理だった。実際、吐いた子もいた。でも、先生は残すことを許さず、飲めない子(私を含む)の机には給食タイムが終わって5時間目に入ってもまだ脱脂粉乳の入った容器が置かれていた。許されるのは、飲むか吐くかしたとき。で、吐くと先生が吐瀉物の臭いをかいで、胃液の臭いがしないと「わざと吐いた」と認定して拷問を継続したのである。今なら立派な(ひどい)ハラスメント。それどころか児童虐待と言われるかもしれない。今の生徒は、口に合わないと平気で残すらしい。すると、生徒に全部食べてもらえるように、って味を工夫するという。まっことスターウォーズの世界=大昔、別の銀河系のお話である。

コメント
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