
バークレーで、話題の映画「Slumdog Millionaire(スラムドッグ$ミリオネア)」を観た。
観に行ったのは、Solano Ave.にある昔ながらの映画館。
映画が始まる前に、その映画館で映写技師/支配人をしている女性が出てきて、
「みなさん、今日はようこそ!私の映画館に来てくれてありがとう!」
という挨拶があったのが意外だった。映画館は超満員である。お客さんからは早くもあたたかい拍手。ノリがいいなぁ。
ゴールデングローブ賞4部門(作品賞、監督賞、脚本賞、作曲賞)受賞、アカデミー賞作品賞最有力。9部門10ノミネートなのだとか。少し解説があり、ぜんぜん前情報なしで行ったので、期待が高まる。土曜夜の娯楽を求めて寒いなか歩いてきた街の人々は、その映写技師さんの解説に耳を傾け、手には飲み物やポップコーン。満員御礼の館全体は少しざわついているがみんなとても楽しそう。みんなが「この映画はいいらしいぞ」ということを前もって知っている、そんな期待があたたかい一体感となって劇場空間を包み込んでいた。
映画を観る前に技師さんからミニクイズ。
「監督Danny Boyleの最初の作品は何だったでしょう?」
お客さんからたくさん手が挙がり、1人目が、「Train Spotting(トレインスポッティング)!」と答えると、会場から「それは2作目だぞ!」というリアクション。他のお客さんがすかさず「Shallow Grave!」と答えると、どうやらそれが正解。技師さんが正解者のところまで歩いていって、記念にそのDVDをプレゼントしていました。
映画館に行くとたいてい私たちは前方しか見ず、背後で働いている人の存在を意識しない。でもこの数分の前振りは、「これからこの人が映画を映してくれるんだ」ということをさりげなく教えてくれたし、映画を愛しているこの人の手から映される作品はきっと素敵で良いものだろうと予感させ、前評判や監督の他の作品情報も含め、一気にワクワク度が高まった。
(映画予告編↓)
Slumdog Millionaire - Trailer
さて肝心の映画のほうはどうだったかというと、これはもう傑作です。
舞台はインド。ムンバイのスラム街で大人になった少年がインド版「クイズミリオネア」に出場し、全問正解まであと1問、というところ。物語はそこから始まります。学校にも行かず無学のはずの彼が、なぜそこまで登りつめることができたのか。その答えは、、、(本編をお楽しみに!)。
インドの喧噪、スラム街の貧困、暴力、絶望的に過酷なはずの人生を生きるこども達。大人の陰謀や汚さにも気づかず、その純粋無垢な生命力にも心を打たれます。思わず目をつぶるシーンもありますが、全体的に切れ味がよく、笑いあり、涙あり、映画作品として優れています。久しぶりに映画館まで足を運んだ映画がこんなに素晴らしくて、とても嬉しかった。日本でも4月に公開されるそうです。
劇中、アメリカ人のノリのいいリアクションに包まれながら、街の人達みんなで一緒に観た映画。
作品と同じくらい、その「映画館」という空間もまたとても好きになった夜でした。