去年の7月に、日本語が話せない新卒の中国人女子を採用した。
日本語が話せないため、周囲の反対は少なからずあったけれど、
中国語の受け答えがしっかりしていたので、いけるだろうと思った。
入社後2ヶ月くらいは、彼女も学生気分のままで、
会社の上のほうからも「日本語ができなかったら、そもそもダメだろう」と
改めてツッコミが入っていた。
でも、今月の人事評価で私は彼女に最高点をつけ、上との面接の結果も上々。
結果、彼女は等級が上がり、給料も他の人よりずっと多く上がることになった。
昇給率で言ったら、社内随一だ。
昨年は、私の一言が、彼女を何度も泣かせた。
泣く理由は、できない自分に納得がいかないことによる涙だったから、
彼女の心がおさまるまで、私も23時過ぎまで残って話をすることがあった。
今日、久しぶりに2人で外出したとき、こんな話をしてくれた。
昨日、あまり仲が良くないお母さんが、めずらしく電話をかけてきた。
どうしたのかな、と思ったら、お父さんの話だった。
一昨日、お父さんが電話をくれたときに、人事評価はどうだった?と聞かれたから、
こう答えたの。
等級も給料もあがるんだよ。
こんなふうに認めてもらえたのは、社内で私だけなんだ、と言ったら、
お父さんが、たった半年でそんなわけないだろう。夢でも見てるんじゃないか、って。
だから私は、この半年でこんなことができるようになった。
そして、上司は私のことを2年目くらいの人と同じ実力がある。
もっと上を目指そうと言ってくれてる。
それで、上司と一緒にこの半年でやったことを書き出して、会社に提出した。
経営層には、口頭でもそれを報告した。
そしたら、社長たちも納得してくれたんだ、って話したの。
その日の夜、お父さんは、白酒を2杯も飲んだんだって。
普段、お酒が弱いからほとんど飲まないのに、2杯も。お祝いだって言いながら。
あんなお父さんを見たのは初めてだって、お母さんが私に電話をくれたの、と。
彼女の両親は、世界的に有名な中国国有企業の幹部で、
もちろんのことながら共産党員だ。中国のエリートに属する。
だから、きっと内心では、日本人の会社に入ること、上司が日本人であることに、
あまり賛成ではなかったろう。
しかも彼女の実家は北京のほうにあり、上海には血縁もコネもない。
それでもなお、ご両親は娘の決断を信じた。
そして、確実にたくましく歩んでいる娘に、きっと誇りを感じたんだろう。
彼女のご両親の気持ちを思ったら、私も嬉しくなって涙が出て来た。
日本人にとっては、北京も上海も同じような、中国の一都市に見える。
でも、中国人にとって北京と上海は、外国と同じくらいに遠い。
もし自分の一人娘が外国で、外国人の上司の下で働くとなったら、
普通の親はどう思うだろうか。
特に、中国には植民地時代の記憶がある。日本に対しては、特別な感情もある。
幸先のよいスタートを切ったが、日本には悪平等の伝統がある。
もう少し出世したら、彼女もその壁にぶちあたるだろう。
でもそのときには、
彼女は、身につけた実力をもって、もっと広い世界に飛び立ってほしい。
そしてもっと高い視点から、私たちが愛するそれぞれの祖国を眺めてほしいと思う。
日本語が話せないため、周囲の反対は少なからずあったけれど、
中国語の受け答えがしっかりしていたので、いけるだろうと思った。
入社後2ヶ月くらいは、彼女も学生気分のままで、
会社の上のほうからも「日本語ができなかったら、そもそもダメだろう」と
改めてツッコミが入っていた。
でも、今月の人事評価で私は彼女に最高点をつけ、上との面接の結果も上々。
結果、彼女は等級が上がり、給料も他の人よりずっと多く上がることになった。
昇給率で言ったら、社内随一だ。
昨年は、私の一言が、彼女を何度も泣かせた。
泣く理由は、できない自分に納得がいかないことによる涙だったから、
彼女の心がおさまるまで、私も23時過ぎまで残って話をすることがあった。
今日、久しぶりに2人で外出したとき、こんな話をしてくれた。
昨日、あまり仲が良くないお母さんが、めずらしく電話をかけてきた。
どうしたのかな、と思ったら、お父さんの話だった。
一昨日、お父さんが電話をくれたときに、人事評価はどうだった?と聞かれたから、
こう答えたの。
等級も給料もあがるんだよ。
こんなふうに認めてもらえたのは、社内で私だけなんだ、と言ったら、
お父さんが、たった半年でそんなわけないだろう。夢でも見てるんじゃないか、って。
だから私は、この半年でこんなことができるようになった。
そして、上司は私のことを2年目くらいの人と同じ実力がある。
もっと上を目指そうと言ってくれてる。
それで、上司と一緒にこの半年でやったことを書き出して、会社に提出した。
経営層には、口頭でもそれを報告した。
そしたら、社長たちも納得してくれたんだ、って話したの。
その日の夜、お父さんは、白酒を2杯も飲んだんだって。
普段、お酒が弱いからほとんど飲まないのに、2杯も。お祝いだって言いながら。
あんなお父さんを見たのは初めてだって、お母さんが私に電話をくれたの、と。
彼女の両親は、世界的に有名な中国国有企業の幹部で、
もちろんのことながら共産党員だ。中国のエリートに属する。
だから、きっと内心では、日本人の会社に入ること、上司が日本人であることに、
あまり賛成ではなかったろう。
しかも彼女の実家は北京のほうにあり、上海には血縁もコネもない。
それでもなお、ご両親は娘の決断を信じた。
そして、確実にたくましく歩んでいる娘に、きっと誇りを感じたんだろう。
彼女のご両親の気持ちを思ったら、私も嬉しくなって涙が出て来た。
日本人にとっては、北京も上海も同じような、中国の一都市に見える。
でも、中国人にとって北京と上海は、外国と同じくらいに遠い。
もし自分の一人娘が外国で、外国人の上司の下で働くとなったら、
普通の親はどう思うだろうか。
特に、中国には植民地時代の記憶がある。日本に対しては、特別な感情もある。
幸先のよいスタートを切ったが、日本には悪平等の伝統がある。
もう少し出世したら、彼女もその壁にぶちあたるだろう。
でもそのときには、
彼女は、身につけた実力をもって、もっと広い世界に飛び立ってほしい。
そしてもっと高い視点から、私たちが愛するそれぞれの祖国を眺めてほしいと思う。