Y田下宿の下宿人が、大体3つのグループに分かれてきたのだ。これは、今思い返してみてもそうなのだが、多分Y田バンバも3つのグループに分けて接していたのではないか。①Y田1の、有名国立大志望の二人②地方国立大志望のY田2一階の二人。③Y田2の二階に住む、わしら3人。
Y田1のOさんなどは、Y田バンバの特にお気に入りで、私は生活態度についてよく比べられたものだ。実際Oさんは本当によくできた人だった。優しくて可愛くて真面目。そして、バンバの作る食事を必ずと言っていいほど褒めた。褒めると言うより、褒めちぎる、といったほうが正しいか。しかも、いかにもお世辞という感じが全くなくて、自然な、心からの褒め、に聞こえる。「おばさん…これ、、美味しい!本当に美味しい(^^)」これではバンバが喜ばないはずがない。嬉しかろうし、作った甲斐もあるってもんだ。「あらあら、そうですか〜。」そう言ってバンバは深く頷きながら、そのあと何故かそこにいる他の下宿人をグルッと見渡すのである。あなた達はどう思っているのだ?と無言で問いかけるかのように。しかし、みな一様に反応鈍く、それぞれの会話を続けている、、。これではバンバがOさんを気に入るのも無理はない。それだけではない、Oさんは、予備校生の本分である学業に本当に一生懸命だったのだ。同じY田1の、竹下景子さん似のgeっちゃんは、Oさんに言わせると「天才型」らしく、前にも書いたが、適度に息抜きもしていたらしい。前にも書いたが、予備校にはgeっちゃんのファンクラブのようなものもあるらしく、たまに彼らとカフェに行ったりしていたようだ。Oさんがいつだったか私にボソッと言ったことがある。「geっちゃんがうらやましい。あんなに遊びに行くのに、成績はちゃんと上位なんだもの。」ほほお、、遊んでいるのに成績は優秀、、。いるいる、こういう人、、。羨ましすぎるぜ。再試につぐ再試で苦しむ私にしたら、夢のようなお話さ。ま、それはそうと、とにかくバンバはOさんがお気に入りで、たまに夜食の差し入れなどもしていたらしい。それはそれで「ああ、うらやましい話、、」で終わる私だが、隣のマジマさんは違った。彼女が言うには、食事のたびにOさんがバンバを褒め称えるため、それをしない(できない)自分はバンバに睨まれる。と言うのだ。「えっ!?」私は思わず叫んでしまった。全く予想だにしない、意外な話の展開となった。「睨まれるって、そりゃマジマさん、バンバはもともとみんなに厳しいじゃないの。私なんかすれ違うたびに何かかんか説教されてるわよ。」「違うんです○原さん、説教されるだけまだいいですよ、私なんか、睨まれるだけで、口を利いてもらえないんですよ」ウーン(¯―¯٥)マジマさん、そりゃ、考え過ぎじゃないか。気のせいだと思うぞ。何よりあんた、バンバに口利いてもらえなくて悲しいかい?わたしゃ痛くも痒くもないね。何なら口なんか利かれないほうが楽さ。そうじゃないかい?それにしても、、マジマさんがこんなにデリケートな人だったとは、、。正直意外。普段優しくてにこやかなマジマさんが、バンバの態度を気にして凹んでいる。励ますべきか、、いや、励ますよりも、こうなったら、作戦を練ろう。私なもともと下宿であまりご飯を食べないが、毎日きちんと食べるマジマさんにすれば、食事時のバンバとの確執?は、こちらが考える以上に辛いのだろう。よし、、。「マジマさんよ、、負けないで褒めるんだ!!」我ながら名案だ。と私は思った。しかし、、「え?」マジマさんは、私の提案に戸惑いの表情を見せた。「Oさんが美味しいって言う前にマジマさんが褒めるんだよ」「はあ、、」「エムさんより早く言わないとだめだよ。ここがミソだからね!!」何がミソだか分らないが、とにかく、そうなんだ。マジマさんは、とにかく素直な人なので最後には大きく頷いて「やってみる✊」と言った。
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