すべては量子でできている(フランク・ウィルチェック/筑摩選書)
著者は、強い力の理論(量子色力学)を導いた「漸近的自由」の発見でノーベル賞を受賞した物理学者の一人。
9年ほど前に、この人の著作『物質のすべては光』を読んでいる。質量の起源から大統一理論に至る最先端物理学を解説する内容で、タイトルは、「宇宙の本質は粒子ではなく、(かつて光の媒質と考えられたエーテルと同様に)時空を一様に満たす、多重超電導媒質としての空間そのものである」という著者の主張を端的に表したもの。
本書では、広大な空間と悠久の時間からなるこの宇宙が、ごく限られた素粒子とごく限られた法則によって構成されていることを、整然と解説していく。物理学からみたこの宇宙に対する理解の、現時点での到達点と、残された謎を語る内容。
特に印象に残ったことが2つ。著者も、限りない人間の可能性に対する脅威は、化石燃料の大量消費と核兵器だと考えている。
もうひとつは、ダークマターとダークエネルギーの説明。(最近の宇宙論に関する本には必ず出てくるが、本書の説明が一番わかりやすかった。)著者は、ダークマターの正体を「アクシオン」だと考えている。強い力の理論において見つかるはずの「対称性の破れ」が見つからないことを説明する粒子だが、まだ発見されていない。
タークエネルギーは、時空そのものにゼロでない密度を想定するもので、一般相対性理論の方程式における宇宙項と同じ意味をもつ。
著者は、何もない空っぽの空間を、一種の物質だと考えているようだ。一般相対性理論を一言で表すと、「時空は物質に、いかに動くべきかを教える。物質は時空に、いかに曲がるべきかを教える」(ジョン・ホイーラー)ということになるが、湾曲し、押し、振動する時空そのものが質量を持つことに何の不思議もない。
別の個所では、このような主張もしている。ある系の中で粒子のようなふるまいをする「準粒子」という現象があるが、空っぽの空間そのものが物質であり、その準粒子が「素粒子」だと考えるべきだ、と。
それが本書のタイトルの意味するところだと思う。前作のタイトルとは逆のようだが、実は同じことを言っているはずだ。
著者は、強い力の理論(量子色力学)を導いた「漸近的自由」の発見でノーベル賞を受賞した物理学者の一人。
9年ほど前に、この人の著作『物質のすべては光』を読んでいる。質量の起源から大統一理論に至る最先端物理学を解説する内容で、タイトルは、「宇宙の本質は粒子ではなく、(かつて光の媒質と考えられたエーテルと同様に)時空を一様に満たす、多重超電導媒質としての空間そのものである」という著者の主張を端的に表したもの。
本書では、広大な空間と悠久の時間からなるこの宇宙が、ごく限られた素粒子とごく限られた法則によって構成されていることを、整然と解説していく。物理学からみたこの宇宙に対する理解の、現時点での到達点と、残された謎を語る内容。
特に印象に残ったことが2つ。著者も、限りない人間の可能性に対する脅威は、化石燃料の大量消費と核兵器だと考えている。
もうひとつは、ダークマターとダークエネルギーの説明。(最近の宇宙論に関する本には必ず出てくるが、本書の説明が一番わかりやすかった。)著者は、ダークマターの正体を「アクシオン」だと考えている。強い力の理論において見つかるはずの「対称性の破れ」が見つからないことを説明する粒子だが、まだ発見されていない。
タークエネルギーは、時空そのものにゼロでない密度を想定するもので、一般相対性理論の方程式における宇宙項と同じ意味をもつ。
著者は、何もない空っぽの空間を、一種の物質だと考えているようだ。一般相対性理論を一言で表すと、「時空は物質に、いかに動くべきかを教える。物質は時空に、いかに曲がるべきかを教える」(ジョン・ホイーラー)ということになるが、湾曲し、押し、振動する時空そのものが質量を持つことに何の不思議もない。
別の個所では、このような主張もしている。ある系の中で粒子のようなふるまいをする「準粒子」という現象があるが、空っぽの空間そのものが物質であり、その準粒子が「素粒子」だと考えるべきだ、と。
それが本書のタイトルの意味するところだと思う。前作のタイトルとは逆のようだが、実は同じことを言っているはずだ。