償いのフェルメール(ダニエル・シルヴァ/ハーパーBOOKS)
美術修復師ガブリエル・アロン シリーズの最新作。1年ほど前、2作品を紹介したが、今回、本屋で見かけてタイトルに惹かれて買ってみた。
美術修復師で、修復のみならず、模写や何なら贋作も思いのまま、という主人公。前作『謀略のキャンバス』に続いての名画をめぐる事件。
最初の依頼は、ゴッホの《耳に包帯をした自画像》の真贋鑑定だった。それがフェルメールの《合奏》(盗難絵画では最も高額とされる作品)の行方探しへと発展する。
防諜組織の長官を引退した身ではあるが、これまでの人脈や経験を生かした捜索の手腕は水際立っており、このあたりの展開はある意味、お約束のようなところがあるが、それでも読者を退屈させないのは、絵画の盗難が思いもよらない陰謀へと結びつき、事態の解決がより困難になっていく・・・。
このシリーズは近年、同時代を舞台にほぼ1年に1冊刊行され、日本語版も翌年には出版されている。本作の舞台は2023年秋。(次作では、イスラエル・ガザ戦争が出てくるかどうか。また、どのように描かれるのか。)
いずれにしても、質の良い国際謀略小説に出会う機会が少なくなった時代に、オアシスのような作品かと。