北海道の冬だというのに、
札幌市内には道路にまだ雪がなくて、午前中は良い天気だった。
もちろん冬なので、風はそれなりに冷たいけれど。
朝のうちに、少し離れた大型スーパーへ買い物に行こうと、
気持ち良く晴れた空を見上げながら、
Mは良い気分で歩いてバス停に向かった。
バス停には2~3人が並んでいて、少し列から離れた所に女性がいた。
Mはどうせ最後だったので、その女性の後ろにまわりこんだ。
中肉中背、お上品そうな中年の女性。
何気なく女性を見ると、その女性の顔のあたりから、
透明なしずくがまっすぐポロっと落ちた。
「ん??」
あまりジロジロ見るのも失礼なので、さり気なく遠くを見るふりをして、
その女性を見ると、放心したような顔をして涙を流していた。
シクシクと泣いているのではなく、
泣いている事に本人は気づいていないような……
Mまで哀しくなった。
なぜか分からないけど、Mも泣きたくなった。
気持ち良いくらいの青空、
ルンルン気分で家から出てきたはずなのに、
とても泣きたい気分になってしまうとは。
彼女の気持ちが伝染したみたい。
理由はわからないけど……。
それから間もなくしてバスがきたとき、
彼女は慌てて涙をぬぐって、何事もなかったような顔でバスに乗った。
Mも続いてバスに乗り、彼女の顔を盗み見ると目のふちが赤くなっていた。
みんなそれぞれに事情を抱えて、
それぞれのやり方で乗り越えて生きているのね。
なぁ~~んて、滅多にないことセンチメンタルにひたってしまった。
Mだってこの半年色んなことがあったんで、
悔し泣きしたい日もあったけど、
悔しくて泣くなんて、そんな悔しいことできないから
悔しい時は絶対泣かない。
でも、泣けたらラクになるだろうなぁ~~~~……。
早くスッキリしたいぜ~~~。
と、なんだか話が変わっちゃったけど、
午前中、悲しんでいる女性を見て、
Mも伝染してカナシクなったという話。