自公政権、みんな党などが参議院で国会承認人事を通過させるための談合などが進んでいます。これら三党が進めようとしている候補は「金融緩和」論者、インフレターゲット設定、規制緩和・構造改革論者です。経済学者としての説はいろいろあっても共通していることは、新自由主義路線、規制緩和・構造改革路線をとるだろうことは共通しています。だからこそ、自民党、みんなの党の談合で話題に載るのだと思います。
自公政権の側から言えば、経済対策として利用したいと野思惑があり、みんな党はこれらの人選を通じて、自らの政党としての存在感を示したいと考えています。
国民の側から見たら、景気低迷を打開して欲しいとの願望があります。しかし、インフレが激化して困るのも普通の人々です。なぜ、デフレ、景気低迷なのかは、御用学者のように大手企業支持の立場から抜け出ない理論では、打ち手は限界があります。真の問題は、人口減少、過剰設備、産業構造の変更、正規労働の減少、労働の規制強化、賃金の改善などがデフレ、消費低迷の要因です。しかし、彼らは特に、規制強化、賃金水準の改善を最初からそのことを選択肢から排除しています。
<渡辺・みんな代表、日銀総裁に浜田氏ら5人提案>
みんなの党の渡辺喜美代表は2日の読売テレビ番組で、4月に任期満了を迎える白川方明日銀総裁の後任について望ましいとする候補5人の名前を挙げた。浜田宏一米エール大名誉教授、岩田規久男学習院大教授、竹中平蔵慶応大教授、高橋洋一嘉悦大教授、中原伸之元日銀審議委員で、渡辺氏は「大胆な金融緩和をできる人だ」と述べた。
1月の安倍晋三首相との会談で5氏を総裁候補として提案したことも明らかにしたうえで「そういう人事をやれるかどうかが(安倍政権の金融緩和への取り組み姿勢を試す)リトマス試験紙になる」と強調した。
自民、公明両党は参院で過半数に16議席足りず、日銀総裁人事で同意を得るには参院会派で12議席を持つみんなの党など野党の協力が必要になっている。
「マネーサプライ論争」岩田規久男
企業金融等の分野において、彼が上智大学教授時代に、日本銀行の翁邦雄らとの間に起こした「マネーサプライ論争(翁-岩田論争)」である。従来からマネタリーベース(ハイパワードマネー)の能動的な意味での操作性を否定し(「積み進捗率」の幾分の調整については可能とした)、なかんずくマネーサプライの管理を否定し続ける日本銀行の理論(日銀理論)に対し、岩田はその操作が可能であることを主張し、80年代末のバブル膨張ならびにバブル崩壊の責を逃れようとする日本銀行側を批判した。結局のところ、一般大衆にとっては結論がうやむやのままという印象が残った。
マネーサプライ論争における岩田の主張は、池尾和人も指摘しているように、金融論の教科書に登場しているような標準的な学説に基づくものであり、特に目新しいものでも奇異なものでもない。ハイパワードマネー×信用乗数(貨幣乗数)=マネーサプライという恒等式において、左辺のハイパワードマネーから右辺のマネーサプライへの因果関係があり、かつ信用乗数は比較的安定しているから、日本銀行がハイパワードマネーを増やせばマネーサプライは増えると唱えたものであった。
一方、実務家である翁の主張は、日本銀行が所要準備の後積みを行っているという観察事実に基づくものであり、いって見れば現象論であった。翁は、岩田が用いたハイパワードマネー×信用乗数(貨幣乗数)=マネーサプライという恒等式において信用乗数には乗数の意味はなく、マネーサプライとハイパワードマネーとの事後的な比率に過ぎないとした。その上で、市中銀行の貸出し態度によってマネーサプライの大きさが決まり、それに見合うように日本銀行はハイパワードマネーを受動的に供給するしかなく、マネーをコントロールすることはできないと主張した。
岩田の主張のうち、信用乗数の安定性については、1992年頃には約13だった信用乗数が2000年以降は10を切るまでに低下し続けたことで実証的に否定された。また、翁のいうように、日本銀行が市中銀行の貸出し態度を追認する形でハイパワードマネーを受動的に供給するしかないとしたら、日本銀行はそもそも金融政策を行えないのではないかという疑問が示された。
「ゼロ金利政策・量的緩和・インフレ目標」
マネーサプライ論争の後も政府日銀の経済政策に疑義を呈し続けた岩田は、橋本政権下の政策混乱と時期を同じくするデフレの経済下において、日銀に非伝統的な金融政策(ゼロ金利政策・量的緩和)の導入を強く主張した、いわゆるリフレ政策陣営の実質的な旗頭としての役割を担った。岩田は著書『デフレの経済学』において、これまでの経済学があまり想定してこなかったデフレーションという現象を一般大衆に分かりやすく説き、かような状況から日本経済を救う為には、日銀による長期国債の買い切りオペや、人々の期待に働きかけるべくインフレ目標を設定する必要があるということを主張した。このような認識は、ポール・クルーグマンやベン・バーナンキといった海外の著名な経済学者や、浜田宏一や原田泰、竹森俊平、伊藤元重、野口旭、若田部昌澄といった国内の経済学者の間でも共有され、日銀理論と対抗する一大基軸となったのである。
ただし、かつて日銀理論を鋭く批判した小宮隆太郎は、マネーサプライ抑制の観点からリフレーション政策には反対の立場であり、「見当はずれの日銀バッシング」の中では「不況脱出に必要なことは(中略)構造改革・規制緩和を積極的に進めること」とも主張しており、岩田の主張には批判的である。また、小宮門下で日本銀行の審議委員を務める須田美矢子も、ヘリコプター・マネー政策はハイパーインフレを招き、国民は「極端な場合には物々交換をするような状態になることすらあり得ないことではありません」と述べて岩田に批判的なスタンスをとっている。
確かに、「いくら金融を緩和しても需要がないから物価は上がらずデフレ対策にはならない」といいつつ、同時に「金融を緩和するとハイパーインフレを招く」とする日本銀行の矛盾した姿勢には、日本銀行に好意的な研究者からも疑問の声が上がった。だが、岩田らの求めた非伝統的な金融緩和策に対しても疑問の声はある。その1つは、原理的には正しいとしても政策として使えるのかという点である。もし、日本銀行がいうように、日本銀行がいくら金融を緩和しても物価が上がらないとするなら、日本銀行はお札をどんどん刷ることによって世界中のありとあらゆる資産を買い漁ることができるはずだ。しかし、そんなことはあり得ない。いつかは必ずお札の価値は下落する。つまり、物価が上がるわけである。論理的に考えれば、この推論に間違いはない。だが、問題は「いつか物価が上がる」といっても、一体いつなのか、どれぐらい金融を緩和すればよいのか見通しが立たないことである。例えば、翁は、岩田ら経済学者の提案は、原理原則としては正しいとしても政策としては使えないだろうと批判している。しかしながら、物価が上がらないうちは日本銀行と政府を併せた広義政府部門が、通貨発行益をインフレというペナルティ無しで享受できるわけであり、財政支出を通貨発行益で賄えば将来の金利負担の恐れなく財政健全化が達成できることになり、いずれにせよ国民の利益となる政策であるから反対する理由とはならないとの再反論がなされている。実際には、通貨発行益を用いた広義政府部門の支出による超過需要がまさに物価を上昇させる経路となるため、速やかに物価が上がると予測される。
人気ブログランキングへ
自公政権の側から言えば、経済対策として利用したいと野思惑があり、みんな党はこれらの人選を通じて、自らの政党としての存在感を示したいと考えています。
国民の側から見たら、景気低迷を打開して欲しいとの願望があります。しかし、インフレが激化して困るのも普通の人々です。なぜ、デフレ、景気低迷なのかは、御用学者のように大手企業支持の立場から抜け出ない理論では、打ち手は限界があります。真の問題は、人口減少、過剰設備、産業構造の変更、正規労働の減少、労働の規制強化、賃金の改善などがデフレ、消費低迷の要因です。しかし、彼らは特に、規制強化、賃金水準の改善を最初からそのことを選択肢から排除しています。
<渡辺・みんな代表、日銀総裁に浜田氏ら5人提案>
みんなの党の渡辺喜美代表は2日の読売テレビ番組で、4月に任期満了を迎える白川方明日銀総裁の後任について望ましいとする候補5人の名前を挙げた。浜田宏一米エール大名誉教授、岩田規久男学習院大教授、竹中平蔵慶応大教授、高橋洋一嘉悦大教授、中原伸之元日銀審議委員で、渡辺氏は「大胆な金融緩和をできる人だ」と述べた。
1月の安倍晋三首相との会談で5氏を総裁候補として提案したことも明らかにしたうえで「そういう人事をやれるかどうかが(安倍政権の金融緩和への取り組み姿勢を試す)リトマス試験紙になる」と強調した。
自民、公明両党は参院で過半数に16議席足りず、日銀総裁人事で同意を得るには参院会派で12議席を持つみんなの党など野党の協力が必要になっている。
「マネーサプライ論争」岩田規久男
企業金融等の分野において、彼が上智大学教授時代に、日本銀行の翁邦雄らとの間に起こした「マネーサプライ論争(翁-岩田論争)」である。従来からマネタリーベース(ハイパワードマネー)の能動的な意味での操作性を否定し(「積み進捗率」の幾分の調整については可能とした)、なかんずくマネーサプライの管理を否定し続ける日本銀行の理論(日銀理論)に対し、岩田はその操作が可能であることを主張し、80年代末のバブル膨張ならびにバブル崩壊の責を逃れようとする日本銀行側を批判した。結局のところ、一般大衆にとっては結論がうやむやのままという印象が残った。
マネーサプライ論争における岩田の主張は、池尾和人も指摘しているように、金融論の教科書に登場しているような標準的な学説に基づくものであり、特に目新しいものでも奇異なものでもない。ハイパワードマネー×信用乗数(貨幣乗数)=マネーサプライという恒等式において、左辺のハイパワードマネーから右辺のマネーサプライへの因果関係があり、かつ信用乗数は比較的安定しているから、日本銀行がハイパワードマネーを増やせばマネーサプライは増えると唱えたものであった。
一方、実務家である翁の主張は、日本銀行が所要準備の後積みを行っているという観察事実に基づくものであり、いって見れば現象論であった。翁は、岩田が用いたハイパワードマネー×信用乗数(貨幣乗数)=マネーサプライという恒等式において信用乗数には乗数の意味はなく、マネーサプライとハイパワードマネーとの事後的な比率に過ぎないとした。その上で、市中銀行の貸出し態度によってマネーサプライの大きさが決まり、それに見合うように日本銀行はハイパワードマネーを受動的に供給するしかなく、マネーをコントロールすることはできないと主張した。
岩田の主張のうち、信用乗数の安定性については、1992年頃には約13だった信用乗数が2000年以降は10を切るまでに低下し続けたことで実証的に否定された。また、翁のいうように、日本銀行が市中銀行の貸出し態度を追認する形でハイパワードマネーを受動的に供給するしかないとしたら、日本銀行はそもそも金融政策を行えないのではないかという疑問が示された。
「ゼロ金利政策・量的緩和・インフレ目標」
マネーサプライ論争の後も政府日銀の経済政策に疑義を呈し続けた岩田は、橋本政権下の政策混乱と時期を同じくするデフレの経済下において、日銀に非伝統的な金融政策(ゼロ金利政策・量的緩和)の導入を強く主張した、いわゆるリフレ政策陣営の実質的な旗頭としての役割を担った。岩田は著書『デフレの経済学』において、これまでの経済学があまり想定してこなかったデフレーションという現象を一般大衆に分かりやすく説き、かような状況から日本経済を救う為には、日銀による長期国債の買い切りオペや、人々の期待に働きかけるべくインフレ目標を設定する必要があるということを主張した。このような認識は、ポール・クルーグマンやベン・バーナンキといった海外の著名な経済学者や、浜田宏一や原田泰、竹森俊平、伊藤元重、野口旭、若田部昌澄といった国内の経済学者の間でも共有され、日銀理論と対抗する一大基軸となったのである。
ただし、かつて日銀理論を鋭く批判した小宮隆太郎は、マネーサプライ抑制の観点からリフレーション政策には反対の立場であり、「見当はずれの日銀バッシング」の中では「不況脱出に必要なことは(中略)構造改革・規制緩和を積極的に進めること」とも主張しており、岩田の主張には批判的である。また、小宮門下で日本銀行の審議委員を務める須田美矢子も、ヘリコプター・マネー政策はハイパーインフレを招き、国民は「極端な場合には物々交換をするような状態になることすらあり得ないことではありません」と述べて岩田に批判的なスタンスをとっている。
確かに、「いくら金融を緩和しても需要がないから物価は上がらずデフレ対策にはならない」といいつつ、同時に「金融を緩和するとハイパーインフレを招く」とする日本銀行の矛盾した姿勢には、日本銀行に好意的な研究者からも疑問の声が上がった。だが、岩田らの求めた非伝統的な金融緩和策に対しても疑問の声はある。その1つは、原理的には正しいとしても政策として使えるのかという点である。もし、日本銀行がいうように、日本銀行がいくら金融を緩和しても物価が上がらないとするなら、日本銀行はお札をどんどん刷ることによって世界中のありとあらゆる資産を買い漁ることができるはずだ。しかし、そんなことはあり得ない。いつかは必ずお札の価値は下落する。つまり、物価が上がるわけである。論理的に考えれば、この推論に間違いはない。だが、問題は「いつか物価が上がる」といっても、一体いつなのか、どれぐらい金融を緩和すればよいのか見通しが立たないことである。例えば、翁は、岩田ら経済学者の提案は、原理原則としては正しいとしても政策としては使えないだろうと批判している。しかしながら、物価が上がらないうちは日本銀行と政府を併せた広義政府部門が、通貨発行益をインフレというペナルティ無しで享受できるわけであり、財政支出を通貨発行益で賄えば将来の金利負担の恐れなく財政健全化が達成できることになり、いずれにせよ国民の利益となる政策であるから反対する理由とはならないとの再反論がなされている。実際には、通貨発行益を用いた広義政府部門の支出による超過需要がまさに物価を上昇させる経路となるため、速やかに物価が上がると予測される。
人気ブログランキングへ