春風駘蕩

いつの時代でもこうありたい

中秋の名月と酒

2005年09月18日 | 日記
今日は陰暦の8月15日。一年中で月が最も明るくて美しい日とされている。確かに、鎌倉の自宅庭から見た今日の月は
いつもより大きくて綺麗だった。この日、月を見たのは、妻が「月が綺麗よ」と教えてくれたのと、寿退社して仙台に
嫁いでいった元女子職員から贈られてきた酒があったからだ。

酒は9月10日頃届いた。包装紙を開くと「得月」という銘柄の酒が入っていた。メモ書きが同封されおり、そこには
「長旅で、お酒が疲れています。一両日、冷暗所で休ませて下さい」と書いてあった。送り出す酒をわが子の初旅のように
いたわる酒屋さんのやさしさが伝わってくる。

瓶の首にもメモ書きが掛けられており、表に「中秋の名月のような、豊かでやさしい味わい」「得月」「名月を愛でなが
ら・・・」と3行で記されていた。私が惹かれたのは裏側の文章だった。タイトルは「名月春秋」。「中国の中秋節を祝う
習慣が日本に伝わってくる以前から、陰暦の8月15日は初穂祭として祝う習慣がありました」という書き出しで、日本人
がいかに月を慈しみ、月と親しんできたかが書かれていた。

陰暦の8月14日を待宵、15日を十五夜、16日を十六夜、17日を立待月、18日を居待月と一夜ごとに少しずつ変わ
ってゆく様を細やかな心でとらえている日本人の感性の豊かさに改めて驚く。

酒は、新潟県長岡市の朝日酒造でつくられた純米大吟醸だった。「中秋の名月と共に楽しむお酒」として9月に限定販売さ
れている酒だという。私は日本酒が好きだが、とりわけ新潟の酒を好んで飲む。さらさらとした喉越しの感触がたまらなく
心地よいからだ。月と酒と贈り主の心遣いに、この日の酒はことのほか美味しかった。