JR只見線奥会津中川に行ってきました
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田植えの終わったばかりの圃場の道を歩いているとなんか懐かしい声が聞こえてきました。はて?・・と思って耳を澄ますとそれは蛙の声でした。嬉しかったんです。中川は山間(やまあい)の静かで明るい聚落でした。
まだ訪れていなかった中川聚落に行って見ようと思い立って、JR会津坂下駅の下り一番の6時45分の列車に乗りました。ホームに着いた列車からは高校生を中心にしたたくさんの人が降りて車内はローカルの只見線を楽しもうと思っている数人の人が乗っているだけになりました。私は右側の椅子に席を取って今日の小さな旅への思いにちょっとワクワクしておりました。
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JR只見線の中川の駅は坂下駅から1時間20分ほどのところにある小さな無人の駅でした。列車を降りたのは私一人でした。
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ちょっと瀟洒な感じのする小さな駅舎が大きな桜の木に囲まれてありました
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中川集落にある上田の発電所ダムです。
最高出力63.,000kwの発電所で只見川に美しいダム湖を作っています。
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ダム湖の対岸は標高942mの岳山からの険しい[がんくら]になっています。豪雪地帯の底雪崩(そこながれ)が作った険しい山肌です。 [がんくら]?・・私達が使っていた奥会津の言葉ですけど岩倉とでも書くんでしょうか。険しい岩山の絶壁を倉と言いますよね。クライミングで有名な谷川岳の岩場を一の倉沢と呼んでいますし、私達はカモシカをクラシシと言っていました。岩場に住むけものと言う意味ですね。
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この険しい岩倉(がんくら)についてこんな解説の掲示板にありました。
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この険しい絶壁が法印(修験)の修行の場所だったんですね。法印って昔病気などの治療や家の不幸などのために加持祈祷をする人のことですよね。霊力を高めるために険しい山などに籠もって修行したと聞いています。
この険しい岩場にはもうひとつの思い出があるんですよ。40年ほど昔になりましたけど、只見川に上田発電所のダムが出来て誰でも対岸の岩場にいけるようになって地元の人だけでなく一般の人たちがこの岩場にマツタケがたくさん出ること知ったのです。好き者たちがわんさとこの岩場に押しかけました。私の友人なども得意になって険しい山でマツタケを採ってきたと自慢していました。でもマツタケ山は数年にして終わりました。押しかけた大勢の人たちに踏み荒らされてマツタケは絶えてしまったんですね。人々の欲念ってすごいです。私の古里は奥会津只見です。30年ほど昔私が古里に帰省するとみんなが言っていました。当時ゼンマイは大事な只見の人達の収入源でした。マツタケの出る山もありました。そこに外部の人達が押し寄せ無法に山に入り荒らしてしまうと嘆いていました。
私が中川聚落で感動したことのひとつに、この聚落の寺社や弥生時代の遺跡などに細やかな解説の掲示板があったことをあげることができます。
たと言えば普通にはたれも見向きもしないような村外れの稲荷社にさえこんな丁寧な解説の掲示板がついているんです。
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そのほかいくつかの例を挙げてみます。
弥生の祭祀跡
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諏訪神社
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古い時代に板下村と宮先村が合併して中川村になりました。
宮崎の観音堂
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その他宮崎館跡・地蔵堂・宮崎聚落の鎮守など暖かくて細やかな解説があって楽しみながらの散策が出来ました。中川の方たちが自分たちの地域を愛し自分たちの地域の成り立ちや誇りを守ろうとなさっていらしゃる姿に感動してしまいました。
中川集落には一階が車庫で二階や三階が住居のお家があちこちに見受けられました。今は温暖化でそれほどでもないと思いますけどもかつては2mを越す豪雪地帯でした。それに対応したお家なんですね。私にはとても珍しく思いました。
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ゆっくりと中川地区の散策を楽しんでいるといつの間にか11時を過ぎていました。少々疲れもありましたので「道の駅かねやま」で休むことにしました。
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綺麗なトイレで用を済まして休憩室で休んでいると郷土の有名な写真家星賢孝さんの見事な写真がたくさん掲示してありました。心打つ美しい写真がいっぱい、しばらく感動して見とれていました。デジカメでコピーさせて頂いたもののうちの一枚です。
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星賢孝さんについてはヤフーで「星賢孝」と検索すると奥会津の写真集や星さんのFecebookにアクセスできます。
奥会津中川の名物といえば「アサギ大根高遠そばです、アサギ大根と言うのは奥会津のこの地方に自生する小さな大根で大根おろしにすると強い辛味があります。その絞り汁にしょうゆをたらしたものにそばをつけて食べるのが「アサギ大根高遠そば」です。たち蕎麦はやや太めで色が濃く蕎麦の薫りが強く歯ごたえがあります。アサギ大根おろしの汁につけて食べるとすごく美味しいです。値は 800円で安いです。もしお出での節などあれば是非食べてみて下さい。「道の駅かなやま」の食堂で食べることができます。
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いま農村ではどこでもそうですけども若者や子どもの数が激減して老齢化が進んでおります。特に中川聚落のある奥会津の金山町や私の古里只見町などの老齢化は厳しいものがあると聞いております。
中川の国道沿いの郵便局の隣にこんな大きくて立派な建物がありました
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玄関には「若者向町営住宅」とありました
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でも一階の車庫には一台の車もなくて玄関は固く閉じられています。入居者はたれもいない見たいなんです。なんか侘びしい気持ちになりました。
また中川地区は奥会津では珍しく広い水田があって大型の田植え機が早いスピードで田植えをしていました。でも帰りの列車を待っている中川駅の近くの小さな田圃では熟年のご夫婦がお二人で手で田植えをしていらっしゃる姿がありました。水田が小さくて大きな田植機が入らないので委託栽培をしている人に委託を頼むことが出来なかったんでしょうね。お見受けするところどうやら私とそうお歳の違いのなさそうなお二人さんでした。ご立派と思いながらも心にしみ入るものがありました。
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4時間ほどの中川聚落の散策でした。嬉しいもの、楽しいもの、懐かしいもの、心打つものがいっぱいありました。でも、今の農村、特に奥会津の山あいの聚落には本当に厳しいものがあるんだなと帰りの車内でしみじ思いました。私の古里は金山町より奥地の只見町です。皆さん助け合いながら楽しく生きていらっしゃることはよく承知してはいるんですけど近い将来のことを考えると心侘びしいものもある車内の私でした。
お元気になられてきたようでうれしいです。
それにしても倉が岩壁の意味だったとは!!勉強になりました。
若者のための住宅のお写真ですが、よく見ると一階駐車場に車のタイヤ跡が付いていますね。住人がおられるのではないでしょうか。
最近は若夫婦は共稼ぎで、子供たちは保育園や放課後学童保育が一般的になってきておりますので、もしかしたら日中は住人みんなが払っているのかもしれませんね。
どうもカーテンの様子やら駐車場のタイヤ痕やらを拝見しますと無住とは思えなくて、私の勝手な推論ですが若い人がいるような気がしました。
ゆったり、のんびりできます。
ここでリラックスして、登りの列車が来る時間まで過ごすのも、おすすめです。
なにがうれしいかって!・・それは私が無住と思い込んでいた「若者向町営住宅」が無住でなかったことが分かったことです。奥会津がふるさとの私はふるさとから若者や子供の姿が少なくなっていることに心痛めています。だから中川の町営住宅が無住ではなかったことを知ってわくわくするほど嬉しいんです。
言われてみれはそれぞれの窓のカーテンはそれぞれの開き方をしています。もし無住ならみんな閉じられているはずです。
なに?・・車庫にタイヤ跡がある?・・どうやってみても私には確認できません。よって拡大してみました。見事にタイヤ跡がありました。
http://art25.photozou.jp/bin/photo/236866790/org.bin?size=1024
なんとまあ、みたんさんの目は優しく細やかで鋭いのに驚きました。