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南部小絵馬の話

2010-12-11 | 民俗
友人から学芸会に使用する舞台背景画を頼まれました。
演目は「南部駒踊り」との事なので南部小絵馬を題材に描いたところ、反対向きでもう一枚とリクエストされました。
南部小絵馬は左向きの物しか見たことがなくて、もしも自分の知らない言い伝えなどがあれば伝統から外れてしまう危惧が。そう思って色々と調べだしてみると奥が深い。

元々は神様に神馬を奉納していたものの、次第に扱いやすい馬の人形や馬の絵に変遷してきたため、本来の絵馬はその名の通り馬の絵が描かれているものでした。
願い事の内容によって、馬の絵はいつしか他の絵柄に変わっていきます。
なぜ馬なのかは、馬は神の乗り物とする信仰や、馬は神様であるとする信仰など多くの要素が絡み合います。青森県南部地域に多い蒼前信仰は葦毛四白の馬を神様としていますし馬には縁の深い地域です。
現在でも馬の絵の絵馬は奉納されているようで、1700年代に多かった図柄の絵馬が八戸市の岡田観音堂にありました。
岡田観音堂は南部小絵馬が最初に認められた場所です。その後七戸町の見町観音堂や小田子不動堂から同じような図柄の絵馬が見つかり、現在は七戸町立鷹山宇一美術館で展示されていますが、下の写真のデザイン性の高い絵馬絵は「藤右衛門の小絵馬」と名づけられています。藤右衛門とは岡田観音堂を管理していた人の名前であって作者ではありません。しかし1700年代に70年ほど続くこの系統の絵は、南部小絵馬のイメージを形作るほど強烈なインパクトを持っています。
自分で絵馬絵を描いてみて思うのですが、「藤右衛門の小絵馬」のデフォルメはとても親しみを感じさせ、この型の絵が当時も今も何故か人の心を掴みます。
今流行の「ゆるキャラ」の先がけかもしれません。

ちなみに南部小絵馬にも右向きのものはありました。
小田子不動堂と見町観音堂の絵馬では、左向きが252点に対して右向きは4点。
左向きの方が描きやすい、馬は左から乗るから、などと考えられているようですが、圧倒的に多い左向きの絵馬には何かしらの信仰的な理由があるのではと思っています。


・・・・ 追記 ・・・・
現在認められている南部小絵馬の、奉納年代が室町時代のもので「藤右衛門の小絵馬」と同じデザイン性の高い絵柄の数点については、書かれている年号に疑問があるとされているため、「藤右衛門の小絵馬」は1700年代のものだけとしてまとめています。