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巨木と信仰 2

2010-12-24 | 巨樹・巨木と伝承 三頭木
山で木を切る杣人・山子といわれる人々も機械化された現代ではほぼいなくなり、その伝承も途絶えようとしています。
そんな山仕事を書籍より抜粋してみました。

採面を分ければ、山子の仕事に入るわけだども、最初の一日は一本だけ伐って飯場に帰ると、山の神様に拝んだものだス。これを鉞立て(まさかりだて)といったが、これがら山で仕事するんて、怪我しないように守ってけれど、山の神様に頼むわけだスな。
(P60)

杣が山に入り木を切るとき、一番大切なことはその木が倒れる方向だ。高さが30メートルぐらいもあり、1トン以上もの木が倒れるのだから、極めて危険な作業だ。<中略>・・そのとき、うまい杣人は狙った方向に正確に倒す。もちろん人のいる方向には絶対に倒さない。それだけでなく、倒すとき、別の木にぶつからないように倒す。別の木にぶつかると、倒された木もぶつけられた木も傷がつき、材としての価値が下がってしまうからだ。
(P95)

【聞き書き資料】秋田杉を運んだ人たち 野添憲治著 御茶ノ水書房


山で木を切る仕事は危険と隣り合わせでした。
作業の安全を願って山仕事を始めるときは山の神様を祭り、山の中での戒律も厳しく守られていたそうです。
仕事中は尻を下ろすな、木を倒すときは大声を上げよ、など安全のために必要な戒律もありますが、山の神様は女性だから身だしなみを整えなければいけない、など宗教的な戒律も多かったようです。
どちらとも言えないのが「忌み木」に関する言い伝えで、暴れ木、癖木、窓木など。伐ってはいけない、伐ればよくない事が起こると言われていた木の事で三股の木もここに含まれます。
これは奇異な形をした木に神性を感じるからという理由の他に、伐り倒す際にどこへ倒れるのかの予測が付き難く危険だからとも言えるのでしょう。
上に挙げた書籍の中にはこのように書かれています。

ただ、現場には何本かの、特別に難儀な木があったもんだス。根上がりをして棚を組まんと伐れない木とか、丸太のような枝がついている木とかで、これをあぼれ木といったものね。

今も生きている巨木は何かしらの理由があって伐られずにいた木でした。
その理由の一つに、伐り倒すさいの危険が挙げられます。
伐り倒す事もあったものの、神様の依り代などとしてそのまま残しておくことも多かったらしく、そうして残った木が神格化した場合もあったはずです。
杣人・山子と同じように山に用材を求めて入っていた木地師は、山に作業小屋を作るとき、近くの老木や巨木を御神木として祭ったとも。
日本において神は、災いをもたらす者でもあったのです。



参考図書
秋田杉を運んだ人たち 野添憲治著 御茶ノ水書房
本朝巨木伝  牧野和春 工作舎
木の聲  橋本正 小学館