まんまるログ

融通性か?和・洋・中・無国籍・ジャンクとなんでも食べる胃袋と脳みそ。

弁護人‥アジアの底力  

2017年05月20日 | 映画
2013年の韓国映画だが、日本では去年の11月に上映された『弁護人』

’81年、全斗煥の率いる軍事政権下の韓国で起きた実話が題材になっている。

’80年には悪名高い(光州事件)も起こった。

ソン・ガンホが主人公を演じる。


高学歴社会の国で、商業高校卒 苦学して弁護士資格を取ったウソク。
あなたのお金を守ります。名刺にコピーを入れて税務弁護士としてそこそこ金儲け。
懇意にしていた食堂の店主(母親)の息子が、公安当局に逮捕された事を知る。
面会にいき、拷問の後をみた時に取調べに疑いを持つ。

E.H.カーの『歴史とは何か』など‥を読んだことを理由に国家保安法に違反した罪。
それで起訴される平凡な大学生が息子である。

冤罪を晴らすために弁護を引き受ける人情に厚いウソク。
軍部や警察の裏工作。裁判官と権力との癒着。
無罪を証明するために対決する法廷。
前半の税理弁護士とは違う緊張感あふれる攻防。
公権力と戦う弁護士へと転身していく様子を、声のトーン、表情を巧みに変えて渾身で演じるガンホ。
好きな俳優の一人だ。

この事件を機に人権派弁護士に転向し、後に大統領になる男。
『弁護人』は故・盧武鉉大統領をモデルにしている。


最後は「数の力」で押し切った「共謀罪」の成立要件を改めた「テロ等準備罪」。                      
深まりも歩み寄りもなかった我が国の国会。

お隣の国の映画は、他山の石ではない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コインロッカーの女

2016年11月10日 | 映画
合衆国大統領がトランプ氏ということで生物的に耐えられない。

気分が悪い昨日。

しかし秋の風が冷たいとはいえ空が澄んで‥気温が10度の朝を迎えた今日。

隣国の韓国も大統領の機密漏洩が問題になっている。


映画の主役は女性二人。

1→イル
0→ヨン

うまれてすぐに“10番”のコインロッカーに捨てられた赤ん坊は「イリョン」と名づけられた。

ホームレスの手から「仁川‥インチョン」の裏社会に流れていく。

裏社会を牛耳るボスは女で「キム・ヘス」が演じる。

容姿端麗な彼女が、顔のシミ、寸胴のスタイル、白髪で荒い髪の毛まで‥徹底的な役作り。

目が動かない。

裏社会の地獄の中で生き抜く非情さを貫禄で演じている。

対する「イリョン」はキム・ゴウン‥若い演技派。

一重瞼の無表情で終始。

シリアスで感情が読み取れない。
胆力がある。
演技力だけではない。
存在感が溢れている。

政治家も警察も医者も黒い世界‥悪と結びついているというお決まりのパターンではある。

残酷で悲しい。

そんなこととは別に、“絶対的大女優”と新人だが“大物の片鱗をかんじさせる女優”の対決がよかった。

ジャンルはノアールだが、惹きこまれた。

韓国映画は凄いと思わせる作品に仕上がっている。

老いも若きも中年も迫力があって巧いのはさすがに韓国。

現実の韓国も日本も、裏社会はさほど変わりがない。
汚い、惨い、ひどい。
目を背けたい。

裏の世界で生きるという事は、選択の余地がないという事。

太陽の下で憩える事は棺桶の中までない‥そんな気がする。

現実(表)と(犯罪)裏が紙一重の社会がすぐそこに‥迫りつつあると思うのは私だけなのか?。

権力は正義ではない。

そのことだけを思う。

そんな時代がやってきている。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

猟奇的な彼女

2016年06月12日 | 映画
久しぶりですね。
映画の中の“彼女”に話しかける。

15年前の韓国映画だから…韓流ブームよりも前に見た記憶がある。

評判も良かったし…地下鉄の場面(彼女と彼が出会う場面)
電車内での攻防が印象的で忘れられない。

久しぶりですね。
主演のジヒョンさんが初々しくて美人です。

泥酔した猟奇娘?をキュートに演じている。
彼女は今も変わらず美人です。
演技派だし…旬の俳優を、左右に置いて回して主役を張れている女優。

相手役の“彼”の方は、韓国のジム・キャリー …チャ・テヒョン。

除隊後大学に復学したはしたものの、勉学にさほど身が入っているようにはみえない。
未来に方向性なぞなくぽーっと生きている若者。
酔っ払いの彼女に振り回されるし怒鳴られるし…散々な目にあいながら魅かれていく。

人の好さを好漢の顔に柔らかくつつんで豚まんの味。
沁みてくる…肉汁。
ポーっとした加減が素晴らしく巧い。
緻密に計算しつくして、笑える演技をしているのはさすがだと思える。
そしてその演技が“彼女”の魅力を引き出して支えている。

マヨネーズ&醤油にタバスコ少々垂らす。絶品。

「猟奇的な彼女」は…「猟奇」という言葉から連想される要素がみえない。

真っ当な恋愛映画だ。
出会いは最悪。
二度目はなだめつすがめつ…。
お互いに相手の存在が気になっていく。
嗜好の違いや家風の戸惑い、些細なケンカ。

彼女には秘密がある。
ほろ苦い別れがある。
時を経て再会する。
…ラブロマンスの王道とも言える映画だと思う。

ラストは都合よくまとまりすぎだが、昔も今もハッピーエンドを望んでいる私なのは嬉しい発見。
時代が変わっても…頭の中身は変化なし。

見落としている場面や、忘れてしまって記憶にも残ってない会話。
自分の思い出と一緒に立ち上る若やいだ感情。
二人のこれからに…余韻まで感じる。

監督と脚本家と俳優が、お互いを照らし照らされながらいい作品を作っている。

これからもお久しぶりの出会い…ばかりを続けていくつもりでいるのですが。

恵みの雨が欲しい処。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

薔薇の名前

2016年03月29日 | 映画
深夜 “薔薇の名前 ”を見た。

三度目かな❔いや 四度目か。
記号論学者ウンベルト・エーコ原作➡難解な部分が多い…それでも惹かれる。
名匠ジャン=ジャック・アノー監督➡子熊物語 愛人/ラマン スターリングラード どれもが好きな映画 。
名匠にはほど遠い…地平線の向こうの私なので、名匠と言う言葉に弱いという劣等感はあるが…¨ラマン¨のラストの女性の心情にはしびれた。

“薔薇の名前 ”に戻る。
700年ほど昔のイタリアのカトリック修道院が舞台。
ベネディクト派である。
戒律が厳しい。
フランチェスコ派の修道士ウィリアム(ショーン・コネリー)とその弟子アドソ(C・スレーター)が、その舞台にやってきた。
当時見習い修道士であったアドソの回想で始まる。
修道院内で起きる奇怪な連続殺人事件。
着く早々院長から依頼されたことは、ある若い修道士の死に関する謎の解明。
その謎の先が見えないないうちに、一人また一人と、命を落としていく修道士。
事件の背後に見え隠れするのは一冊の本。
その本のページには毒が塗られている。

修道院の図書室(雰囲気が…空気が…密度が迫りくる画面)…“発禁の書”が殺人の元凶…なかなかに奥行きが深い。
「アリストテレス 詩学 第二部」が犯人である。
全体的に暗いトーンの画面が中世という時代の暗黒を感じさせて余る。
聖書の知識や神学に精通していればいるほど…この映画を面白く見ることができると思う。
知識のない私でも魅かれるのだから…

宗教は魂を救済するものかどうかは広範で深淵で私には手に余る…しかし信仰心は大切であると思う。
何を信仰するのかは個人の自由意志である。

宗教のための宗教になってしまったり…信仰のための信仰になってしまったりすると要注意。
時に逸脱が生まれる。
本来の目的自体が失われる…こともあるのだ。

“薔薇の名前”という題名の意味が気になって何度も見る。
気になって思い出そうとする…忘れている。
見る。
又…忘れる 
その繰り返しで見ている映画がある。
そんな一作。

(早稲のチューリップ)

教会に残飯をもらいに来る農村の娘。
薄汚れた衣服と身体。
家族の食を得る為の背信行為…汚れているが彼女の顔も肢体も美しい。
語り部であるアドソの初恋の相手。

映画の題名の意味は…。
なんとなく理解できる。

今日もやっとこさ眠れる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海にかかる霧

2016年03月16日 | 映画
「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「母なる証明」「スノーピアサー」
韓国映画は凄い。
ポン・ジュノ監督は凄い。
「スノーピアサー」はハリウッド制作だったが…ポン・ジュノが監督。

「海にかかる霧」は「殺人の追憶」で脚本を担当したシム・ソンボが監督デビューを果たしたサスペンス。
制作総指揮はポン・ジュノである。
2001年に韓国で実際に起こった「テチャン号事件」が下地になっている。

不況にあえぐ貧乏な漁村。
漁船チョンジン号の船長チョルジュは、中国人の密航者を乗船させるという違法な仕事に手を出してしまう。
船員たちの生活と自分の生活と…それを守るための苦渋の選択。
2001年9月25日。
この日、峰山洞のある喫茶店で、ある契約がまとまる。
最初は、密航者を中国船から乗り換えさせて麗水まで運ぶだけで100万ウォンという話。

10月6日午前1時、真っ暗な海上で2つの船(中国船とテチャン号)は遭遇。
サーチライトを3回点滅させることで密航者60人は大急ぎでテチャン号へと移される。
密航者を乗せたテチャン号はすぐに麗水へ。
麗水へ近づくにつれ、密航者たちは人目につかないようにしなければならない。
テチャン号はそもそも8人の船員が乗る船。
しかし密航者を含めるとそのとき68名が乗っている勘定で積載違反。
海洋警察の取り締まりにより危機的状況に陥ったテチャン号は密航者たちを2つに分け、25人を魚を収蔵する船倉に、35人を水槽タンクに隠すのである。
蓋の上には重い漁網が載せられ通気性が少しはあった水槽タンクの35人はかろうじて生き延びる。
密閉された魚用の貯蔵に押し込められた25人は窒息死。

沖合で密航船と合流し、密航者たちを乗り換えさせて陸まで運ぶという簡単な仕事のはずだった…
海上警察の捜査や悪天候に阻まれ、それが思いもよらない事態へと発展していくのだった。

「美しき野獣」
「タチャ イカサマ師」
「ファイ 悪魔に育てられた少年」
「チェイサー」「哀しき獣」の実力派キム・ユンソクが船長を演じている。
韓国映画の凄さ。不幸さ。
出だしは少し単調だが、それを覆すように中盤からは船の上(閉塞状況)で歯車が、狂い始める。
人間の恐ろしさと獣性を芯から感じるのは主演のキム・ユンソクの演技力と存在感である。

彼は存在感だけを遺憾なくかんじさせる俳優であると思う。

虚無感、寂寥感、無力感 様々な感情で脳みそが揺れて…3回に分けて見た。

見ている私にもエネルギーが求められる作品であった。


疲れた。

映画で疲れたのは何年振りだろう。

重量感のある映画だったのだと思う。

ふぅっ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする