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融通性か?和・洋・中・無国籍・ジャンクとなんでも食べる胃袋と脳みそ。

シュガーマン  奇跡に愛された男

2015年02月22日 | 映画
{ロドリゲス}というミュージシャンのお話。
ドキュメント映画である。
1942年7月、ミシガン州デトロイト生まれ。
現在78歳になったのかな。

映画の冒頭部分 彼の歌が流れる。
味わい深い声。
けれど、歌詞には触れてくるものがない。
シュガーマンは砂糖を運んでくるらしい。

シュガーマン(薬の売人)
砂糖(ヘロイン) 救いのない貧乏人。その日暮らしの労働者。

無産階級を歌った歌…ギターが物悲しい。


1960年代終わり、デトロイトの片隅のバーで歌っていたロドリゲスは、大物プロデューサーの目にとまった。
映画の中では前半のこのシーンが良い。
店の隅で壁をむいて弾き語り…この時の歌はボブ・ディランの再来かもとおもわせる。

1970年代初めにアルバムを2枚発表する。
「インナーシティー(スラム街)の詩人」とも称された彼の音楽性は高く評価され、業界筋はその成功を疑わなかった。
しかし商業的には全くの失敗。
コード契約を解除されたロドリゲスは、アメリカの音楽シーンからほぼ完全に姿を消してしまう。

ところが…彼の録音テープが偶然か奇跡か、地球の裏の南アフリカに渡り、広まっていく。
反アパルトヘイトに立ち上がる若者たちの、反骨の歌として広がっていく。

白人のリベラル派の若者たちの圧倒的な支持を得て、{ロドリゲス}のアルバムは世代を超えたミリオン・セラーとなった。
南アフリカでは社会現象を巻きおこしたといってもいい。
しかして、当のロドリゲスは消息を絶ったままで、そのうちに南アフリカでは、彼は失意のうちに自殺したと信じられるようになったのだった。
本国アメリカのステージで、客の入りに不満で…もしくは思いどうりの声が出なくなって、ピストル自殺をした男。
まことしやかに信じられてきた伝説のミュージシャン。

90年代に入って、{ロドリゲス}の自殺説に興味を持ったケープタウン在住の男性2人。
彼らは執念で「伝説」のシンガーの足取りを追っていく。

アメリカでは“ほぼ無名のミュージシャン”だったことが判明し…インターネットのおかげで、現在も生きていることが分かった。
ロドリゲスは音楽活動を辞めて肉体労働者として娘達とくらしていた。

数十年の空白の後…南アフリカでのコンサート。
連日超満員札止めの大人気。
熱狂的な観客。

突然名声が押し寄せてきた恰好だが、ロドリゲスはそんな環境の変化にも、特に動じることはなかったようだ。

「何故、音楽をやるかって? ミュージシャンが音楽をやる理由は、金とか名声とか色々あるかもしれないけれど、何よりも楽しいからだよ。
これまで音楽を続けてこられたのは、音楽は直ぐに報いてくれるからだ。音楽は、世界と接触する感覚、タイミングの感覚、オーガナイズする感覚を教えてくれる」

19世紀末から自動車産業の街として興隆したデトロイトは、70年代には日本車の台頭により経済が深刻な打撃を受け、治安悪化が進んだ。
映画『シュガーマン』に散りばめられたロドリゲスの音楽は、そんな時代の空気に鋭く反応して生まれた曲ばかりである。
その静かで直接的なメッセージは、先の見えない不況に喘ぐ今日にあっても、同じように響いてくる。
若者が徴兵カードを焼き、警察による暴力、政府による抑圧も蔓延していたアメリカ。
アパルトヘイト政策で逼塞状況にあった南アフリカ。

海を越えて、風に運ばれ、呼吸するように{ロドリゲス}の歌が広がっていったのだ。

真実(真実)はどんなフィクションよりも感動する。

彼は今も肉体労働者として働きながら音楽を続けているという本当のお話。

 

暮れていく今日。





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