Tokyo Walker

諸事探訪

花を撮る

2014年07月28日 23時34分26秒 | 旅行

―近くの公園でうまくなる「感動写真」術!―
中野正皓/主婦と生活社
 1999年3月5日の初版本。都下の公園を舞台にして四季の花を丹念に撮った記録でもあり写真集でもある。その時々の考え方や花に対する撮影者の思いも伝わってくる。テクニックはあまり前面に出さずさり気なく解説する。ともすると技巧に陥りがちな写真術だが、押し付けがましい所は少しもない。「花は情緒、風情が大切」

何を今更ということもあるが、
・花を撮るには晴天より曇天の方がよい。
・整理された背景を探す。
・画角を狭くして、出来るだけ開放で撮る。
・焦点距離と手ブレの関係(300mmは1/300s以上)
・主題、副題(脇役)を決め込む。

写し方のバリエーション
 主題を決めて、あらゆるバリエーションを考えてみる。(撮り方を工夫する)

横画角:広がり、長さ、安定感を出す。
縦画角:高さを出す。

・微妙な色と明るさは露出補正で決まる。
・画面にあれもこれも取り込むと平凡な写真になってしまう。
・画面は二分割(散漫になる)より三分割(バランスが良くなる)で構成する。

群生の花(花壇など)は色の構成がポイント。
色数整理、色の配分、単純化した画面構成
パンフォーカス=画面全体にピントを合わせる。
 広角を使って絞り込んで(近距離から遠距離まで)撮る。

感動は大切だが、写真を撮るときは平常心で。

よい写真の条件は、
 主題の魅力と光効果、そして構成の工夫にある。――175p

撮影三要素
・主題は明確か
・光効果は適切か
・構成(形の構成、色の配置、バランス)は良いか

 中野さんはPL Filterや、絞り開放の「玉ボケ」をよく使っている。それにしても登場する植物の多様なこと、一級の植物図鑑のような写真集だ。また、春夏秋冬の写真によって日本の四季の豊かさも解る。日記風の解説もまた楽しい。

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M645のレンズのこと

2014年07月27日 17時58分17秒 | カメラ

 M645には当初から15本のSEKOR Cシリーズ交換レンズが用意されている。その後のNタイプを加えて、新旧合わせて全30種類に及ぶ。この充実したレンズ体系はセミ版としてはとても珍しいことらしい。そんな中でも、45mm、55mm、70mm、80mm、110mm、150mmの6本は最も使用されるレンズであろうと思う。
35mm版の画角(対角)比で、およそ
(M645)→ (35mm)
 45mm → 28mm
 55mm → 34mm
 70mm → 44mm
 80mm → 50mm
 110mm → 70mm
150mm  → 94mm くらいに相当する。

 そしてそのレンズの明るさはレンズを交換しても違和感が無いようにF2.8に統一されているから素晴らしい。しかも、80mmは時と場所、被写体によって、その魅力を最大限に引き出すことができるようにF2.8、F1.9の二種類を用意している訳だから言うことはない。何も最初からすべて用意する必要は無いけれども、最も自分の写真作りに合った1本を選択することができるというのは実に素晴らしいことだと思う。

45mm
 F2.8はちょっときつい広角で、被写界深度が深いことを利用して動きの早いスナップに向く。像が歪むものの接近にも強い。最短距離はフィッシュアイに次ぐ45cmである。勿論、広さを感じさせる風景にも使える。遠近感を強調するレンズである。パンフォーカスで撮るならこれ以上最適なレンズはないだろう。

55mm
 F2.8は標準レンズ(広角系)ということで最も無難なレンズ。あまりきつい広角でもなく、かと言ってストレート(80mm)ではちょっと不足なとき、無理のない画角を提供してくれる。45mmと同じ最短距離であり接近にも強い。シャッターチャンスの少ないスナップに向いている。

70mm
 F2.8は、これはまたあまり見掛けない珍品で、レンズにシャッターが付いているものである。詳細は判らないが、本体のシャッターはBにして開いておき、レンズのシャッターの方で開閉するというような操作になるのだろうか。X接点が付いているので全速でストロボとシンクロする。勿論、シリーズ中最も静音かつ低振動であるに違いない。連動してミラーUPを行う機能までは付いていないと思うが、何とも変わったレンズである。是非、このレンズを使って撮影した蘊蓄を聞いてみたいものだが、何しろレンズが稀少過ぎると見えて、そんな話はなかなか聞こえてこないのが残念だ。このレンズにはシャッター無しのタイプ(E)もある。大きさは80mmとそっくりなのだが、レンズの構成はFront Lens unitがちょっと異なる。80mmとは似て否なるレンズなのである。

80mm
 F2.8はSEKOR Cシリーズ中最も軽量でコンパクト。人が目で見たときに最も近似的な視野角で自然な感じがする。さらに何と言っても、Bodyに実装してみて「最もバランス良く恰好良い」レンズでもある。同じ80mmでF1.9というものもあるが、多少薄暗い所でもピント合わせが楽で、シャッター速度を下げずに済み、ボケ味も奇麗に、という場合はこれに限る。SEKOR Cシリーズ中最も明るいレンズである。おそらくメーカーとしては最も渾身力作の一本であるに違いない。その他、接写用のマクロ(F4)はこの80mmの中に用意されている。

110mm
 F2.8は焦点距離と言い、明るさと言い、明らかにポートレートを意識したレンズだと思う。アップでもちょっと引いても自然なイメージが保てるレンズである。

150mm
 F2.8はシリーズ中最も優れたレンズとして定評がある。ポートレートにも使えるし、なによりこの明るさ故に中望遠として手持ちで使える限界レンズである。明るさ故の後ろボケ、前ボケもすばらしいものがあるらしい。SEKOR Cシリーズ中の最高傑作とも言われている。そのほかにF3.5、F4もあり、Userが求める被写体によって適切なレンズを使用するという考え方に微塵の妥協もない。

 こうして、SEKOR Cシリーズを眺めてみると何だかレンズ開発者の(こうでなければならないという)心意気、意気込み、熱い思いのようなものが感じられる。やはりここは、この魅力あるレンズ体系を構成し、具体化して残してくれた間宮精一さんに感謝したいと思うのである。勿論、出資の菅原恒二郎さんにも感謝!

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花のある風景写真

2014年07月23日 21時18分16秒 | 写真論

―作画と撮影ポイント―
岩間倶久/金園社
 1990年10月10日発行の版数なしの本。これにはシリーズがあるようで、「花のある風景写真/1983.3」、「海のある風景写真/1987.4」、「石仏道祖神のある風景/1987.10」と続くらしい。いずれも「作画と撮影ポイント」のSub Titleが付くムック本。「花のある風景写真」はシリーズの最初の本となる。発行当初から24年ほどになるが、この間に世の中随分変わった。今やほとんどデジカメが主流である。この世界では激変といってもいいかもしれない。ほんのふた昔ほど前のことなのに。しかし、写真そのものの撮り方(或いは写真についての考え方)はデジタル化されることは無いから読んでもなかなか楽しい。

 この「花のある風景写真」は初心者向けに作られたようだが、全体として何か精神論的でもあるし、我田引水的でもある。言いたい事は解らないでもないが、もう少し理論的な説明に力を入れて欲しかった。逆に「良い写真」というものが、いかに説明し難いものなのかよく解る。ともすれば独善的、自画自賛だったりする訳だが、結局のところ自分が「良い」と、「すばらしい写真だ」と評価できればよいわけで、それ以外のことは二次的、三次的要素になるのかも知れないと思ったりもする。

 しかし、一点だけ納得するとしたら、写真を撮るということは「被写体の中に撮りたいと思う点を探し出して、それを最大限引き出す努力をすること」であるということになる。色であれ形であれ、その魅力を最大限に引き出すために、フィルム、カメラ、レンズは勿論、天候や風の動きにも気を配り、絞り、シャッター速度、ピントといった条件を決め込むということに他ならない。最後は「被写体からの光を、いかに最大限魅力的に取り込むか」だけである。背景や構図も含めて、すべては主題を引き出すための工夫に他ならない。

・花芯(おしべ、めしべ)にピントを決める。
・花の顔はこちらに向けて、花びらの脈、葉脈が最も濃く鮮やかに見える所から撮る。
 群像の中の一人の例え(米粒のような花でも、こちらを向いてさえいれば)
・光の反射を避ける。
 上下左右に移動して、光の反射を避ける。(光の照りは点描写になり葉の片隅に白く残る)
・曇天のときは空を入れない。
 曇天は散乱光=近接撮影なら確実に花の色が演出できる。
・画面は遠景1/3。
・平面的な背景(壁、蔵など)は天地左右いずれかに空間を作る(立体感、存在感を生む)。

 心得九個条なんてのもあったりするが、ちょっと飛躍が過ぎるようで、今ひとつ具体性に欠ける。5月の花(あやめ、かきつばた、菖蒲など)の話は初めて聞く。早朝に咲く男花なんだとか。5月5日の端午の節句で使う菖蒲湯もこの辺が由来なのかも。

・標準Lens・・・・片目で90mm、両眼で50mmが人の見る風景で、ここから50mmは標準Lensと言われる。これを境に広角と望遠に分けている。標準Lens50mmはメーカーの本流。最高の技術を結集した主力のLensである。
・広角・・・・山は低くなる。
       広角で遠景を写しても主題にはならない。(接写してこそ効果あり)
・望遠・・・・山を引き寄せ、高く見せる。

 三脚のことについて、ちょっと解説があったが、結論としては「先ず1~2年は三脚なしで撮影に専念」、「画面や写し方のことも解らないで三脚を求めるのは無謀」ということであった。耳が痛いなぁ。

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SEKOR C 80mmF2.8

2014年07月19日 11時09分19秒 | カメラ

 M645においては標準レンズとして扱われている。35mm版にするとその焦点距離は50mmに相当する。シリーズ中最も軽量、コンパクトで、今風に言えばパンケーキと言えなくも無いがちょっと無理か。M645には最も似合う5群6枚のレンズだと密かに思っている。

 ということで、先ずはボディに付いて来た「SEKOR C 80mmF2.8」だが、外観は悪くないのに何故かフォーカスリングが重過ぎる。このまま力任せに回すと、ヘリコイドが傷むに違いないと思い、別のものを探すことにした。そこそこのものが出て来たので落札。商品が到着してすぐに開封してみたのだが、何と外観は悪くないのに同じようにフォーカスリングがカクカクする。思わず、はぁ~~、とため息が。いくら何でも3本目には手が出ない。

 今度は方針を変えて、グリス交換を自前で行うことにした。2本もあれば、何とかそのうち1本くらいはまとめられるだろうという甘い考えで。
 そのために、道具作り、材料探しに奔走する。レンズを破損させないためには適切な道具、最適な材料が不可欠ということで細々と用意した。「SEKOR C 80mmF2.8」の修理の手順はなかなか見つからなかったが、同等で参考になるものはNet上に多数あった。勇気を貰ってチャレンジする。ことの手順を全て記載する訳にも行かないが、初めてのことでもありなかなか大変だったことは確かである。

 グリス劣化でフォーカスリングが回らない問題
レンズの中でグリスを使用しているのは確かにフォーカスリングだが、この問題には2つの原因があった。1つは確かにNetの中でも良く見掛けるヘリコイドのグリス切れ。ところが実はもう1つ細目ねじの方のグリス切れというものがあり、どちらか或いは両方のグリス切れが原因でフォーカスリングは滑らかに動かないのである。今回はヘリコイドではなく細目ネジの方が原因だった。勿論、ものはついでで、両方を清掃して新しいグリスを塗布したのだが、この辺のことは分解して初めて知ったことである。

 クリックボール
絞り環のクリックを作っているバネと玉(ベアリング球)のことは、Netでも見掛ける。その苦労話を読んで、ほぅ~と他人事のように読んでいた。実際に自分でやってみると、あれほど「注意するように」と書いてあったのに案の定、分解時にその姿も見ないうちに何処かへ飛んで行ってしまった。もう1本同じレンズがあることで油断があったのかも。グリスの塗布も終わって組み立てるとき、別のレンズからボールだけ拝借。今度は逃さないように透明ポリ袋の中で分解した。やっと姿を現したボールはφ1.6mmであった。今度はこれを清掃したレンズ側に組み込む段になって、またもや飛ばしてしまった。どこに転げたものやら部屋中探せど見つからない。

 まさか、ボール欲しさにまたレンズを調達するのもどうかと思う。そこで考えたのがボールペンだ。ボールペンのペン先のボールを取り出してみた。なるほど「ペンの「書き太さ」はそのボールの大きさに等しい」という何某かの定理のようなことが判った。極太1.6mmのボールペンの玉はφ1.6なのだ。取り出した玉のインクを拭き取って、今度は飛ばさないように(コツがある)組み込んでみた。思ったとおり、何とも心地よくクリックが決まるではないか。いや~我ながら実に名案だった。

 いくつもの困難を乗り越えて完成したのがこれ。チリ、ホコリ、カビなし、ヘリコイドはスムーズ、絞りクリックは快適。無限遠点もキッチリ決まった。往年の美しさを取り戻し、燦然と輝く様は何ともいえない。

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花の撮り方完全攻略ガイド

2014年07月13日 17時11分11秒 | 写真論

-花の基礎知識から撮影テクニックの詳細まで-
 吉森 信哉/CAPAレベルアップムック

 ムック(Magazine+Book)本などと呼ばれているハウツウモノ(実用的な方法や技術を教える案内書)。今まであまり読む機会はなかったが、ひょんなことから読んでみた。既に知っていること、知らなかったこと織り交ぜて楽しく読んだ。

 私は「風景写真」に興味があり、自然風景、いわゆる絶景などと呼ばれているものも勿論だが、そうでもなく、どこにでもあるような街角風景もかなり興味がある。今回は「花」が主題なのだが、共通することも多い。

 「写真を撮る」ということは、勿論被写体(花)が中心であることに変わりはないが、被写体の最も美しい所を探し出し、周囲の光、造形、バランス、配置(構図)、色彩を総動員して主役を盛り上げる作業である。テクニックはそのための手段(技術)である。ターゲットの被写体だけでなく、その背景の色や形が重要で、ターゲットと相乗するようにもって行く。

〇色を見たとき、画像の美しさ、色彩の豊かさ、艶やかさ、色とコクが重要だ。
〇造形を見たとき、ボケの形、空間の広さ、全体のバランスが重要だ。

 「写真を撮る」ということは、被写体の持つ存在感、美しさ、生命力、躍動感、造形の魅力、繊細さ、色あい、階調・・何かしらの魅力を、引き出し、強調し、演出することに他ならない。カメラは勿論、フィルム、レンズや三脚、その他機材や道具は勿論あるに越したことはない。しかし、最も重要なことは被写体の魅力を引き出すためにあらゆる光を活用する方法(テクニック)である。そのためなら手段を選ばない。全ては被写体の魅力を最大限に演出するためである。

 150mm級(35mm換算で92mmくらい)の明るいレンズ+テレコンの効用(接写能力、圧縮効果)は以外だった。また多重露光のピント移動も、絞り開放の点光源の利用方法も認識不足であった。まだまだ詰めが甘いな、と反省しきりである。

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