Tokyo Walker

諸事探訪

ZUIKO AUTO-MACRO 50mmF3.5(銀縁)

2021年02月21日 22時23分54秒 | カメラ

 このレンズの売りは、何といっても超小型ということだろう。確かに何本かある50mmマクロの中では最も小型である。ZUIKOであれば写りも悪いはずは無いということで入手した。銀枠仕様の古いタイプであったが外観は悪くない。しかし、古い分だけ何かしら問題はあるものだ。

1.レンズ中玉近辺に大きめの黒いゴミがある。(カビは無し)
2.10倍ルーペで見て、後玉にホコリか線キズか何かがある。(カビは無し)
3.フォーカス環の回転トルクにムラがあり、操作性が悪い。

 大きくはこの三点か。
ゴミ取りにしろグリス交換にしろ、どうしても分解する必要がある。フォーカス環には滑り止めのゴムが巻き付けてあり、古いので破れるのではと、なかなか手が出ない。おまけに、今までの経験からマクロは大方イヤラシイのである。しばらく眺めていたが、意を決し分解してみることにした。

 ネームリングを外してすぐに、オリンパスの高度な設計と精度の高さにちょっと衝撃を受けた。それは、レンズ構成のあちこちに見られる合理的な考え方だった。ネットでも分解清掃は意外に易しいという意見が散見されたが、その「易しい」原因は、合理的な考え方と高度な設計力によるものであった。
 竹串2本を使ってゴム巻きも無事に外し、二重のヘリコイドも分解して、硬くなった古いグリスを除去して新しいグリスを塗布、「大きめの黒いゴミ」も除去、レンズ清掃も並行して作業を完了した。絞り機構は問題が無かったので、ホコリの除去に留めた。

 無限遠点は、これまた余角というものが殆ど無く、ヘリコイドの入り口を以下の写真の配置になるように嵌めるだけであった。この配置を確保できるポイントは1か所しか無い。因みに、ヘリコイドは内外とも8条で360/8=45度ステップで大きくズレるため、その違いがすぐに判る。

 「合理的な考え方と高度な設計力」を感じながら組立を進め、無限遠点調整まで来たところで、ちょっと問題が発生した。通常フォーカス環の表示面で3mから∞まで約10mmあるのだが、この超小型レンズは半分の5mmほどしかない。つまり調整範囲が狭いのである。

 無限遠点はほんの少し(0.2mm位)オーバーインフになっているのだが、最初のネジ止めの痕跡があるため、0.2mmずらしても、止めネジを締め付けると元の(痕跡)位置に戻ってしまうのである。ということでキッカリの調整は諦めて、オーバーインフを了承することにした。(後で考えたことだが、内外連結部のネジ2本の長孔は無限遠点の微調整が可能なのかも知れない)

 距離3mから∞までの範囲を5mmほどの中でピント合わせをするというのは、確かに微妙な調整である。デジカメでは「拡大表示機能」があるから苦にもならないが、この機能無しでピントの山を掴むのは難しい。ZUIKO AUTO-MACROが「3mから∞まで」の近辺を多少犠牲にしているのはMACROであるが故と思われるが、それ故ヘリコイドのトルクは滑らかでなければならないという理由がある。

 滑り止めゴムの接着は3Mの「スーパー多用途2(超強力接着剤Black)」を使用した。弱すぎても強すぎてもいけない接着だが、これはどうだろうか。と、いうことで最後に後玉のレンズ清掃をして完成したが、例のモノは残念なことにホコリではなく、最悪の「線キズ」だった。まあ、よく見ないと分からないレベルなので、このまま使用することにした。

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-MACRO 50mmF3.5(銀縁)
 フォーカス環の適切なトルク感、快適な操作感が復活し撮影の機会が待ち遠しい一本である。大げさでなく、散歩の途中の草花や料理の出来栄え等をお手軽に撮るというのが今の用途である。



2021年02月12日 13時12分53秒 | カメラ

 冬の最中だが、比較的穏やかな昼間、カメラを片手に散歩に出てみた。今回のレンズは、少し前にオーバーホールしたばかりの「OLYMPUS OM-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 50mmF1.4」を付けた。

保護Filter:MC PROTECTOR NEO 49mm/Kenko
Adaptor:KF-OME PRO(OM-NEX PRO)/K&F CONCEPT

 気温は12~13度くらいか、この時期としては風もなく日差しもあって比較的暖かい。薬師池の西側、山の斜面は落葉樹の森でご覧のように葉が全て落ちて、モノクロームの世界、いかにも寒い。弱い日差しが木々の間を柔らかく射しているが、春の兆しは一見どこにも見当たらない。

 斜面の小径を下がって、池の周りに来ると、そこには春の兆しがあった。
小ぶりの蠟梅(ろうばい)の花が冬の日差しを受けて咲いていた。独特の蜜蝋細工のような花で、気が付かなかったが、甘い香りもするらしい。

雪中四友(せちゅうしゆう)という言葉があるが、雪に似合う四友は蝋梅(ロウバイ)、玉梅、茶梅、水仙の4つの花を指すらしい。そう言えば、公園に来る途中の道路脇の土手に、水仙が咲いていたのを見掛けた。玉梅は、白い梅の花のこと、茶梅は山茶花(さざんか)のことを指す。どの花も白い雪が似合う春の花ということである。雪は皆目何処にも無いのだけれど。
 関東は、これからがいつドカッと来るか判らない雪の季節、湿った重い雪は木々の細い枝を折り、軟らかい新芽の草花を圧し潰してしまう。
風情も何もあったものではないのだが、それでも春は確実にやってくる。

 45cmまで寄れるレンズではあるが、三脚無しではちょっと辛い。あまり無理のないところで適当に撮ってみた。蠟梅のそれらしさは何処にも無いが、確かに薄黄色の艶々した花である。


 昨年植えた梅だろうか、添え木が付いた1mほどの若木に、いかにも春らしい梅の花が咲いていた。
 つぼみの時は紅く、開花するに従い白くなる様子がある。しかし、玉梅(白い梅の花)ではないだろう。どちらかというとモノクロームの風景が広がるこの時期、梅の紅白はやはり春が近いことを人々に教えてくれる。まだまだ寒い中にあっても何だかホッとする瞬間ではないだろうか。

 最後に古木の木肌を撮ってみた。

 乾いたコケの具合、永い間風雨に晒された木肌の風合い、色調、なかなかのものだ。





G.ZUIKO AUTO-S 50mmF1.4(銀縁)

2021年02月01日 17時57分07秒 | カメラ

 超小型の50mmF1.4といえば、これしかない。OMシリーズの標準レンズでもあり、OLYMPUSのフラグシップでもあった。入手したのは初期型の次に来る前期型というもので、No.415325。

 1973年5月発売のフィルター枠(銀)、モノコートというもの。10万番からスタートして50万番あたりからフィルター枠が(黒)になる。6群7枚、最短 0.45m、Filterφ 49mm、重量 230gというもの。多少の事は自前でやろうと決断し、2020年6月、カビ物の本機(売り手はジャンクと称していたが)を入手した。外観はスレキズ少なく確かに美しいが、カビは盛大に蔓延って、とてもそのままでは使えない。

 早速、レストアに取り掛かる。ところが外側を分解した所で、行き詰った。どうも接着(ネジロック)してあるようで、どうしても外れない。エタノールどころか「接着剤はがし」や「CRC556」、「ホットプレート」まで持ち出してやってみたが、レンズを収納している銅鏡がどうしても分解できない。そのうち、プライヤーまで持ち出して強引にやってみたが、やはり分解できなかった。ここら辺まで来ると、レンズはボロボロ、銅鏡はキズだらけということで、レンズのカビを気にする所では無くなっていた。偶然この機がそうなのか、或いはすべての機が接着してあるのか判らないまま、近い製造番号のカビ無しのものを探して落札、再チャレンジすることにした。

 同7月、No.347705を入手。カビの少なそうなものを選んだつもりだったが、中玉あたりに少しカビがある。清掃すれば充分綺麗になるレベルなのだが、それが出来ない。外観はスレも無くかなりの美品で、ほとんど使用形跡がないものだった。今度は無理せずに出来るだけ清掃して使おうと思う(多少の薄カビは止むなし)。ヘリコイドのグリスは硬化してかなり重く、フォーカス環のトルクにムラが出ているのでこれも直したい。

 早速、Front Lens Unitを外そうと思ったが、やはり外れない。それどころか、Front Lens Unitの第一Lensさえ外れない。前回は「接着剤はがし」を使ってどうにか外したが、今回はどうしたものだろう。Rear Lens Unitも最も外側だけが外れたが、次が行けない。どうやらこの頃のZUIKO製品は接着剤で止めてあるようで、もはや疑う余地はない。

 そろそろと元に戻して考えた。このまま進めば前回と同じになってしまう。長々と眺めて見たが、10月、思い切って(お高いオールドレンズになるが)プロに依頼することにした。接着剤の話しは一応しておいたが、「挑戦してみる」とのこと。

 しかし、ここからが長かった。11月、12月と過ぎて、「さては、壊れて再起不能」になったかと思っていたが、明けて2021年1月、修理完了とのこと。報告書によれば、やはりすべて分解することは出来なかったようで、一部はレンズを取り出さずに裏表から清掃したらしい。本来磨き上げる所も一部出来なかったようだ。Web Pageを拝見すると、年末、「固着が激しくムリに解体を試みた為に手の甲を痛めた」、「四、五日仕事が出来なかった」と・・・。これは、このレンズが原因に違いない、と。

 いやはや、大変な作業になったようで「申し訳ない」の一言です。で、小さなカビ痕は残ったものの、どうにか美しくなって戻って来た1本でした。

アダプターはK&F Concept KF-OME PRO(OM-NEX PRO)/Amazon