砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

ナンバーガール「逆噴射バンド」ツアー@広島クラブクアトロ

2020-01-07 14:39:14 | 日本の音楽


なんちゅうかこう、モヤモヤしておるので文章をしたためる次第である。
今年一発目、1月3日に行ったナンバーガールのライブレポートである。



オノレは1月3日にナンバーガールのライブを観に行った。冷凍都市広島シティにある、クラブクアトロという800人程度のハコである。かねてより大好きだったナンバーガール。まさか再結成するとは思っていなかったもんだから、そのニュースを聞いた時はとても嬉しかった。再結成後のライブは7箇所申し込んで1箇所だけ当たった、それが広島シティであった。

当日、俺は興奮していた。ライブを前にして脈拍が加速し、心拍数は上昇。ハラハラしておった自分はそわそわとパルコ内をうろつき、嶋村楽器に寄ってピックを買うなどした。思っていたのと違うピックを買ったことにあとから気づき、もう一度買った。同じ店員さんだったので極めて恥ずかしかった。

物販で爆買い中国人と化し、1万5千円分グッズを買った。グッズをコインロッカーに預け、列に並び長いこと待った。開場時間になり少しずつ人が入っていく。夢じゃないよな、これは夢じゃない、と自分に言い聞かせる。他の客らもテンションがバリ高まっているのがわかる、皆殺気立っておる。
いよいよ自分の番になり、入場する。思ったよりもずっと小さいハコであった。後ろで観る人が多かったのか、整理番号が600番台であったにもかかわらず前から4列目で観ることができた。幸運だった。それから2時間、ライブが行われた。熱狂、歓声、騒音。あっという間だった。

しかしライブ後、どこか醒めた気持ちになった自分がそこにいた。なんとなく虚しい気持ちを抱えたまま冷凍都市を彷徨い、宿に戻って酒を飲んだ。したたかに飲んだ。大好きなナンバーガールを間近で観られたというのに、虚しい。何故だ?腑に落ちない、という気持ちがずっとオノレの中にある。


正直に言おう。「殺伐としていなかった」のである。
まず向井の喉の調子がよくなかった。CDJなどのライブがあったからか、はたまた酒の飲み過ぎか、喉を痛めているようであった。序盤は「はじめてのチュウ」を彷彿とさせる上ずった声で、聞いていて心配になった、辛そうだった。彼は繰り返しレモンサワーと思しき物体を飲んでいた。後半になって持ち直してきたものの、やはりシャウトの部分が苦しそうであった、絞り出すように叫んでいた。
それから。とても寂しいことだが、アヒトのドラムが喧しくなかった。風のうわさで彼がトラックの運転手をしていると聞いたことがあるが、他でやっているバンドのVola & The Oriental MachineでもGt/Voだし、ドラムを叩くのにブランクがあったせいだろうか(ライブ中、アヒトが構成を間違えることもあった)。

「ZEGEN VS UNDERCOVER」はそこまでバリヤバくなかったし、「Young Girl 17 Sexually Knowing」はテンポが遅かった。もともとそんなに速い曲ではないが、拍子抜けするくらいゆっくりだった。「Omoide In My Head」には人を殺せそうな勢いがなかった。SapporoのライブCDを狂ったように何度も聴き(それこそ高校生の時は目覚ましのアラームに設定していた)、オノレが大学を卒業するとき、サークルのライブで最後に演奏したあの曲。あの思い出。
悲しいかな17年の歳月は、以前のような勢いを彼らから奪ってしまっているようだった。長い沈黙の期間に、自分が彼らを理想化しすぎていたのかもしれない。17年。それはとても長い月日であった。自分も年を取り、彼らも年齢を重ねた。45歳のおっさんが「制服の少女よ」と歌っているのは確かに哀しいのかもしれない。しかしそれでも、俺は彼らに期待をしていたのだ、自分が思っていたよりもずっとずっと期待していたのだった。


良かった点もたくさんある。中尾憲太郎45歳のベースはすごかった。生で聴くと痺れた。あれだけのフレーズをダウンピッキングで弾きながらも、頭を振ったり動いたりとパフォーマンスも格好よかった。途中で何度かにっと笑う彼は不敵であり、頼もしかった。最高だった。いささか省略というか、楽をしているところもあったけれど(例えば「Omoide In My Head」、Aメロは8分でタイトに刻むのではなく、タータタタータタというリズムになっていた)、ベースの腕前は流石だった。前で観られて本当に良かった。
田渕ひさ子のギターも圧巻だった。特に「Num-Ami-Dabutz」「U-REI」や「転校生」。野太いながらも抜けの良い中音域をかき鳴らしておった。どうやったらあんなにきれいな音を出せるのだろう。素晴らしいの一言に尽きる。

初期の曲をたくさん聞けたのも嬉しかった。わがままを言えば「Trampoline Girl」や「性的少女」もやって欲しいところだったが、「裸足の季節」や「転校生」「桜のダンス」「Eight Beater」を聞けたのが良かった。特に「Eight Beater」の低音に、身も心も痺れた。


これで失望して終わり、というのではない。
俺はまだ彼らを諦めない。
またライブを観に行く、必ず行く。
俺は俺を取り戻すのをじっと待っている。



セットリスト(酒を飲みすぎて記憶が曖昧なので「日刊セトリ」より引用したもの。間違っていたら申し訳ない)
鉄風鋭くなって
タッチ
ZEGEN VS UNDERCOVER
Eight Beater
IGGY POP FUNCLUB
裸足の季節
透明少女
夕焼け小焼け
Young Girl 17 Sexually Knowing
Num-Ami-Dabutz
Sentimental Girl’s Violent Joke
DESTRUCTION BABY
MANGA-SICK
Sasu-You
喂?
U-REI
TATOOあり
水色革命
日常に生きる少女
転校生
Omoide In My Head
I don’t know

アンコール
桜のダンス
KU~KI
透明少女

丸の内サディスティックのコード進行を愛でる話

2020-01-01 05:47:07 | 日本の音楽


あけましておめでとうございます。新年早々ブログを更新します。は?こちとら暇なんだよ!!(謎ギレ)
そんなわけで今日はコード進行の話。「難しい話とか好きじゃない~まぢ無理~」「そういう話する人って友達いなさそう、生きる価値あるのかな…」って思った方はとりあえずリンクしてる曲だけでも聞いてくれ、そして地獄に落ちろ。



最初に少し理論的な話を(苦手な人は飛ばしてOKです)。
音楽をやっていると大半の人はコード(和声)に出会います。ギターや金管、弦楽器でもコードの重要性は変わりませんが、単音よりも一度にたくさん音を鳴らす楽器(ギター、ピアノなど)は特に意識する頻度が高いでしょう。コードというのが「音の組み合わせ」だからです。

例えば。
ドとミとソを一緒に弾くと気持ちよく聞こえる。これが「コード(和音)」です。逆にドとレとソ♯を一緒に弾くと気持ち悪く聞こえます。これは「不協和音」と呼ばれます。コードにはたくさん種類があって、やれ完全和音だのディミニッシュだのナインスだの、初心者の頃は覚えるのに苦労するものです。


大半の曲はコードの組み合わせによって成立しています。
例えばNirvanaの「Smells Like Teen Spirit」という世界的に大ヒットした曲。この曲はたった4つのコードで出来ています(Fm、B♭、A♭、D♭のみ。なんて省エネなんだ!!のどぐろセクシー担当大臣よりよっぽど省エネ)。

Nirvana - Smells Like Teen Spirit


ポップソングでは基本的にコード進行が難しくありません、スピッツとか初期くるりとか、比較的簡単なコードで構成されています。もちろん例外もあって、日本だとキリンジや山下達郎、aikoやスガシカオが変なコードを使っています、とても奇妙です。お前らいい加減にしろよ、弾けないんだよ。


しかしながら。
基本的に音階には―例外もありますが―ドレミファソラシドの7音と、黒鍵5つを足して12音しかありません。そうなると、必然的に似たような、あるいは同じ組み合わせが出てくるのです。


さてようやく本題に入れそう。
今日言いたかったのは、コードが同じような組み合わせの曲のなかで、ご存じ椎名林檎の初期ヒット曲「丸の内サディスティック」と同じ進行の曲を列挙して愛でる、というものです。この進行は王道中の王道というか、それぐらい目立つというか、焼肉で例えるなら上ハラミくらいのインパクトがあります。

丸の内サディスティックは、ネットで調べたところキーがE♭…のはずなのですが、コード進行的にはCmです、歌メロはE♭なんだけど。Aメロやサビ(将来僧になって結婚してほしい部分)が以下の進行になっています。とりあえず曲も貼っておこう、ワウのかかった長岡さんのギターが好きなんで事変verです。

A♭maj7→G7→Cm7→E♭7

丸の内サディスティック/東京事変


キーをCmとして考えると、基本的にVI→V→I→IIIという進行になっています。このコード進行はセンチメンタルな雰囲気を醸し出しながらも、メロディアスかつオシャレに聞こえる、ヒットソングに持ってこいの進行です。とにかく耳に残りやすい。
ちなみに椎名林檎の「長く短い祭り」のサビも

B♭maj7→A7→Dm7→F

とほとんど同じ進行ですね。ある意味セルフパロディみたいな感じ。途中で事変の「能動的三分間」の歌も聞こえてくるし。

椎名林檎 - 長く短い祭



他に似たような進行をしているのはPolarisの「深呼吸」のサビ
G♭maj7→F7→B♭7→A♭7
キーがB♭でVI→V→I→VIIの組み合わせ。曲のオシャレに対する謎のPV、果たしてこれはオシャレなんだろうか…。

Polaris - 深呼吸


続いて青葉市子の「いきのこり●ぼくら」のAメロ部分
A♭6→G7→Cm7→F7
キーはCm、VI→V→I→IVの組み合わせ。少し変化がありますが、似たようにも聞こえる。この曲もいいですよね、青葉さんの作品だとこのアルバムが一番好きだな。

青葉市子 - いきのこり●ぼくら


eastern youthの「夏の日の午後」の冒頭
Am→G♯7→C♯m7
キーはC#m(たぶん)、VI→V→Iの進行で、他と比べてシンプル。この曲超かっこいいんだよな、好き。ベースも躍動感あふれて難しすぎる。

eastern youth - 夏の日の午後 (HQ)


くるり「琥珀色の街、上海蟹の朝」
B♭→A7→Dm7→G7
このような進行が何度も出てきます。キーはDm(おそらく)、VI→V→I→IVですね。このDm7が時にA♭6になることで、べたっとした感じを回避しています、テクニカルやで。大好きな曲。

くるり - 琥珀色の街、上海蟹の朝



洋楽編
Arctic Monkeysの「When the Sun Goes Down」のメロの部分
G→F♯m→Bm
キーはBm(きっと)、VI→V→Iの進行ですね。Eastern youthと同じですな。確かこの曲で人気が出たように記憶しています、違ってたらすみません。

Arctic Monkeys - When The Sun Goes Down (Official Video)


Thunder「River Of Pain」
今回この記事を書くために久しぶりに聴きました、超懐かしい。曲はいいのにPVが謎、本当に謎。当時はおしゃれに見えたのかもしれないけど。ギター壊れないか心配になるし、ドラムセット持ってる人たち大変だったろうな…と人にやさしい気持ちになれます。

F→Em→Am→G
ほとんどこの進行のみの曲、ハードロックだもんね。キーはAmでVI→V→I→VII。

Thunder River Of Pain


【2020年3月29日追記】
まだありました。
Scoobie Do「夕焼けのメロディー」

AMaj7→G♯m7→C♯m7→F♯m7→Em

ギターはもっといろいろやってますが、基本的なコードはこんな感じかな。この曲も好きです。

Brand New Heavies 「You Are The Universe」のサビ

B♭Maj7→Am7→Dm7→F7

この曲も好きでござる。Incognitoと並ぶ、イギリスのAcid Jazzブームの立役者ですね。途中のベースソロが格好いい。

洋楽には少ないのか、ライブラリを探してみたんですがぱっと思い当たる曲がほかになく。日本ほどコード進行を意識しないからなのか、ベタ故に避けられているのか。あるいはこの進行がセンチメンタルな感じを引き起こすので、そういった曲を向こうではあまり作らないのかもしれません。探したらもっとありそうだけど…ブラジルとか南米あたりでは使われてそう。


いかがでしたか。私は音楽のライブラリとインターネット上のコード進行表を行ったり来たりして疲れました。コードを意識するのは楽しいし、ただ聞くだけとは違った楽しみ方があります。
でも負の部分もあって。一度気づいてしまうと「あ、丸の内サディスティックと似た進行だ」と思ってしまい、その曲を純粋な気持ちで聴くことが難しくなります。焼肉で例えるなら、タレと塩で味をわけたとしても、ずっと上ハラミ食べてたら飽きますよね、たまにはタンとかホルモン、ロースも食べたいですよね。そういうことです(Q.E.D)


新年早々頭を使ってしまった。事変も活動再開するみたいだし、そろそろライブ行くか~。皆様どうぞ今年もよろしくお願いします。あ、さっき地獄に落ちた人はそろそろ戻ってきていいですよ。

以前の事変のレビュー
『大人』