砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

8月が終わる

2024-09-03 19:00:00 | 日記

祖父が亡くなりました。
翌日に職場の飲み会があったので、「身内が亡くなったので明日の飲み会を欠席したい」という、ありがちな連絡をしました。このような連絡をする日が来るなんてなあ…。

それにしても。
人が死ぬってこんなに悲しいものなのか。
びっくりするほど泣きました。今でも、不意に涙が出ます。


ある程度は覚悟していたのです。
昨年にがんが見つかり、母から闘病の様子を聞いていました。
それに、盆に会ったときには人が変わったように痩せていました。

8月半ばに帰省して祖父宅に行きました。
話には聞いていたけれど、かなりやつれた祖父の姿を目の当たりにして。
祖父には申し訳ないのですが「人が死ぬということ」を意識してしまって。
涙をこらえようとしたものの、溢れてしまいました。
少し話したあとに、祖父から「握手しよう」と提案があり、握手しながら一声かけられました。
こらえるのに必死だったので、何を言われたかはっきり覚えていません。

確か「あんたはまだまだこれからじゃ、がんばっての」とかだったと思います。
はっきりと覚えているのは「あんたたちのおかげでだいしょ楽しかったわ」と言われたこと。
だいしょ、というのは山口の方言で「ぼちぼち」「多少」という意味です。
その言葉を聞いて、やはり涙があふれてしまいました。
それから肩を組んで写真を撮りました。
祖父は自分の最期が近いことを、どこかでわかっていたのかもしれません。


上京する新幹線では、祖父のことを考えると涙が出るので映画を観ました。
しかしAmazon Primeで観た映画「丘の上の本屋さん」は、少年と古本屋のおじいさんの交流を描く物語で、ありがちなストーリー展開でしたがめちゃくちゃ泣いてしまいました。
隣の座席の人から、あまりにも脆い涙腺を心配されたのではないか。

その次に見えた映画が「星の旅人たち」でした。
こちらは息子の死を悼む父が巡礼の旅に出る話で、またしても泣いてしまいました。
映画のチョイスを完全に間違っていた気がします。
「プラトーン」とか「フルメタルジャケット」にすればよかった。

祖父と会い、「長くはないのかもしれない…」という予感がありました。
だからこそ思ったのです。もっと帰省しよう、祖父に会いに来よう、と。
でも、次に祖父に会えたのは亡くなったあとでした。


聡明な祖父でした。
読書が好き、将棋が好き、何よりみんなで集まってお酒を飲むのが大好きでした。
酔うと軍歌を歌っていました、寝るときは「グッナ~イ」と陽気に挨拶していました。
そんな祖父の本棚から、これまでも何冊か本を貰っていて。

私が中学~高校のとき、シドニィ・シェルダンにはまったため、『時間の砂』をもらいました。
あとは数年前に川端康成の『古都』をもらいました、こちらもいい作品でした。
今回、葬儀が終わった後に祖父宅に寄って、本棚からウンベルト・エーコの『薔薇の名前』をもらいました。
ずっとほしいと思っていた本を貰えたのは嬉しいけど、祖父が生きているうちに譲り受けたかった。
以前は挫折した『薔薇の名前』、今度こそ読み通したいと思います。


亡くなった報せを受けたのが出勤中だったので、泣きながらもいったん出勤して。
むせび泣きつつ先輩に報告して「大丈夫?上には報告しておくからすぐに帰っていいよ」と言われ、そのやさしさでまた泣いてしまいました。上司にも報告して「とりあえず早く帰りな」と言われました、そのやさしさでまた泣きました。泣いてばっかりじゃねえか!

帰宅して心を落ち着かせるために、ちょっといいスーパーで買ったうなぎを妻と食べました。
悲しみでいっぱいだったけど、あのうなぎ美味しかったな…。
それから新幹線に乗り、地元へと向かったのです。
祖父の遺体と対面すると、当然ながらまた涙が溢れました。

葬儀では久しぶりに会ういとこもいて、祖父の話で盛り上がりながら泣きました。
集まれる親族がたくさんいるのが幸せなものです。
それもきっと、祖父が人好きであり、人からも好かれる人物だったからだと思います。


さようなら、かつてこのブログを印刷して読んでくれていたおじいちゃん。
今までありがとう。できたらそっちでも引き続きブログを読んでください。