砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

Snarky Puppy「We Like It Here」

2020-03-30 23:10:54 | アメリカの音楽



眠い。
街角のモクレンやコブシは白い花をぽとぽと落とし始め、桜はすでに八分から九分咲きの状態になってきて、景色に鮮やかないろどりを与えています。


春になってきました。
とはいえ寒い日と暖かい日の差が大きく、「三寒四温」といった言葉が表すようではありません。暖かい日が来たと思ったら翌日には寒くなっている。昨日なんか雪が降りやがって。この変動の急勾配に、なかなか身体がついていかない。

人間の身体は恒常性を求めます。このシステムのことを「ホメオスタシス」と言うそうです。もとはギリシャ語ですね。我々の自律神経やホルモンは、知らず知らずのうちに体温や脈拍、血糖値を一定に保とうとしてくれます。
しかし周りの環境は待ってくれない。時間は流れることをやめず、季節は着実に通り過ぎていく。一日のなかでも晴れたり曇ったり、雨が降ったりする。自然環境だけではなく、社会的環境の変化もあります。学校や職場は年度末で忙しいし、異動や人の出入りもあり。コロナウイルスも流行るし、オリンピックも中止になれば和牛商品券が配られる。そういった変化は人間に―個人差はあれども―大きなストレスを与えます。

個人内の変化もあります。自分の成長を喜ぶ場合もあれば、年を重ねて老いを感じる瞬間もある。自分の話で恐縮ですが、昔より食べられる量が減りました。でも太りやすくなりました、どうしてなんだろう。コレガワカラナイ。

そんなわけで。
時間は待ってくれない。数日前にワニが死ぬ話が話題になっていましたけれど、我々もいつかは死ぬわけですよね。焦ってどうにかなるわけではないけど、今この文章を書いている自分も読んでいるあなたも、やがて死ぬのだと思うと不思議です。なかなか実感が湧かない。だからこそ、ふだん平穏な気持ちで生きていられるのかもしれません。

前置きが長くなりました。
最近いいなと思った音楽の紹介。
Snarky Puppy「We Like It Here」

何かのラジオで紹介されていて好きになりました。アメリカのはニューヨーク、ブルックリンを拠点とするジャズ・フュージョンバンド。サックスやトランペット、キーボードにシンセにピアノ、ギター3本にベース、ドラムとパーカッション。こうして並べるとかなりの人数が参加しているバンドです。でも不思議なのが、ごちゃごちゃした印象を受けないこと。すごく絶妙なアンサンブルが成り立っている。
ベースの人がリーダーで、作曲編曲の主要な面を担っているようです。彼らは多種多様な音楽に挑戦していて、よりジャズっぽい作品もあれば、モロッコ音楽に傾倒した作品もあったり。それに合わせてか、メンバーも比較的流動性が高い、とラジオでは紹介されていました。

最近新譜を出したのですが、初めて聴くならこの作品がお勧めだと思います。ライブ版なんだけど盛り上がりがはっきりしていて非常に聴きやすい。

好きな曲
What about me?
Snarky Puppy - What About Me? (We Like It Here)


のっけからのドラムに痺れます、めちゃくちゃ上手い。しかしそれがあまりくどくないのが不思議。ギターのフレーズとドラムのフィルがきれいに噛み合っているからでしょうか。ギターソロも格好いい。そしてそこに鍵盤やパーカッションが重なっていくタイミングにカタルシスを感じる。

Lingus
Snarky Puppy - Lingus (We Like It Here)


途中のシンセとドラムがすごいです。拍を崩したフレーズを弾きながらも、要所で噛み合うのは聴いていてとても心地いい。演奏している人たちもすごく気持ちいいだろうな。
関係ないけどベースの人ぜったいねっとりしたセックスしそう、終わった後にねっとりと感想を聞いてきそう。そんな話はどうでもいいか。

彼らの音楽を聴いていると、「きれいに整理されたキング・クリムゾン」って印象を受けます。キング・クリムゾンもある意味では整理されているけど(ディシプリンのあたりとか)、あれとは違うアプローチをしているというか。いろんな音楽を模索し続けている点も似ていますね。求道者のようでもあります。


さてようやく今年度も終わりに近づいてきました。世間はしばらく落ち着かなさそうですね。私も書類仕事や確定申告に魂を圧殺されつつあります。そんなときに音楽を聴いたり本を読んだり、映画を観たり。少しでも落ち着ける時間があることが大事なのだろうなと思います。
大きな不安が渦巻きはじめると、やがてそれは自立的に運動しだして、ものごとがよりややこしくなりがちです。大切なのはまず自分が不安になっていることを自覚することなのでしょう。ブログを読んでくださった皆様が、少しでも早く平穏な生活を取り戻せるよう祈っております、加持祈祷!!

Tool『Fear Inoculum』

2019-09-11 00:21:51 | アメリカの音楽


今作、過去最高です。


Tool、13年ぶりの新譜です。冷静に考えて「13年ぶり」ってなんだよな???浦島太郎かよ。
でもリリースありがとう、本当にありがとう。生きていてよかったと思います、待っている間に私はすっかりおじさんになってしまいましたが。浦島太郎かよ。

なんだか夏休みの宿題を3学期の終わりに出された感覚に近いような。出してほしかったけど、そりゃ出した方がいいけど、「えっ今?」みたいな。嬉しいんだけどね、そりゃあもうブログを書いちゃうくらいに。
このアルバムが出てから、全国津々浦々のToolファンが少しずつこのブログに訪れてくれているようです。Toolの記事にばかりアクセスが集中している。それも嬉しい。来日したらみんな行こうね。
以前のレビューはこちら。

『Lateralus』
『10,000 days』


本作について。
決して派手な変化に満ちた作品ではないです。ずっと激しい曲は最後あたりの「7empest」くらいでしょうか。でも細かいキメとか拍子の変化とか、ベースとドラムの絡みとか。以前は最初から変拍子の曲が多かったですが、今作では1曲のなかでも拍子や曲調の変化が多い。ささやかな工夫で緩急や変化を加え、飽きさせないように凝らしている、じっくり耳を傾けていると音の渦に飲み込まれていく。それから歌メロもギターのソロも、全体的に心地よいフレーズが多い。複雑だけど聴きやすい、そんな作品だと思っています。さすが13年かけただけあるよな…!!(根に持ってます)
曲単位では『Ænima』も『Lateralus』も好きだけど、アルバムを通して聴くなら前作『10,000 days』か本作に軍配が上がるかな、といった印象。

以前の作品から更なる「深さ」を見せつつも、とても聴きやすい作品です。『Lateralus』の頃のように、急にウワッとテンションが上がることもなく、『Ænima』のように謎の留守電が入っていることもなく(笑)。1曲のなかでも、それからアルバムを通してもゆっくり上昇してゆっくり下降していく。これが本当に心地よい。あとメイナードおじさんの歌も上手、聴かせる感じで歌うM4「Invincible」やM6「Desending」、M7「Culling Voices」でゾクゾクします。カリフォルニアでワイン作ってるだけじゃなかったんだね。

強いて本作の難点を挙げるならばその「長さ」。なんと1時間27分あります。さすが13年(ry
なのでちょっとした通勤、通学では聴き終らずに消化不良になること必至。そのままモヤモヤして仕事や学業に支障をきたすこと請け合いです。でも不思議なことに毎日聴いちゃうんだよな、マゾなのかもしれない。


好きな曲
M1 Fear Inoculum
TOOL - Fear Inoculum


いきなりタイトルトラック。過去作の1曲目たちに比べたら地味ですが、どういうわけか癖になる曲です。謎の金属音とタブラ、そこにベースが乗ってくる瞬間が良い。冒頭は普通に4/4なのですが、途中から5/8と6/8が交互に押し寄せてきます。でも自然に聞こえるし格好いい。これぞTool、最高。

M2 Pneuma
TOOL - Pneuma


「Pneuma」という単語はギリシャ語で気流、風とか呼吸、転じて「存在の原理」や「生命」を意味する言葉のようです。そんな言葉を曲のタイトルにする時点で格好良すぎます。

“We born of one breath
One word
We are all one spark
Eyes full of wonder”


こんな具合に呼吸とか言葉の表出とか、そういった言葉が歌詞に出てきます。かなり抽象的な歌詞、でもかっこいい。最初のギターは4/4なのですが、その後のベースの拍子が複雑で数えようと思って何度も挫折しています。歌メロと絡み合うリズム隊。それでいて、不思議にも聴きやすい曲。間奏部では珍しくバスドラが4つ打ちしていますね、そこから盛り上がっていく部分が好き。

M9 7empest
TOOL - 7empest


はい文句なしにかっこいい曲。異論は認めん。
タイトルの「7」というのはどういう意味なんでしょうね。7つの大罪を表しているのか、七曜なのか、聖書に出てくる7つの門や災いなのか。あるいは7番目の太陽系惑である天王星を表しているのか。よくわかりません。よくわからんけど曲が良いってのはわかる(なんじゃそりゃ)。


正直言ってわからない部分が多いです。それも彼らの魅力ですが笑。人間の本性ってなんだ、お前の本質とはなんだ、というような内容の歌詞が多い気がする。上で取りあげたM2とかM9とか、なんとなくですが。まだ歌詞全部に目を通しておりません。
でもひとつはっきりしているのは、とんでもない名盤だということ。是非来日してくれ。東京大阪とかでやるなら両方行きたい、なんなら台湾あたりにも足を延ばしたい。それくらい、このバンドのことを心待ちにしていたので。


新譜が出てから聴くまで、ちょっとした躊躇いもあったのです。期待して、がっかりするような作品だったらどうしよう。今はそんなことを考えた自分が恥ずかしい。このバンドには妥協とか安易な焼き増しとか、そういったものと無縁なのでした。出来ることならば、私もそういった姿勢を見習って生きていきたい、そんな風にも思うのです。

Animals as Leaders「The Joy of Motion」

2019-04-25 10:12:41 | アメリカの音楽


春はいんすとめたる。
ようよう忙しくなりゆく仕事いと辛かりて、むらさきだちたる顔面のへっどばんきんぐで揺れたる。首ねぢきつて捨ててんげり。



新年度が始まってなにかと忙しく、個人的にも大きな変化があり、日々いっぱいいっぱいです。となると必然的にメタルを聞きたくなりますよね。なりません?なりますよね、よかったよかった。危うくあなたを迫害するところでした(最近ちょいちょいアウトレイジを観ている影響で思考が物騒になっています)。
そんなわけで今日紹介するのはアメリカのワシントン出身バンド、Animals as Leadersについて。2009年にセルフタイトルである『Animals as Leaders』でデビュー、ナイジェリア系移民のアメリカ人トシン・アバシ率いるインストメタルバンドです。ベースやキーボードが抜けて、現在はギター2人とドラムの3人で活動中、ここからしてもう変なバンドですよね。最高。


系統としては聴きやすいDream Theaterみたいな感じでしょうか(といっても私はあまりDream Theaterを通っていないのですが…)。Pain of SalvationとかMeshuggahとか好きな人はきっと気に入ると思います。ギターがとにかく変態的で技巧的、リズムも複雑、そこに力強いドラムがいい具合にのっていて、一聴しただけでは何をやっているかよくわかりません。そんでもって「これは一体何が起きているんだろう?」と繰り返し聴いているうちにすっかりドはまりしてしまう、そんな恐ろしいバンドなのです。最高。


本作は3枚目になります、2014年リリース。『The Joy of Motion』というタイトルだけあってか、躍動感がありメリハリがはっきりしていて好きです。ギターのフレーズもメロディアスで聴きやすいし。静と動、緩急、ずしっと重たい刻みと美しいソロ、そういったものが絶妙に組み合わされていて、曲の構成が複雑なこともあり飽きない。初めて聴くなら1枚目かこの作品が良いかと。それにしてもどうやって曲作っとんのやろ、この人たち。


好きな曲紹介。
M1 Kascade


1曲目からすごい。最初のあたりのリズムどないなっとんねん。ドラムのハイハットを聴くと普通(?)に4/4なのですが、ギターの拍が変です。6/8、6/8、6/8、2/4で帳尻を合わせているのか?数えようと思っているのですが、不幸にも算数ができないので挫折し続けています。1:30頃のギターが好き。


M4 Another Year


こちらはしっとりめ。イントロのギターフレーズがジャズっぽくておしゃれ。でもしっかり盛り上がるときは盛り上がります。


なんというか、モダンなヘヴィネスですよね。ただでかい音で派手なサウンドを鳴らしているのではなく。打ち込みも多様しているし、拍子が複雑な曲が多く、King Crimsonの後期に雰囲気(『Power to Believe』とか)が好きな人にもオススメです、音としては遠いんだけど、曲の構成や展開を考えると最近のRadioheadにも通じるものがあるかも。
基本的にヴォーカルがいるバンドの方が好きなんだけど、このバンドはそれが全然気にならないというか。むしろいないほうがギターの良さが際立つ感じで。やかましいだけでないのも良くて、時々はっとするような美しいフレーズが使われていたり。メタルじゃない音楽やってもいい曲作れそう。初めて彼らを聞く人にはこのアルバムがとてもおすすめ、あれこれ聞くと複雑なんだけど、フレーズ自体は聞きやすいものが多いので。


忙しいんで記事は短め。大変なことが1つドーンとあるのではなく、細々した煩雑な作業に追われています。あっちを片付けている間にこっちの期限が迫っていて、それをやっているとまた別のことに追われて。あれ、なんでこんなに追われてるんだろう…もしかして犯罪でもした?って思います。
しかもGWはちょいちょい仕事が入っているし、働かないと給料が減る悲しい身分の人間なので、世界滅亡しろ!!という気持ちです。今悪の組織に誘われたらホイホイ入っちゃいそうだな。あっでも、そしたら今度は正義の味方からも追われるようになるんだろうな、それはやだな...

Toby Fox『Undertale Soundtrack』

2018-09-29 19:44:23 | アメリカの音楽


*こんなブログでも だれかが よんでくれているかもしれない
*そうおもうと ケツイが みなぎった


くやしい。
完全にやられたって感じだ。
完全に、このゲームの魅力にやられたのです。


UNDERTALE(アンダーテイル)、2015年にPC版をリリース。ジャンルはRPGになるでしょうか。その雰囲気、戦闘システムや溢れるユーモア、細部まで作り込まれた完成度の高さから、インディーゲームながら非常に強い関心を集めました。そのため日本のPC版は有志の人たちが英語版を翻訳しています。その後PS4やvitaで、そして先日9月15日(ちょうどPC版がリリースされて3年)、Nintendo Switchでも販売開始されました。
このゲームのすごいところは、なんと言ってもシナリオやグラフック、プログラミングなどの制作がほとんど一人で行われたこと。作ったのはアメリカ在住のToby Fox氏。もちろん、音楽もほぼすべてこの人が手掛けています。

「一人で作ったのはすごいけど、面白くなかったら意味ないじゃん」と思う方、わかるよ。おじさんも最初はそう思ってた。でもこれがめちゃくちゃ面白いの。戦闘システムも細かいイベントもそうだけど、とにかくシナリオの展開がすごい。まあ多くを語るのは野暮なので、気になる方は是非やってください。できることなら何も調べない状態で。ぜったいだぞ!ぜったい調べるなよ!!(フリ)


もちろん音楽も良い。というわけで、前置きが長くなったけど今日はサントラの紹介。
Toby氏はもともとWeb ComicのBGMを作っていて、音楽を作るのが本業のよう。納得のクオリティやで!!

どのくらい良いかと言うと、数年振りにゲームのサントラを買いました、そのくらい良い。
小中学生の頃は時々買ってました。スクエア全盛期の頃、FF7だったり、FFT、サガフロンティア、武蔵伝とか。
最後に買ったゲームのサントラはサガフロ2、浜渦さん良かったなぁ。

本作の一つの特徴として、各キャラクターごとにテーマソング、固有のメロディがあって。それが色々アレンジされています。例えばスケルトンの「パピルス」というキャラと初めて出会った時、こんな曲が流れます。

Undertale OST: 016 - Nyeh Heh Heh!


しばらくのちに、彼と戦闘になった時はこんな曲に。裏でハイハットを入れるドラムのリズムが心地よい。それに途中(30秒過ぎあたり)からストリングスが加わり一気に華やかになって、何とも言えない雰囲気になります、キャラクターのユニークさを表現しているのでしょう。この曲はトレーラーでも使われていました。

Undertale OST: 024 - Bonetrousle


こういったメロディのアレンジが良いです。そういったことで微妙に伏線を張っていたりするし。
タイトルのつけ方もウィットに富んでいる。1つ例を挙げると、ニュースのパロディシーンで「Live Report」というタイトルの曲が流れます。もちろんこれは「生中継」って意味なんだけど、そのあと急に絶体絶命のシーンになって「Death Report」になる。ここの「Live」と「Death」がかかっているのが面白い。


他に好きな曲として

Undertale OST: 065 - CORE


からの

Undertale OST: 068 - Death by Glamour


このアレンジとか。四つ打ちでノリの良い曲、ドラムの入りの部分が格好いい。こちらもファンの間で人気の高いです。なお「Death by Glamour」というのば「ボクの魅力で死ね」という意味のよう。プレイしてみたらわかるけれど、それも納得のタイトル。途中のCメロのさわやか部分が、急に昔のゲーム音楽って感じがしていいです、ひたすらオクターブを繰り返すスラップっぽいベースとか。細かいけどベースの音色もかなりこだわっていて、一つの曲の中でイコライジングがずいぶん違います、微妙にドライブのかけ具合が異なっている。

パロディっぽい曲も多いです。オペラのシーンは絶対FF6を意識しているし(ティンパニやハープとか)、エンディングはクロノトリガーっぽい音が使われていて、この作品をやっていると色んなゲームを思い出します。作者のToby氏はインタビューで「誰も殺さなくていい」というシステム面で「MOTHER」シリーズ、「真・女神転生」、「東方」シリーズから影響を受けた部分が大きいと話していたけれど、音楽面でも色々なところから影響を受けているのでしょう。


こんなところにもクロノトリガーのなごりが。


残りもささっと好きな曲を。

Undertale OST: 036 - Dummy!


何とも言えない面妖な雰囲気。左の方でテロテロなっている音が好き。思わず体を動かしたくなります。

Undertale OST: 063 - It's Raining Somewhere Else


こちらは少ししっとり系。どことなくFF8のデリングシティをを彷彿とさせるのは、鉄琴(ヴィブラフォン?)の音が聞こえるからでしょうか。でリングシティはもう少しギトギトしたとんこつラーメンのようですが、こちらは優しいボルシチって感じです。


「サントラなんて買わなくても、プレイ中に聞けるじゃん!」という意見もあるかもしれません。しかし戦闘がかなりスリリングなので(特に中盤以降)、正直あまり音楽を聴いている余裕がないです(笑)よけるのに必死なんだよこちとら!え?下手?うるせー!俺のLoveのカプセルを食らえ!!
そんなわけで気になった方は是非ゲームを手に取って見てください、PC版でやると安いよ、9ドルくらいだよ!



余談その1
ネタバレに気を遣い過ぎて書いてて疲れました。上で話したサガフロ2の浜渦さんも大好きです。サガフロ2もメインのメロディをこれでもか、というくらいにアレンジして使ってますよね。あれも当時は度肝を抜かれたな、そして全然使いまわし感がないのがすごかった。Toby氏もそうだけど、細かいところまで作り込んでいるからでしょう。



余談その2


本作で一番好きなシーン。それまで基本的に無口だった主人公が「じぶんの きもちに しょうじきに なれ」と囁くの、控えめに言って超面白い。いろんな意味で期待を裏切られるシーンの多いゲームでした。そういう意味ではアーマードコアのようでもある。久しぶりにゲームやって泣いたよ。

Tool「10,000days」

2018-04-20 22:31:19 | アメリカの音楽


ここ数日気圧の変化が激しいですね。気圧が低くなるとなんだか気が滅入ってしまいます、曇りが続くのもあるんでしょうし、雨が降りそうなのも嫌です。いや、雨が降ること自体はいいんだけど雨のなか仕事に行くのが本当に嫌です。
人生辛いことばかりですね、ブッダは正しい。



人生が辛いので今日はToolの4thアルバム、『10,000days』を取り上げます。
彼らは今年の3月頃からレコーディングをスタートしたとのこと、吉報。まさに僥倖。人生いいこともあるものだ。もともとアルバム1つ出すのに5~6年くらいかける彼らですが、前作を出したのが2006年5月になるので、実に12年ぶりのアルバムとなるわけです、とても長かった…。まあでもその間もライブはしていたし、ヴォーカルのメイナードはサイドプロジェクトのA Perfect Circleで活動、ドラムのダニー・ケアリーはマストドンのギターともバンドを組んでいて、色々と動きはあったのですが、さすがにそろそろ新譜出してもいいんじゃない?と思いはじめて数年が経ちました、いやはや長かった。

なぜこれだけのスパンが空いたのか?確か前作はレコード会社との訴訟問題があり、それでかなりメンバーも疲弊したようです。しかし今回の空白の期間がなぜだったのか、その辺の事情はきちんとチェックしていないのでよくわかりません。なんかもうバガボンドの連載再開を望む気持ちにも似てきていました。続きが気になるけど、もういいよ、無理すんな…そう言いたい気持ちというか。冨樫は仕事しろ。


本作について。
以前こちらで取り上げた『Lateralus』に比べてみて、どうでしょう。全体的に地味な気がします。アグレッシブな曲が少ない気がする、というよりもインタールード的楽曲の持つ比率が大きい気がする。でも、秘められている毒みたいな部分は非常に濃密です。特に「The Pot」とか、曲はかっこいいのに歌詞が振りきれている「Rosetta Stoned」とか。そうかと思えば「Jambi」や「Right in Two」のようなシリアスな曲もあるのが彼らの魅力です、ヤンキーが雨に打たれる猫を助けているようでもあります。

捉えがたい、難解なアルバムだと思います。でもその一方ですごくメロディアスというか、美しいフレーズがあって(「Vicarious」のサビのギターとか、「The Pot」の4:10以降とか)、そういったところも彼らの魅力です、ヤンキーがマフィアにMP5で撃たれる猫をかばっているようでもあります。

好きな曲紹介
M1「Vicarious」



相変わらず謎のPV。Aメロの随所で聞こえてくる絡むようなギターが好き。それから最後のサビのドラム、テンションあがる。何気にソロはベースなんですよね、めいっぱいドライブかけてるのかな。

お前も偽善者なんだろ?他人のカワイソウなニュース聞いて悲しんでるフリしてるけど、内心ちょっと楽しいんだろ、興奮してんだろ?それとも落ち着くのかい?じゃなければ、なんでそんなニュースを見ているんだ?いい加減自分のクソみたいな偽善者ぶりを認めたらどうだ、ファ〇ックユー、という内容の歌詞。

今更ですけど人間って根本的に偽善者ですよね、私も最近ようやく性善説では生きていけないことに気づきました。もちろん偽善にもいい面はあるけれど、自らが偽善者であることを自覚していないまま、「自分がやっていることが誰かのためになっている」と妄信して、無意識のうちに「自分が役に立っている」「自分が必要とされている」という自己満足の甘い蜜をすすっている人もいる。そういった無意識の偽善というのは、傍から見ていて本当に醜悪なものです。とはいえ偽善的行為が人の役に立つこともあるわけで全部やめろとは一概に言えないものなんだけれど。でもそういった人の善意が時に誰かを傷つけることもあったり、善意の出どころが相手を思ってというよりも、自分の内なる欲望である場合、そういったことに無自覚なのは恐ろしいことです。自分がそうなっていない保証は全くないわけで。
精神分析の祖、フロイトは言いました。「患者の役に立ちたいと思うほど、私はサディストではない」と。そうなんだよなぁと、今なら思うよ。人の役に立つためにひょこひょこ動くより、まず自分の足で地面にしっかり立てって話だよね。お前はお前の人生を生きているのか、と。おっとだいぶ話が逸れてしまった。

M5「The Pot」



地味に難しいベースのイントロが素敵。さっきも書いたけど4:10のあたりが本当に好きなんだぜ。でも歌詞は出だしから

Who are you to wave your finger? You must have been out your head.
お前は誰を指差してるんだ?頭イカれてんだろ


とかなり攻撃的です。

Liar, lawyer, mirror, show me. What’s the difference?
嘘つき、弁護士、鏡よ教えて。何が違うの?


こんな風に皮肉に満ちた韻を踏んだり、スラングを多用したり(タイトルのPotはマリファナの隠語のようです)、言葉遊びもたくさんあります。なんて素敵なバンドなんだ…(白眼)
それから4:35のあたりのベースが本当に好き、ベースは打楽器。

M9「Right in Two」



Toolで一番好きな曲。なんなら私の携帯のメールアドレスにがこの曲をもじった並びが入っています、そんなことはどうでもいいんだけど。この前の曲「Intension」からこの曲に自然に繋がっていくのが心地よいです。ベースの果たす役割が大きいですね、あと間奏からのドラムと、そこに乗っかっていくギターが本当に格好いい、痺れます。

「Right in Two」というタイトルは「真っ二つ」という意味ですね。戦争というか、人と人との争いがテーマになっている曲です。人と人は争う、何年も何十年も、いや何万年も前から続いている営みです。私たちの日常のようにも、些細なことから大きなことまで、様々な争いに満ちている。

イギリスの精神分析家、ウィルフレッド・ビオンは言いました。人は集団になった時、共同関係を結ぶか、争うか、逃げるか、そういった関係が生じてくると。今の世の中はどうなんでしょう。仮想敵を作って無理に団結しているようにも思うし、別に大して価値観を共有しているわけでもないのに博愛主義というか、妙に仲良しごっこをしている気もする。人間ってそんな簡単に分かり合えねぇだろっていう。個人の持つ重さって、そんなもんじゃないだろっていう。

とはいえ私たちは分かり合える時が来るんだろうか、そんなのはお花畑の話、机上の空論なのではないか、と絶望してしまう時もありますよね。えっ?ないんですか?それはちょっと人生見直した方がいいんじゃないですか?余計なお世話か、そうやって平和に生きている人はぜひそのままKeep Goingしてください、たぶんその方が幸せです。それはそうとして、ある意味希望が込められている歌なのではないかな、と個人的には思ったりする。なんたってそういうのを歌にするくらいなんだし。いつか誰かと分かり合えるといいよね。Toolは新譜出してほしいよね。


話があちこちに飛んでしまったけれど、ぜひとも今年の新譜を願って、そして来日を願ってブログを書きました。いつになく内容が暗くなったのは低気圧のせいです。