山道はいよいよ佳境へと入ってきたようです。
沢を挟む山壁が斜度を増し、その壁にへばりつくように山道が登って行きます。
そんな壁の所々に渡された木橋から下を覗くと、いつの間にか谷底まで50メートル程の落差が生じていました。
所々に、「滑落事故に注意して下さい」の表示を見かけますが、まぁこの状況では言われなくても、全く異論はございません。
そんな所でも、斜度が多少緩くなると、杉の植林が施されています。
こんな所で誰が、どうやって杉の下枝を掃っているのでしょう。
そう言えば、昨年ウエールズのスノードン山で斜面ぎりぎりに石を積み上げた光景も印象的でした。
私が人でない、他人ごとみたいな言い方ですが、人の生きる力の逞しさにはいつも驚かされます。
そうですね、「やればできる!」はずなんです。
誰ですか? 何時やるの? などと突っ込みを入れるのは。
「今でしょ」なんて、尻馬に乗るような返事はしませんよ、絶対に。
品の良いブログにしようと思っているんですから。
その先で、ルートの前に岩壁が立ちはだかりました。
先行する二人組が、慎重に足元を確認しながら登って行きます。
そして、岩壁を周り込むと、百尋ノ滝が爽やかな姿を現しました。
林道入り口からここまでのコースタイムは1時間半ですが、少し早めに到着しました。
この後に2時間程の登りが残されています。
足に疲労や違和感は全くありません。先を急ぐことにしました。
登山道は百尋ノ滝で川苔川から離れ、尾根へと登って行きます。
百尋ノ滝までは、常に水音が聞えていました。
滝から先は、緑の森の中に斜面が続きます。
思っていた以上に穏やかな緑の中の道を登り、息を切らせることもなく、35分ほどで足毛岩分岐に到着しました。
分岐から先は、緩やかな峰の狭間で、眠るような谷の中に道が続いていました。
モスグリーンの言葉のままに、苔が倒木を覆っていました。
この季節では、まだ木々の梢に葉が出揃っていないのでしょうか。
周囲の森は意外なほどに明るい表情を見せています。
優しい曲線を描いて、登山道は木立の間を縫ってゆきます。
周囲に天使の歌声のような蛙のコーラスが響き、見上げる梢に白い花が咲いていました。
そんな夢見心地の道をのんびりと歩いていると突然、小さな広場を持つ鞍部に出ました。
標識には、川苔山200m と記載されています。
え、たった200m! もう、これで終わりなの?
嬉しいような、物足りないような・・・
そして、目の前に緩やかな尾根道が、頂上へ向かって続いていました。
登頂は10時10分頃でした。
結果的にコースタイムより30分程早く到着しました。
沢から尾根へ、水辺から森へと続く、変化に富んだコースが、心地よい山歩きを提供してくれた為か、実際よりも時間を短く感じての登頂となりました。
今まで、馴染みの薄い奥多摩でしたが、手頃ですし、変化にも富んでいます。
すっかり気に入ってしまいました。
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