中ノ芝の周囲は湿原となっていて、ワタスゲが白い穂を草の間に浮かべていました。
水が流れる登山路には、歩きやすい木道が整備されています。
しばらく進んだ上ノ芝にも、木組みのテラスが整備されていました。
晴れていれば、眺望も利くでしょうし、ブヨも少ないはずです。
良く冷えたアイスティーをポットに、ミルフィーユなどをザックに入れてきたら、素晴らしい雲上のティータイムが過ごせそうです。
上ノ芝から先は、平坦にも見える道が続いていました。
雨が降っていたのと、祓川コースでは道標がしっかりしていたので地図を出して確認することをせずに歩いて来ました。
このまま頂上までこんな平坦な道が続くのかもしれない、などと甘い考えが頭を過ります。
しかし、大岳山の時とは違い、私はこの場所で早々に雨具を身に纏いました。
ここへ来るまでに何度も見てきた残雪が、私を慎重にさせていたのです。
天候次第では急激に気温が低下し、夏山用の服装で強風にでも吹かれれば、体温を奪われる事態が想定されます。
山では1000メートル登ると、気温が6℃下がります。
既にここは標高2000メートル付近。 平地とは12℃の差があります。
東京でも梅雨の頃に肌寒く感じる日がありますが、そのような時に、この場所では冬並みの気象条件となる可能性があります。
この山では「水も滴る良い男」などと言って雨に濡れていたら、命に関わることにもなりかねません。
そうそう、既に私は高齢者だということも考慮しなければ。
しばらく進むと小松原湿原への分岐点に出ました。
祓川コースを歩きはじめてから約二時間半が経過しましたが、天候以外は全て順調です。
登山道の中へ唐突に出てきた「股擦り岩」の岩陰で、雨に打たれてアズマシャクナゲが桃白色の花を咲かせていました。
優しい色合いですが、凍てつく冬を耐え凌ぐ生命力を秘めているのでしょう。
見下ろせば、眼下の山に囲まれて田代湖が水を湛えています。
雨雲が空を覆い、峰々の間に雲がたなびいていました。
今日は一日こんな天気なのかもしれません。
その先で残雪が道を覆っていました。
そして、その先の道標に「苗場山 2.2km」と記載されているのを目にしました。
上ノ芝で平坦な道が続くかもしれないと、楽観的に考えていましたが、以外と距離は残っているようです。
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