goo

霜白き梅林 紅梅に染まる渓

2020-06-24 04:01:34 | 西日本に梅を訪ねて

 

 いつもの旅のように、せわしく人が行き交い、灯がともる街を抜けて、環八から東名高速に入り、西を目指しました。


 幾度も走り抜けた、見慣れた景色の中、時速100キロほどで淡々と車を走らせました。


 ゆっくりと走る長距離トラックを追い抜くと、背後にセダンが迫り来ます。

 

 追い越し車線に出て、走行車線に戻る作業を繰り返しながら神奈川を抜け、静岡、愛知と順調に車を進めました。


 今夜も午前0時を過ぎた頃に、東名阪の適当なパーキングエリアでの車中泊を考えていましたが、順調に走り進み、名張市の中央公園の駐車場にスペースを見つけることができました。

 

 広い駐車場に停めた車の、後部座席を倒したスペースの寝袋に潜り込むと、途中のコンビニで買い求めた缶酎ハイを飲み干し、朝まで記憶がない程の深い眠りに付いたのです。


 2月24日の朝、周囲に車の音と人声に目を覚ましました。

 

 白く曇った窓ガラスを掌で擦り、外の様子を伺うと、野球の試合でもあるのか、手にバットやグローブを携えたユニホーム姿の人達が駐車場の出口に向かって歩いて行きます。


 東の空に輝く朝霧が、今日の晴天を約束してくれていました。


 車中で、コッペパンとコーヒー牛乳の朝食を済ませ、フロントガラスの曇りが消えるのを待って、最初の目的地である、赤目長坂梅林を目指しました。


 此処から目的地までは10㎞程の距離であることがナビに示されていました。

 

 名張市街を西へ抜け、田園風景の中を南下し、谷の中へ進んで行くと、川を挟んだ道路の対岸に、白い霜に包まれた梅林が見えてきました。

 


 路肩に車を停め、カメラのシャッターを押しましたが、赤目長坂梅林の名を示すものが見当たらないので、確認の為、更に谷の奥へと車を進めました。

 
 数分も走ると車道は行き止まりとなって、スギ林の中に遊歩道が伸びています。

 

 

 再度、元来た道を戻り、先ほどの場所が赤目長坂梅林に違いないことを確認しました。


 それにしても、花を訪ねる旅は、開花時期が夫々の地域ごとの標高や地形の影響を受けますので、タイミングを一律に予測できない難しさがあります。


 この梅林で梅の花が咲き揃うのは、まだ当分先のことのようです。


 もっとも梅の場合、このような季節に、1輪2輪と咲く花を探し歩けば、趣深い時を過ごせますので、私はこの景色を「残念だった」とは嘆きませんでした。


 明日への希望を予感させる、まだ咲きそめし青い可能性に満ちた若人に出会えたような気分に浸ることができたのです。
 

 

 

 赤目の谷を出て、笠間峠を越え、更に北へ進み、月ヶ瀬梅渓へと車を走らせました。


 月ヶ瀬梅渓を流れる名張川は、奈良県と三重県の県境に位置する高見山地の三峰山に源を発し、奈良県御杖村からすぐに三重県名張市に入り、その後奈良県と三重県の県境に沿って北上し、奈良県北東部で奈良市月ヶ瀬(旧月ケ瀬村)に流れ入ります。


 東名阪国道を横切って、名張川に沿う道を進むと次第に川幅が広がり、車窓に紅色の梅の花が点々と映り始めました。


 月ケ瀬橋のたもとまで来ると、対岸に紅梅が咲く様子が見えたので、橋を渡り、名張川右岸の山の斜面に設けられた散策路へ歩を進めました。

 


 地図上に「月ケ瀬梅林」の記載がある辺りを歩きましたが、月ケ瀬梅渓は梅が植栽された特定の梅林を指すのではなく、数多くの梅が花を咲かせるこの地域全体の総称のようです。

 

 
 道路脇の名張川へ落ち込む斜面で枝を捩らせる老梅が、青い水面を背にして、その枝々に咲かせた霞のような白梅を、渓谷に差し込む陽の光に浮かび上がらせていました。

 

 
 月ケ瀬橋のたもとに掲げられていた観光案内図に記された梅渓展望台に上ってみました。

 

 
 丘の上の展望台の梅は、まだ咲き揃ってはいませんでした。


 しかし展望台から見下ろすと、月ケ瀬渓谷がほんのりと紅梅に染まる長閑な景色は、花咲き揃う春がすぐそこまで来ていることを想わせ、ほのぼのとした心安らかな時を楽しむことができました。

 

西日本に梅を訪ねて index

 

全ての「花の旅」はこちら → 「花の旅」 総合目次

全国の梅のガイド → 梅の名所

筆者のホームページ 「PAPYRUS

 

 

goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )