goo

五輪教会への道

2020-03-15 13:19:27 | 五島列島の世界遺産と椿

 久賀島のレンタカー会社で借りた車がこれです。


 近所のコンビニで配達などに使われている電動自動車と同じものです。

 

 一回のレンタル料は3300円でした。

 

 
 電動自動車の操作説明を受けるとすぐ、私は久賀湾沿いを北上する道を、五輪教会目指して走り始めていました。

 

 
 やがて、北の方角に湾口を開く馬蹄形の島の、東の丘陵地を越えると、眼下に蕨の集落が見えてきました。


 斜面だらけの島の僅かな平地に、寄り添うように民家が庇を並べていました。

 

 
 道は蕨集落の横で、海岸線に沿って南下し、鬱蒼とした森が周囲を包み、道幅は一層細くなってゆきます。

 

 
 それにしても予想通り、この道で事故でも起こしたら、すぐに助けに来てはくれないと考えたほうが良さそうです。


 しかし、実は私は、こんな道が大好きなのです。


 こんな道を走っていると、体中の全ての細胞にアドレナリンが染み渡るような充実感に満たされます。


 但し、誤解なきようお断りしますが、暴走族ではないので、スピードは控えめです。

 


 めったに来れる所ではないので、途中で何度も車を停めて、小雨に濡れる景色をカメラに納めました。

 


 6~7㎞程も進んだ後「旧五輪教会来訪者駐車場」に車を停め、傘を片手に歩き出しました。

 


 舗装された道を、更に数百メートル歩いた所に、車両進入禁止の看板が掲げられて、

 

 

 そこから先は土の道が、海岸に向かって下ってゆきます。

 

 

 道の周囲にキブシが、水に晒した木綿糸の色合いに花を飾っていました。

 足元に名も知らぬ種類のアザミが、赤紫の花を茎先に掲げていました。


 五島の島は既に、早春の息吹の中にあるようです。

 

 


 海岸に下りて、波打ち際の堤防を進むと、

 

 
 小さな入り江の岸に、五輪教会の姿が見えてきました。

 

 2020年、五島の地域活性化を目指すプロジェクト「椿サポーター」に吉永小百合さんが就任したとき、旧五輪教会がお気に入りの場所と仰られたそうです。

 
 振り返ると、さっき土の道を下りてきた、海に突き出た尾根の鼻が見えていました。

 

 
 それにしても不思議な光景です。

 

 先ほど目にした蕨集落から、森に包まれた道をかなり走って来た先の、小さな入り江の岸に、小さな教会が忽然と現れたのですから。

 


  教会に近づくと、入り江に注ぐ小川の上流に、小高い尾根が見えて、小川の両岸は鬱蒼とした木立に包まれ、「九州自然歩道」の小道が心細げに藪の中に分け入ります。
   

 

 

 この場所には教会以外、人の気配を感じさせるものが見当たりません。


 もっとも、レンタカー会社の社長の説明に因れば、最盛期の久賀島の人口は昭和30年に3800人で、現在は300人だそうですから、現状からの印象で、潜伏キリシタンの生活を推察するのは間違いかもしれません。

 

 しかし、禁教が解かれる以前の江戸時代、潜伏キリシタンがこの島に集落を作った頃は、更にもっともっと、人里から離れた、寂れた光景だったと思うのです。

 

 福江港から直接水上タクシーで、五輪教会を訪ねる方法もありますが、手間暇かけて訪ねた、今回の五輪教会への道は、潜伏キリシタンを理解するための最善のルートだったかもしれません。

 

五島列島の世界遺産と椿 index

 

全ての「花の旅」はこちら → 「花の旅」 総合目次

全国のツバキガイド → 椿の名所

筆者のホームページ 「PAPYRUS

 

 

goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )

五島列島へ

2020-03-14 17:23:10 | 五島列島の世界遺産と椿

 2020年2月29日午前8時5分、ゆっくりとフェリーは長崎港の岸壁を離れました。

 


 
 やがて美しい斜張橋の下を通過しフェリーは外海へと進んで行きます。

 

 
 フェリーが目指す先は、五島列島最南端の福江島です。

 


 実は今日から、福江島でツバキ愛好家によるツバキサミットが開かれる予定でした。


 しかし、予期せぬコロナウイルスの拡大で、1週間程前に突然の中止が決まっていました。


 ですから今日、私が目指す福江島に、私を待つ人は誰もいません。


 灰色の雲に覆われた、霧雨が降る東シナ海を、フェリーは淡々と航路を刻みます。
 


 やがて視界の先に、福江島と平らかな五島市街が見えてきました。

 

 
 フェリーはそのまま、小さな赤い灯台が迎える島の港に進み、

 

 
 フェリーは何事もなく、定刻の11時15分に福江港に到着しました。

 
 そして私は、この後すぐに、隣の久賀島(ひさかしま)へ渡る予定です。


 福江港の案内所で確認すると、1号桟橋に泊まる黄色い「シーガル」という小船が久賀島へ渡ると知らされました。

 

 
 渡船が出る12時5分までの間に、港付近の食堂でラーメンを食べ、久賀島を目指すシーガルに乗り込みました。


 乗客は私以外、島の住人と思しき3人だけです。

 


 船内の目立つ場所に赤字で「久賀島は交通機関が限られます。事前確認をお願いします」に続き、久賀タクシーの電話番号が記されたポスターが掲げられていました。

 

 
 私は事前に久賀島のレンタカーを予約してるあるので、島の港にレンタカー会社の迎えが待っている筈です。


 暫くするとシーガルは、小雨に濡れる港の桟橋を離れました。

 


 
 船内に掲げられたテレビに、北海道で新型コロナウイルス患者が増えているニュースが報じられていました。


 日本全国に、新型コロナウイルスの影響が及び始めたようです。

 

 
 しかしそんなニュースを横目に、船足は至って順調です。

 

 
 ところで私は近年、北海道へ渡る太平洋フェリーなど大きな船は乗っていますが、船縁で波しぶきを浴びるよう小船に乗るのは数十年ぶりかもしれません。

 
 船上から島影を写す時、手元に波しぶきがあがることに新鮮な感動を覚えたりします。

 


 視界の先に、福江島に掛かる赤い橋が見えてきました。


 順調に旅が進めば、明日はあの橋を渡る予定なのです。

 


 小船の上から、田ノ浦の瀬戸の水の上に、久賀島の印象的な白い浜脇協会が見えていました。


 それにしても、教会の周囲に人家が殆ど見えません。


 蒼緑の森を背に、白い協会がポツンと立つのみです。

 

 
 シーガルは当り前の素振りで久賀島田ノ浦港に接岸し、私は滞りなく迎えの車に乗り込み、レンタカー会社事務所のある、久賀町の中心部へと向かいました。

 

五島列島の世界遺産と椿 index

 

全ての「花の旅」はこちら → 「花の旅」 総合目次

全国のツバキガイド → 椿の名所

筆者のホームページ 「PAPYRUS

 

goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )
   次ページ »