樋口一葉原作の
季節にそった三作のオムニバス。
明治という時代に生きる女を描く。
DNAに組み込まれた明治の血沸き立つ!
俳優豪華絢爛の傑作。
第一話「十三夜」:秋
中秋の名月の晩、老夫婦の家に
大店に嫁いだ娘(丹阿弥谷津子)が里帰りしてくる。
喜んで迎えた娘の口からは意外な言葉が・・
父親と娘の言葉の中から時代の道徳観や
家制度の重みが如実に現れてくる。
この話にはもうひとつのストーリーが含まれている・・
水木洋子と井手俊郎の脚色による台詞が美しすぎる。
この頃は身分、
職業によっても使われる言葉が違っていたようだ。
お月様が照らす中で繰り広げられる一夜のエピソード。
女性のこの後の人生を想像してしまう幕切れだ。
第二話「おおつごもり」:冬
大晦日、富裕な家の台所では
薄い木綿の着物に素足で、
心優しい下働きの娘(久我美子)が水汲みをしていた。
貧しい親戚(中村伸郎・荒木道子)からの
金の工面を引き受けてしまうのだが・・・・・
金持ちは金持ち。
貧乏人はいつまでたっても貧乏人・・なんでしょうか。
貧富の差がむごいほどに強調されている。
放蕩息子役の仲谷昇の台詞は遊び人風?
武士でも町人でもない言葉で面白い。
お嬢様役に岸田今日子。
正月前、
おおみそかの日の気ぜわしさ、掃き清められた家の清浄な
空気、色、(白黒だけど)が匂い立つようだ。
そして雪・・・
サスペンスタッチのカメラワークといい
目が離せない展開。最後の終わり方もあっさりしていていい。
第三話「にごりえ」:夏
水商売の女(淡島千景)に入れ込んで身を持ち崩す男に、
黒澤作品や、「張込み」でもお馴染み
名優宮口精二が扮している。
一汁一菜の貧乏所帯では、
恨みがましい目をした女房(杉村春子)が責めたてる。
古女房の愚痴はこのうえなくしつこくて、
これでは
宮口精二でなくとも浮気したくなるかもしれませんわ。
酌婦たちの狂態、化粧を取り去った顔をグロテスクに撮る
容赦の無い今井監督の視線にたじろぐ。
泥水をすするような境遇におかれた女の絶望、
あきらめが心を打ちます。
息がつまるような閉塞感が漂う中、
真夏の昼下がりに事件が!
淡島千景が凄絶な美しさ。
今井監督の虐げられた人々の描き方って
徹底してますね。
文学座総出演。
流麗な台詞をものにしきっているのはさすが。
明治の匂いがたちこめている傑作!!
独立プロ名画特選 文芸編
監督 今井正 原作: 樋口一葉 脚色:水木洋子 井手俊郎
撮影: 中尾駿一郎 美術:平川透徹 音楽: 團伊玖磨
出演: 久我美子 淡島千景 杉村春子 荒木道子
芥川比呂志 中村伸郎など
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