邦画ブラボー

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明治の女たち「にごりえ」

2005年08月25日 | ★人生色々な映画

樋口一葉原作の
季節にそった三作のオムニバス。

明治という時代に生きる女を描く。

DNAに組み込まれた明治の血沸き立つ!
俳優豪華絢爛の傑作。

第一話「十三夜」:秋

中秋の名月の晩、老夫婦の家に
大店に嫁いだ娘(丹阿弥谷津子)が里帰りしてくる。

喜んで迎えた娘の口からは意外な言葉が・・
父親と娘の言葉の中から時代の道徳観や
家制度の重みが如実に現れてくる。

この話にはもうひとつのストーリーが含まれている・・

水木洋子と井手俊郎の脚色による台詞が美しすぎる。
この頃は身分、
職業によっても使われる言葉が違っていたようだ。

お月様が照らす中で繰り広げられる一夜のエピソード。
女性のこの後の人生を想像してしまう幕切れだ。

第二話「おおつごもり」:冬

大晦日、富裕な家の台所では
薄い木綿の着物に素足で、
心優しい下働きの娘(久我美子)が水汲みをしていた。
貧しい親戚(中村伸郎・荒木道子)からの
金の工面を引き受けてしまうのだが・・・・・

金持ちは金持ち。
貧乏人はいつまでたっても貧乏人・・なんでしょうか。
貧富の差がむごいほどに強調されている。

放蕩息子役の仲谷昇の台詞は遊び人風?
武士でも町人でもない言葉で面白い。
お嬢様役に岸田今日子。

正月前、

おおみそかの日の気ぜわしさ、掃き清められた家の清浄な
空気、色、(白黒だけど)が匂い立つようだ。

そして雪・・・

サスペンスタッチのカメラワークといい

目が離せない展開。最後の終わり方もあっさりしていていい。


第三話「にごりえ」:夏

水商売の女(淡島千景)に入れ込んで身を持ち崩す男に、
黒澤作品や、「張込み」でもお馴染み
名優宮口精二が扮している。

一汁一菜の貧乏所帯では、
恨みがましい目をした女房(杉村春子)が責めたてる。
古女房の愚痴はこのうえなくしつこくて、
これでは
宮口精二でなくとも浮気したくなるかもしれませんわ。

酌婦たちの狂態、化粧を取り去った顔をグロテスクに撮る
容赦の無い今井監督の視線にたじろぐ。

泥水をすするような境遇におかれた女の絶望、
あきらめが心を打ちます。

息がつまるような閉塞感が漂う中、
真夏の昼下がりに事件が!

淡島千景が凄絶な美しさ。

今井監督の虐げられた人々の描き方って
徹底してますね。

文学座総出演。
流麗な台詞をものにしきっているのはさすが。

明治の匂いがたちこめている傑作!!

独立プロ名画特選 文芸編
監督 今井正 原作: 樋口一葉 脚色:水木洋子 井手俊郎 
撮影: 中尾駿一郎 美術:平川透徹 音楽: 團伊玖磨

出演: 久我美子 淡島千景 杉村春子 荒木道子 
芥川比呂志 中村伸郎など

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