台風の夜に「飢餓海峡」再見。
社会の底辺からのし上がった男が
過去を隠し通すために
同じく善人を殺めてしまう。
野村芳太郎監督『砂の器』の主人公もそうだったように。
弓坂刑事が握り締めていたのは
消し去ったはずの犬飼の過去だったのか。
いつもはコミカルな伴淳がここではシリアスな顔を
見せている。
嵐の場面はやはりスリリングで迫力満点だ。
三國連太郎の存在感は
ハリウッド男優を凌駕する勢いなことは言うまでもないが
杉戸八重役の
左幸子の存在も大きい。
イタコの真似をする鬼気迫るシーン、
風呂での父娘の会話、
堅気になるはずが結局「慣れた」商売に身を置いてしまう哀れさ・・
ぬくもりのある津軽弁もいい。
圧巻!「爪」を持ってのひとり芝居は
左幸子以外考えられない素晴らしさだ。
そして犬飼との対面は前半のクライマックスシーンだ。
ビデオは一部二部と分かれていて
セットするのももどかしく
がちゃがちゃと焦りながら後半突入!
思い焦がれた男に会えて狂喜する八重(左)と、
犬飼(三國)の錯乱の対比が素晴らしい。
後半は、事件を追う
刑事たちの詰め、
犬飼との対決に固唾を呑む。
八重の描写に比べ
極貧だったという犬飼の暮らしぶりや悔恨、苦悩などは一切描かずに、
見るものに想像させるところがうまい。
お涙頂戴ぽい甘さは微塵も無いが
何気ないシーン・・弓坂警部補の家族や
売春宿の夫婦の会話に温かみがある。
あっと驚くラストで
犬飼の目に一瞬光が宿ったのを見た。
一見無表情に見える顔からは
様々な感情が読み取れる。
そんなことも出来る三國連太郎の濃い顔!
人間の罪とは罰とは良心とはなんだろうか。
堂々3時間、ものともしない
チャーシュートッピング醤油豚骨ラーメン大盛り完食の満足感!?
内田吐夢監督作品 原作 水上勉 脚本 鈴木尚也 音楽 富田勲
出演 三國連太郎 左幸子、伴淳三郎、高倉健 沢村貞子、加藤嘉など
名俳優 三國連太郎さんのご冥福をお祈りいたします *2013年 4月15日
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