ここ2、3日の温かさに
♪春過ぎて夏来にけらし~
と洗濯物を天の香久山に干しに行こうかしらん思ってたら、
なんですのん?この急激な気温の低下!
帰ろうと外に出てきたら雨は上がってるけど、
正に冬に逆戻り。
今日ずっと邪魔だったコートにやっと出番が来た!
春一番の後は西高東低の冬型の気圧配置となって、
また寒さが戻ってくるとは言うけど、
春二番でも、きっちりその通りですな。
「あ……直弥!!ば、バイバイっ!!」
「おぅ、じゃあな。」
…
「挨拶できてよかったしょ!!」
「美結、頑張ったよ!!」
「う、うん…///」
私は高橋美結。
現在、このクールな彼、江崎直弥に片想い中です!!
クールだから、なに考えてるかわからないのがまた良くてっ。
中2から高1までずっと好きで、何度告白しようと思ったことか…
でも、内気な性格のせいで、さっきみたいに挨拶するので精一杯。
前に、誰も恋愛対象にみれないって言ってたから、確率はほぼゼロ。
この気持ちを早く伝えて、できれば付き合いたいなぁ…って思ったりする。
だけど、やっぱり叶わないただの夢でしかないんだよね。
神様…
「どうか私に勇気をください。」
「ねぇ美結!!そう言えば、あと2日でバレンタインじゃんか!!その時に、思いきって言えばいいじゃん!!」
そうか、今日は2月12日。
…あと2日で心の準備をしろと?
「ば、バレンタインにあげるの?私、絶対言えないよ…?」
「だいじょぶだって!!なんとかなるよ!!とりあえず、今日材料買わないとヤバくない?」
無責任な…
しかも、話勝手に進んでるし…
でも、確かに今まで言えなかった分、頑張って告白するのもいいかもしれない。
高校生にもなったんだし、少しは自信、ついた…よね、きっと。
せっかく直弥と同じ高校だし!!
放課後、私は材料を買いに行った。
あれ、お菓子作るとか、小学校のとき以来じゃないか…?
どうしよ、不安になってきた…
そんなことを思ってるうち、突然ふわっと甘い香りがした。
「これは…お菓子の匂い?」
美味しそう…
もう、買ったやつでいいかなぁ?
あははははっ…
「よし、買おう!!」
自分で「おい」と突っ込みながらも、その匂いのする方へ歩いて行った。
すると、可愛いらしい『Dream Drop』というお菓子屋さんらしきお店があった。
チリンチリーン
「いらっしゃいませ。『Dream Drop』へようこそ!!」
その可愛い声の主は、ゴスロリくるくるツインテールの可愛らしい店員さんだった。
私もあのくらい気合いいれないとダメかなぁ?
「あの、バレンタインのチョコとか売ってますか?私、渡したい人g…」
「もしかして、バレンタインに告白でもされるんですの?」
「!?」
「は、はい…」
そんな突然言わなくても…
てか、なんでわかったんだろ?
「うふふっ、わかりますわよ?そわそわしているのですもの。」
「わかりますか…
あのぉ………実は、叶わない恋だけど想いは伝えたい…って感じなんです。できるなら付き合いたいんですけどね。それで、頑張ろうかなと…」
「なるほどですわ。それでは、この『Dream Drop』で、夢を叶えて差し上げましょうか?」
「え?…叶うんですか?」
「正しくは、夢を見せる…ですわね。こうなってほしい、という夢を見られますわ。」
夢を見せる…か。
実際には叶わないんだよね…
うーん…
「でも、強く願えば願うほど、現実に影響をあたえますわよ?どうされますか?」
影響?
もしそれが本当なら、両想いも夢じゃないかも…
よし、買っちゃおう!!
って、お金さっき使っちゃった…
「だいじょぶですわよ?お金は要りません。あなたの夢が叶えば、それでいいのです。フフッ
その代わり4粒だけしかあげられません。それでもよろしくて?」
「いいです!!少しでもいい思いができるなら…」
「わかりましたわ。では、あなたには『ラブベリー』を。おやすみ前に、一粒なめてくださいませ。その夢、叶うといいですわね。」
「ありがとうございます!!」
チリンチリーン
「うふふ、今度は可愛らしい恋する少女ですか。この仔は、キレイに墜ちてくれるのかしら?フフッ」
その日の夜、美結は迷わずドロップを頬張っていた。
パクパクっ
「んー!!甘くて美味しい!!甘酸っぱいベリーの味だぁ。これが恋の味って…や……つ………」
「んうぅ…」
あれ?普通にベッドの上だ…
こう言うのって、普通、その場面が出てくるんじゃないの?
不思議に思いつつも、私は普段通りに登校した。
「美結おはよ!!今日遂にバレンタインだよ!!あげるんだよね!?頑張ってこーい!!」
あれ、今日だっけ?
…って、これは夢か。
夢なら成功するのわかってるし、なんか気が楽だなぁ♪
――放課後――
「あっ、あのっ…私、直弥のことが好きなの!!だから…もしよかったら、私と付き合ってほしいな…」
「えっ?美結、俺のこと好きだったの?…俺も好きだったんだけど。」
「本当…!?う、嘘でしょ…?」
「本当だよ。だから、よろしくお願いします。」
や、やったー!!夢だけど嬉しい!!
このまま、ずっと直弥といられたらなぁ…なんて、叶わないとわかっているけど、やっぱり願ってしまう。
とりあえず、このドロップがなくなるまで…
私、頑張らなきゃ!!
私は、放課後に、屋上に直弥を呼び出した。
夕日を反射して、直弥の眼鏡が光っている。
…ダメ、ちゃんと見とれてないで勇気を出さなきゃ!!
「はい、バレンタインのプレゼント!!」
「え?今日15…」
「あのね、私…直弥が好きなの。だから、ずっと、ずぅーっと、一緒にいたいなぁ…
大好きだよ、直弥!!」
「ちょ、ま、俺も…」
私は、直弥に思いっきり抱きついた。
ドンッ
「はい、ホワイトデーのお返し。ちょうど1ヶ月記念日だし、少し豪華だよ?」
「あ、私の大好きないちごタルトだぁ!!ありがとう直弥!!」
あぁ、なんて幸せなんだろう。
願いが叶うって本当に幸せ…
「美結ちゃーん!!どうだったぁ?」
「あ、美晴!!私、いちごタルトもらっちゃった!!美晴は?」
「私は、棗がお家に招待してくれるんだぁ♪楽しみー♪」
「えぇー!!うらまし過ぎる!!」
あははははは!!
「お二方、どうぞ、永久に幸せな時間をお過ごしくださいませ。」
うふふふふふ…