赤みがかった夕焼けの空を、一羽のカラスが飛んでいった。
波が静かに打ち寄せる海辺に、朽ち果てた石像がある。
その石像に座り、海を見ながら鼻歌を歌う少年が居る。
そんな少年を、少し距離を置いて、一人の中年男性が見つめていた。
少年『ん~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~♪』
少年は赤みがかった海に向かい、クラシックであろうか、心地好い音色の鼻歌を奏でている。
少年『~ふ~ふふ~♪……歌はいいねぇ。歌は心を潤してくれる。人間の生み出した文化の極みだよ。そう感じないか?犬飼ギンジく………ん?』
少年が振り返る。
そこに居たのは、
黒のスーツ、黒のサングラス、黒のシルクハット、黒のバックを持った、怪しげな中年男性だった。
その風貌からは、先程まで空を優雅に飛んでいた一羽のカラスが人間の姿に一瞬にして変身したのではないか、と思わ
中年『ギンジって誰ネ?ワタシ、ギンジではなく、陳ゆうネ。アソパソマソのテーマ、すごく耳障りだたネ。耳が腐りかけたネ。』
陳と名乗る中年男性が答える。
少年『僕はカヲル。あなたと同じ、仕組まれた子供さ。』
少年が話始めた。
陳『誰も名前なんて聞いてないネ。一人で海に居るということは、アナタ、友達居ないアルネ?寂しいガキネ。』
カヲル『カヲル、でいいよ。』
陳『うるさいガキネッ!』
カヲルと名乗る少年が話始める。
カヲル『一時的接触を極端に嫌がるね、あなたは。』
陳『嫌がってないネ。この距離が丁度いいアル。』
カヲル『常に人間は心に痛みを感じている。心が痛がりだから、生きるのも辛いと感じる。』
陳『なに哲学っぽいことヌカしてるネ?心に痛みなんか感じないネ。痛みを感じるのは脳ネ。脳の前頭葉が痛いという信号を送』
陳の言葉を遮り、カヲルが話を続ける。
カヲル『ガラスのように繊細だね、特にあなたの心は。』
陳『カラスのような洗剤って何アルカ?カラスのエキスが入った洗剤なんて、使う気になれないネッ!どういう意味ネッ!?』
カヲル『好意に値するよ。』
陳『校医?違うネ。ワタシ、商人ネッ!!』
カヲル『好き、ってことさ』
陳『男に好かれても嬉しく無いネッ!!ゲロ出るネッ!!』
夕日が沈みゆく海辺で、謎の男達の会話は続く。
カヲル『陳シリーズ…。ジローラモより生まれし、読み手にとって忌むべき存在。』
陳『何を言い出すネ、急に。シリーズって何ネッ!?』
カヲル『それを利用してまで人気を維持し続けようとするジローラモ…。僕には分からないよ。』
陳『ワタシ的には、アナタが何を言てるか分からないネッ。それより、何か買うヨロシッ!日が暮れるネッ!!』
既に、空の明るさは次第に暗さを増してきていた。
カヲル『僕も、アダムより生まれし者だからね。』
陳『話を変えるの良くないネッ!アダム・サンドラーゆう人は知り合いに居たアル。こんな馬鹿息子が居たとは初耳ネ。』
陳がバックのファスナーを開け、中をごそごそと漁りだした。
陳『これじゃないアル。……えーと、えーと』
カヲル『ATフィールド。そう、きみたち鏡音リン・ファンはそう呼んでるね。なんぴとたりとも侵されざる聖なるコミュニティー。心の光、読み手も分かっているんだろ?』
陳『えーと……、あった、あったね、コレネッ!』
陳がバックから何かを取り出した。
カヲル『商人の運命か。人の希望は悲しみに包まれているね。』
陳『つべこべ言ってないで買うヨロシッ!!』
カヲルと名乗る少年は、陳と名乗る男の顔を凝視すると、何かに気付いたのか、声を荒げた。
カヲル『違うっ、…あなたは、…リリスっ!?』
陳『リリスじゃないネッ!陳ネッ!!何っ回間違えれば気が済むネッ!』
カヲル『そうか、そういうことかジローラモ……。』
カヲルと名乗る少年が、何かを悟ったかのように海の方へと顔を向けた。
陳『顔向ける所、違うネッ!こっち向くネッ!!』
カヲルと名乗る少年が海に向かい、語りだした。
カヲル『生と死は等価値なんだ、僕にとってはね。』
陳『だったら生きてる内に買うアル。生きてる内に買わないと損するネッ!』
カヲル『自らの死、それが唯一の絶対的自由なんだ。』
陳『何をヌカしてるネ?まるでこれから死ぬみたいな物言いネ。』
カヲル『遺言だよ…。』
陳『若い内から遺言を考えることは良いことネ。さっ、そんなことよりコレ買うネ。』
陳が持っている商品をカヲルへと差し出した。
カヲル『さぁ、僕を消してくれ。そうしなければ、読み手が飽きることになる。』
陳『ワタシ、ただの人間ネ。そう簡単に人を消すこと出来ないネッ!!』
カヲル『滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ。』
陳『話が噛み合わないガキネッ!また哲学アルカ?』
カヲル『そして君は死すべき存在ではない。きみたちには書き手が必要だ。』
陳『書き手とか読み手とか、何のことネッ!?いいから、こっち向くネッ!』
カヲルが何かを悟ったような顔をして呟いた。
カヲル『ありがとう、きみに会えて嬉しかったよ。』
陳『とんだ馬鹿ガキに声掛けてしまたネッ!!こっち向くネッ!!』
その時、突風が陳を襲い、陳のシルクハットと持っていた商品が吹き飛ばされた。
陳は、シルクハットを必死に追いかけ、ようやく手にすることが出来た。
シルクハットを被り直すと、カヲルの居る所へと戻って来たが、辺りを見回してもカヲルと名乗っていた少年の姿は見当たらなかった。
…そして、それ以上に、陳はカヲルという少年に声を掛けたことを深く後悔した。
陳は涙を流しながら、重い足取りで、暗闇が増してきた道へと去って行った。
お馴染みの黒のバックは、その手には無かった。
これが、陳にとっての
【後悔記念日】
となった。
波が静かに打ち寄せる海辺に、朽ち果てた石像がある。
その石像に座り、海を見ながら鼻歌を歌う少年が居る。
そんな少年を、少し距離を置いて、一人の中年男性が見つめていた。
少年『ん~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~♪』
少年は赤みがかった海に向かい、クラシックであろうか、心地好い音色の鼻歌を奏でている。
少年『~ふ~ふふ~♪……歌はいいねぇ。歌は心を潤してくれる。人間の生み出した文化の極みだよ。そう感じないか?犬飼ギンジく………ん?』
少年が振り返る。
そこに居たのは、
黒のスーツ、黒のサングラス、黒のシルクハット、黒のバックを持った、怪しげな中年男性だった。
その風貌からは、先程まで空を優雅に飛んでいた一羽のカラスが人間の姿に一瞬にして変身したのではないか、と思わ
中年『ギンジって誰ネ?ワタシ、ギンジではなく、陳ゆうネ。アソパソマソのテーマ、すごく耳障りだたネ。耳が腐りかけたネ。』
陳と名乗る中年男性が答える。
少年『僕はカヲル。あなたと同じ、仕組まれた子供さ。』
少年が話始めた。
陳『誰も名前なんて聞いてないネ。一人で海に居るということは、アナタ、友達居ないアルネ?寂しいガキネ。』
カヲル『カヲル、でいいよ。』
陳『うるさいガキネッ!』
カヲルと名乗る少年が話始める。
カヲル『一時的接触を極端に嫌がるね、あなたは。』
陳『嫌がってないネ。この距離が丁度いいアル。』
カヲル『常に人間は心に痛みを感じている。心が痛がりだから、生きるのも辛いと感じる。』
陳『なに哲学っぽいことヌカしてるネ?心に痛みなんか感じないネ。痛みを感じるのは脳ネ。脳の前頭葉が痛いという信号を送』
陳の言葉を遮り、カヲルが話を続ける。
カヲル『ガラスのように繊細だね、特にあなたの心は。』
陳『カラスのような洗剤って何アルカ?カラスのエキスが入った洗剤なんて、使う気になれないネッ!どういう意味ネッ!?』
カヲル『好意に値するよ。』
陳『校医?違うネ。ワタシ、商人ネッ!!』
カヲル『好き、ってことさ』
陳『男に好かれても嬉しく無いネッ!!ゲロ出るネッ!!』
夕日が沈みゆく海辺で、謎の男達の会話は続く。
カヲル『陳シリーズ…。ジローラモより生まれし、読み手にとって忌むべき存在。』
陳『何を言い出すネ、急に。シリーズって何ネッ!?』
カヲル『それを利用してまで人気を維持し続けようとするジローラモ…。僕には分からないよ。』
陳『ワタシ的には、アナタが何を言てるか分からないネッ。それより、何か買うヨロシッ!日が暮れるネッ!!』
既に、空の明るさは次第に暗さを増してきていた。
カヲル『僕も、アダムより生まれし者だからね。』
陳『話を変えるの良くないネッ!アダム・サンドラーゆう人は知り合いに居たアル。こんな馬鹿息子が居たとは初耳ネ。』
陳がバックのファスナーを開け、中をごそごそと漁りだした。
陳『これじゃないアル。……えーと、えーと』
カヲル『ATフィールド。そう、きみたち鏡音リン・ファンはそう呼んでるね。なんぴとたりとも侵されざる聖なるコミュニティー。心の光、読み手も分かっているんだろ?』
陳『えーと……、あった、あったね、コレネッ!』
陳がバックから何かを取り出した。
カヲル『商人の運命か。人の希望は悲しみに包まれているね。』
陳『つべこべ言ってないで買うヨロシッ!!』
カヲルと名乗る少年は、陳と名乗る男の顔を凝視すると、何かに気付いたのか、声を荒げた。
カヲル『違うっ、…あなたは、…リリスっ!?』
陳『リリスじゃないネッ!陳ネッ!!何っ回間違えれば気が済むネッ!』
カヲル『そうか、そういうことかジローラモ……。』
カヲルと名乗る少年が、何かを悟ったかのように海の方へと顔を向けた。
陳『顔向ける所、違うネッ!こっち向くネッ!!』
カヲルと名乗る少年が海に向かい、語りだした。
カヲル『生と死は等価値なんだ、僕にとってはね。』
陳『だったら生きてる内に買うアル。生きてる内に買わないと損するネッ!』
カヲル『自らの死、それが唯一の絶対的自由なんだ。』
陳『何をヌカしてるネ?まるでこれから死ぬみたいな物言いネ。』
カヲル『遺言だよ…。』
陳『若い内から遺言を考えることは良いことネ。さっ、そんなことよりコレ買うネ。』
陳が持っている商品をカヲルへと差し出した。
カヲル『さぁ、僕を消してくれ。そうしなければ、読み手が飽きることになる。』
陳『ワタシ、ただの人間ネ。そう簡単に人を消すこと出来ないネッ!!』
カヲル『滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ。』
陳『話が噛み合わないガキネッ!また哲学アルカ?』
カヲル『そして君は死すべき存在ではない。きみたちには書き手が必要だ。』
陳『書き手とか読み手とか、何のことネッ!?いいから、こっち向くネッ!』
カヲルが何かを悟ったような顔をして呟いた。
カヲル『ありがとう、きみに会えて嬉しかったよ。』
陳『とんだ馬鹿ガキに声掛けてしまたネッ!!こっち向くネッ!!』
その時、突風が陳を襲い、陳のシルクハットと持っていた商品が吹き飛ばされた。
陳は、シルクハットを必死に追いかけ、ようやく手にすることが出来た。
シルクハットを被り直すと、カヲルの居る所へと戻って来たが、辺りを見回してもカヲルと名乗っていた少年の姿は見当たらなかった。
…そして、それ以上に、陳はカヲルという少年に声を掛けたことを深く後悔した。
陳は涙を流しながら、重い足取りで、暗闇が増してきた道へと去って行った。
お馴染みの黒のバックは、その手には無かった。
これが、陳にとっての
【後悔記念日】
となった。