8年前の11月半ばのことでした。「会社の前で子猫のなき声がする、どうもコンテナの屋根に居るみたい」と事務所の戸を開けながら云うH君に、反射的に椅子から立ち上がった。いたいた、倉庫代わりのコンテナの屋根から下を見ながらないている。倉庫から脚立を持ってきてコンテナ屋上から子猫のサルベージ完了。毛がふさふさの可愛い子猫に見えたが、抱き上げてみたら痩せていてアバラ骨の感触が手に残った。何も食べてないのだろ . . . 本文を読む
無音の本堂に警策の音が響くころ結跏趺坐に組んだ足の痛みが消える汗がひき、耳にあふれる蝉の声がしだいに遠のいてゆく気持いい、穏やかで心地よく腹にすっと収まる。座禅と仕事が精神安定剤だなんて、これも可笑しい普段は食べない梅干とタクアンのなんと美味なこと。 . . . 本文を読む
1998年の有馬記念はグラスワンダーが勝ち、メジロライアンのご子息が連を確保した。オグリキャップや骨折休養明けのトウカイテイオーを彷彿とするレースに、やっぱり有馬記念は「ドラマチック有馬」だと思った。全馬無事に走り終えた。ターフを去り行く馬に哀愁を覚えつつ、強い馬の復活を喜び、ライアンの夢を来年に渡す掛け橋を見た。「これが1年を締めくくる有馬記念だ」という有馬を見て年の瀬を実感した。この年、タイキ . . . 本文を読む
かのアナウンサーを真似て「あなたの夢は・・」と問われたら、「私の夢はメジロライアン!有馬記念でG1初勝利」とこたえる。弥生賞(G2のころ)、京都新聞杯、ジュニアCを勝って、皐月賞は3着でダービーと菊花賞が2着とさんざんハガユイ思いをさせてきた横山典騎乗のメジロライアン、有馬記念はなんとかなる。「ここで勝たなきゃオトコじゃない、負けたらセン馬にするぞ!」ぐらいに入れ込んで自信満々の馬券を買った。「メ . . . 本文を読む
昨日はさっさと仕事を片付け定時で帰った。会社から30分の実家向け、山の夕暮れは早い、小雨のなか急いで車を走らせ、駐車場へ着くやいなやカメラを片手に苔むした庭をつっきり玄関まで駆け抜けた。庭に置いてある青コンテナの中に黒メダカの稚魚がいる。最初はほてい草を増やそうと青コンテナに水を入れ日当たりのいい玄関前に無造作に置いた。先日水を足そうとコンテナをのぞいたら、何と稚魚がいる。1cm弱に育ったものから . . . 本文を読む
土曜日の陸事は門扉を閉ざしひっそり閑散としている。
照り返しに白くまぶしいアスファルトを老婆と犬が行く、
桜古木の葉陰に寄り添うように、
道路に憩いの影ふたつ。
って、暑ちぃぃぃ。
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実家の玄関前に信楽の大きな甕がある。睡蓮やオモダカやアサザの寄せ植え睡蓮鉢として使っていた。初夏に睡蓮の葉が日ごと大きなり、水面に鮮やかな緑が映るころ、「この中に黒メダカを泳がせたい」と思った。近くの小川で知らない子供たちと一緒にタモを振り回し小魚取りに熱中する。捕まえた小魚は、メダカ、鮒、ハヤ、ヨシノボリ、モロコ、スジエビなどなど....。 初夏から秋の初めまで飽きることなくタモを振り回し水たま . . . 本文を読む
何年か前のお盆の日木立にかこまれた菩提寺で先祖供養の法要が始まっていた。ぶ~んという羽音もやかましく目の前にヤブ蚊がとんできた。隣に座る叔母は、さかんに頭を左右に降ってヤブ蚊を追い払っている。中気で寝込んだ電気屋のお爺さんみたいだ・・・ぐふふふ。横目で見ながら、おかしくて、おかしくて声を殺して笑った。ぶ~~ん・・・私のとこに飛んできた。目で追いかける。さんざぶんぶん飛び回り、ピタリと私の左腕に止ま . . . 本文を読む
そういえば何年か前、うちの会社は連続して泥棒に入られたことがある。その日の朝、駐車場から道路に出ると、遠目に赤い警告灯を廻したパトカーが会社の前に停まっている。「なんだ?」、ばらばら駈けて会社につくと上司と二人の警官が破られた窓の下に立ち、なにやら実況検分をしいていた。右隣のスタンドの兄ちゃんやら左隣の生コン屋のおっさんたちも集まっている。まずっ、遅れをとった。泥棒はシャッターの横にある小さな高窓 . . . 本文を読む
日本に自動車電話が登場したのは30年ほど前だと思う。それからすぐに個人向け携帯が発売になったが、「これのどこが携帯よ」と文句のひとつも云いたくなるほどショルダーホンは重くてかさばるしクソ高い。1980年代に入ってから携帯電話の原型ともいえるモデルが登場し安月給の私も半月分をはたいて手に入れた。家庭電話の受話器ぐらいの大きさで10分も話せば電池切れの使えない代物だったけど、片手で持てる携帯電話が嬉し . . . 本文を読む