本道における新型コロナウイルス感染が収まらない中で、現状の需要減少、魚価低迷など漁業への影響が長期化すれば、全道の漁業生産額は500億円を超える損失を被り、年間生産額は2千億円を下回る恐れがあると、道水産林務部が推定した。
道が水産関係団体などから幅広く現場の声を聞き現状と課題、対策の方向性をまとめた。令和元年の漁業生産額は秋サケなど主要魚種の生産量低下や魚価安で2,350億円と3千億円の大台を大きく下回り、これらに加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、外食需要や輸出の減少など物流の停滞から魚価安や加工製品の過剰在庫を招き、漁業をはじめ、加工業など関連産業に大きな影響を与えている。
主要魚種では、秋サケはコロナ禍の影響により、さらなる魚価の低下が懸念され、定置漁業の安定した経営と増殖事業の継続が課題となっている。ホタテは噴火湾の養殖ホタテの2月の㎏単価が前年306円から今年は169円に下落。へい死対策の途上にある養殖漁業にとって魚価安が大きな打撃となっている。国内外の仕向け先の喪失で在庫の増加が発生しており、流通対策を勧める必要があるとしている。コンブも、外食産業の低迷でダシ用コンブの価格低下が懸念される。
その他の魚種でもウニ、カキなどは旬の時期を逃すことによる商品価格の下落が起き、えりものエゾバフンウニは2月の㎏単価が前年の2500円から1800円に低迷している。ナマコなどのほか、今後盛漁期を迎えるヒラメやマツカワなども価格の下落が心配される。
道によると、こうしたコロナ禍の長期化は漁業生産の大幅な落ち込みにつながると現状を分析。魚価安や操業の制限などで漁業所得の落ち込み、乗組員の雇用打ち切り、廃業が懸念される。また、水揚げ高の減少は、漁業者を支える漁協の事業収入に直結し、経営悪化の恐れがある。ホタテなども需要減退に伴い供給過剰が見込まれるが、生産量の調整が困難であり、外国人技能実習生の受入に支障をきたしている。加工品も需要・価格の落ち込みによる大幅な減収、仕向け先の喪失が問題となる。
国の緊急経済対策に加え、道は①事業収入が激減②魚価が低迷③水産部物消費が低迷④人手不足といった4つの視点から「新型コロナウイルス感染症拡大による水産業への影響を最大限緩和する」対策に取り組む方針。12日の道議会水産林務委員会(三好雅委員長)で金崎伸幸道水産林務部水産局長は「すでに道は補正予算で漁業振興資金の20億円増枠など金融支援対策や生産者団体の販促の取り組み支援を盛り込んだが、影響が長期化すれば漁業の減収補てん、調整保管の道内対象魚種の適用などを国に求め、関係団体と連携して切れ目のない対策を講ずる」と説明した。