福島第一原発事故に伴うALPS処理水の海洋放出は、中国の日本産水産物全面禁輸といった反応を呼び、大きな社会問題となったが、廃炉までの30年余りどうすればいいのか、方向性がなかなか見えない。
この2月に発行される本書は、各分野の研究者や専門家が知恵を出し合い、放射性物質の基礎知識から現在に至った経緯、漁業者、県民の反応、廃炉への道筋、政治の責任への分析を踏まえ、処理水問題の解決に向けた科学・社会両面からの提案を行う。
漁業に関しては、北海学園大の濱田武士(はまだたけし)教授が「なぜ漁業者は処理水の海洋放出を認めないのか」を書き、地域活動家の小松理虔(こまつりけん)氏が「処理水に振り回されるいわきの漁業」を報告している。
マスメディアの問題、漁業者と消費者の相互理解、廃炉全体の枠組みの見直し、陸上保管を迫るなど、8人の識者が提案する内容は従来の科学一辺倒、経済偏重のアプローチを超えた議論を呼び覚まし、社会的な合意に至る手引きとなることを期待したい。
2月9日発売、A5判・172ページ、定価1,980円。
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