正面の観覧席では息子が試合の行く末を静かに見守っています。
コロッと負けるわけにはいかないんですよ。
どんなにみっともなくても
最後の最後まで力を尽くして戦う私の姿を息子に見せたいのです。
次のチームとの対戦、私はまたトップバッターで起用されました。
(リーダーってば懲りてない・・・・)
私たちのチームは先の試合を3-1で落としているので
ここで流れを変える必要があるのに。
オーダーをガラッと変えて、エースを1番手に持ってく作戦もあるのに。
ともかく何が何でもやるしかないぞ。
オーダーを譲ってくれた仲間の分まで。
幸い今回の相手はそんなに強そうじゃない。
ニコニコ優しそう。メガネだし。・・・関係ないけど。
よし、私はやる、今度こそやってみせる。
作戦名はズバリ「気合いだ、気合いだ、気合いだ作戦」。
気迫で相手をのんで 勝ちに行こうという作戦です。
ええ、ええ、もちろん自分で考えましたとも。
たいしてうまくもないくせに
愛ちゃんや佳純ちゃんのように
「さーっ!」とか
「ヨシ一本!」とか
「ドンマイ」とか
声をいっぱい出して自分で自分を乗せてく作戦です。
技術的なこととは何の関係もありませんが
相手はやりにくいと思います。
だって元気な相手って、めげなさそうで、私だったらやりにくいから。
それに
(こんなに負けてるのにめげてないってことは、まだ何か奥の手があるのかも・・)
って相手が勝手に警戒して混乱してくれる可能性もある。
それに気迫のこもった人って、単純に恐いでしょ?
不気味でしょ?
ただ恥ずかしいのは、弱い私の方が声だけは大きいってところ。
これは恥ずかしい。
メンタルの強さが試されます。
・・・気にするもんか(←気にしている)。
勝つためだい。
でね、あんまり見たこともないような試合をしたのです。
誰もビデオを撮ってなくてよかったよ。
かっこよく決まった球は1本か2本ってとこで、
いったいあなたたち何やってんの?的なポンポコな試合をしました。
相手の方がいい方で、というか共感力の非常に高い?方だったようで
すっかり私のペースにのまれて下さったのです!
途中、こんなはずじゃない的な首をかしげるシーンを何度も見ました。
私につられてどんどん調子を崩していく様は、見るに忍びないほどです。
スマッシュの決まらない私はとにかく何が何でも相手コートに球を返すことだけに集中しました。
だって1セットめ落とした時、ベンチでみんなに
「打つな。つなげ。くれぐれも打つな。つなげ。」
ってアドバイス貰ったんだもん。
ひょろひょろ~~って山なりの、
まるで生まれたての小鹿みたいなヨロヨロした返球でも
相手コートに返って、相手がそれを返球できなければ同じ1点です。
相手が打ちミスしてくれればこっちが1点。
そこに賭けるというセコイ作戦で、私は見事にこのゲームを制したのでした。
ゲームカウント1-1。
ベンチに戻るとメンバーがとても意外そうなあっけにとられた顔をして
「と、とにかく、その調子。
丁寧につないでホントの(って何よ?)チャンスボールだけを打つんだよ」
そのまま、相手の方は崩した調子を戻すことなく
なんと私はちーっともいいトコなしのくせにこの試合を勝ってしまったのでした。
でもマジ頑張った。
1本もムダにできない、だって私には自分から決める力がないんだもの。
せめて拾って拾って拾いまくるんだ。
飛び交う球に集中しました、これでもかってくらい。
何度も言うけど、こんなに弱いくせに鬼気迫る気迫、
相手の方はさぞ恐ろしい思いをされたことでしょう。
「一体何なんだ、この人は?」って。
この場をかりて謝ります。
ごめんね ごめんね~~
試合後トイレの鏡で見た自分の顔は 見たことないほど真っ赤っかでした。
すっごい血圧上昇だったのでしょう。
でもね、念願の1勝ですよ
まさかまさかの、いや、狙って勝ち取った輝かしい1勝ですよ
うっ、うれしーよーーーー
やったーやったーやりましたよーーー
ところで後日 息子に言われましたよね。
「あんまり見たことのない 珍しい試合だったね」と。
あ、やっぱりぃ?
でもね、この日の死闘は、実はまだこれからだったのです。