思春期・青年期の精神病理学が専門の精神科医だという斎藤環氏が
訳して書いた本だそうです。
斎藤氏はまだ冒頭ともいえるP12で
「結論から言いましょう。
いまや私は、すっかりオープンダイアローグに魅了されてしまっています。
ここには確実に精神医療の新しい可能性があります。」
とまで書いています。
「もはや『オープンダイアローグが有効かどうか』ではなく
『なぜオープンダイアローグがこれほど有効なのか』を・・・・」
とも。
オープンダイアローグとはフィンランドで行われている
統合失調症患者に対する画期的な治療だそうです。
本書のP11に書かれていることをそのまま転記させて貰います。
「この治療を導入した結果、西ラップランド地方において統合失調症患者の
入院治療期間は平均19日間短縮されました。
薬物を含む通常の治療を受けた患者群との比較において、この治療法では、
服薬を必要とした患者は全体の35%、2年間の予後調査で82%は症状の再発がないか
ごく軽微なものにとどまり(対照群では50%)、障害者手当を受給していたのは
23%(対照群では57%)、再発率は24%(対照群では71%)に抑えられていたと
いうのです。そう、この治療法にはすでにかなりのエビデンス(医学的根拠)の
蓄積があったのです。
1980年代から着実に成果をあげつつあり、フィンランドでは公的な医療サービスに
組み込まれて、希望するものは無料で治療が受けられるというのです。」
この治療法は、西ラップランド・トルニオ市の精神科病院であるケロプダス病院で、
家族療法を専門とする臨床心理士でありユバスキュラ大学教授の
ヤーコ・セイックラ氏が中心となって行っているものです。
本にはオープンダイアローグに関する氏の論文が3本掲載されています。
3本の論文を読む前に、その要旨のようなものを斎藤氏が書いていて、
それがとても分かりやすくありがたいです。
いや、専門用語も多くて、わからないといえばわからないのですが、
それでも辛うじて・・・・うん、辛うじてキャッチ出来たように思います。
統合失調症は100人に1人いると言われています。
とても多い。
主軸は薬物治療で、「完治」がないとされています。
それであればなおのこと この治療法はすごいのではないか。
さて、感想ですが読んでよかった。
今とても前向きな気持ちです。
この本を手に取った自分を「でかした!」と思うほど。
この考え方は家庭でこそ応用したいです。
私など、自分はコミュニケーションをとっているつもりでも、
よく見ればただのモノローグだったなんていうのはざらにありますから。
自分の考えを一方的に言っているだけで対話じゃなかった・・・・ってのは
思うよりずっと多い。
オープンダイアローグでいうところの対話を意識して心掛けても、
例えば親子などの2者間では子どもが悩んで荒れたり苦しんだりしている時に
対話を引き出しにくいことは多いのです。
近い関係では感情が出やすくこじれもするので。
でもこの考え方、やり方を知っているだけで全然違うと思います、
少なくとも私に関しては救世主だわ。
それから統合失調症に関してではないけれども
民間のカウンセリングやワークショップ、民間病院のごく一部や自助グループでは
近いことが行われているのではないかと思ったりしました。
私の期待、かもしれませんが。
オープンダイアローグをそれぞれの立場で出来る形に応用しながら取り入れたら
統合失調症以外の場面でもかなり有効だろうと思いました。
これは斎藤氏も書いていましたが私も同感です。
オープンダイアローグの普及と発展を願っています。
せめて多様な治療法のひとつとして選択できる日がくるように。
そのときの医療費の負担が出来るだけ少ないものであるように。