こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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肝を冷やしました。

2011-08-09 21:23:18 | 訪問看護、緩和ケア
肝を冷やすって言葉、かなり古ーい言葉ではありますが、今日は本当に肝を冷やしました

昨日から、ちょっと気になっていたCVライン。

今朝ヘルパーさんからガーゼがびしょびしょという連絡がありました。

主治医が夕方入れ替えるとのことで、それまでには間があるので、様子を見に行きました。

訪問してみると、ガーゼからなんと液が滴っています。

すぐにガーゼをはがすと、カテーテルがすっかり抜けてしまっていました

固定のテープでかぶれが治らなかった為、昨日からフィルム材を使っていなかったので、フィルターなどの重さに耐えかねて抜けたのだと思います。

でも、カテ先を見るとなんか変です。
あわて眼鏡をかけ確認したら、21センチから先が・・無い・・・。

!!!先はどこ??

糸はそのまま残っていて、本人は「どうなってるの?」と不安げです。
「うん、抜けちゃったね。大丈夫。ちょっとそのまま待っててね。」

家の外に出てすぐにクリニックに電話し、主治医に確認を取ってもらうためにしばし待ちました。

カテ先、昨日少し漏れがあった時、実は穴でも空いていて、そこからなんらかにテンションがかかって切れちゃったのか??
すぐに病院手配して、透視下でカテ先追っかけるのかな??
どうしよう。どこかで閉塞しちゃったら。急変??
だめだめ、これまでみんなで頑張ってここまでよくなったのに?!

頭の中をぐるぐると危険な妄想が駆け巡り、バクバクしながら本人の様子を見ていました。

するとそこに電話がかかってきました。

「先生に連絡しました。最初から入れるときにその位置でカテを切ったんだそうです。だから、全然大丈夫。ただ抜けただけですって。最初からそういう事も予測していたそうです。」
とのこと。

はぁ~。よかった。これでとりあえずは一安心。

でも・・・

予測できることなら、ちゃんとこちらにも伝えてほしい。

先生にしたら、勝手に早合点して勝手にあせってオーバーに大騒ぎしていると思うのかもしれないけれど・・・

病院じゃないんだから、誰かがいつもいるわけじゃないんだから、いろんなことを想定して、私たちは関わっているんだから、チームなんだから、みんなで頑張っているんだから、本人だって不安なんだから、自分だけでわかってないで、少しは長く関わってきた私たちの言葉にも耳を貸して欲しいし、笑って済ませるようなことじゃないんだから、本当に心配したんだから、そういう大事なことはちゃんと教えといて欲しい!!
ぜーぜーぜー

なんだか、チームの不協和音

大事な患者さんです。
3歩進んで1歩後退しながら少しずつ少しずつ・・誤飲性肺炎とイレウスを繰り返しながら、ここまで元気になった患者さんだから、主治医が変わっても一歩ずつ進んできた患者さんだから。
もちろん一生懸命にやってくれているのはわかるし、一緒に頑張っていきたい思いはすごくあります。
だから、自分だけでわかっていないで、自分だけで全部やろうとしないで、チームで動いてほしいのだけれど・・。

いい先生なんだけど、先生だって一緒にやりたい思いがあるのはわかっているのだけれど、なんだかこのところうまくかみ合わないのはなぜなんだろう・・・。

このところ、いつもボタンの掛け違いみたいなことが多くて、スタッフもなんだかイライラしています。
本人の気持ちも、どこかに置いてきぼりになりそう。

このままじゃいけないよね。
なんとか歩み寄って、もう一度チームの強化がしたいのだけど・・。

なんだか気持ちが凹みます。
でも、ちゃんと向き合わないと、先生ともちゃんと話さないとね。

目標は、経口摂取です。

仕事に戻れば・・。

2011-08-08 23:55:53 | 訪問看護、緩和ケア
今日は、午後出勤にしてもらいました。

普段使わない領域の脳みそを酷使したので、疲労感はかなりきつかったのですが、今日は何とか元のモードに戻りました。

出勤と同時に「あれもこれもそれも」の報告を受け、とりあえず出来ることからかたずけて行きました。

ポート抜去部の開放創の患者さんは、一部縫合されたものの、首からのPICCカテーテルにいろいろ不具合が生じてきました。
結局経口訓練中なのに、首が動かせないことも問題だし、長期にここから高カロリー輸液を入れることも限界があります。

新しい主治医の提案は、間欠的にマーゲンチューブ(胃の管)を挿入して、ワンショットで栄養剤を注入しては抜去するという方法。

今、けっこう普及していて、マーゲンチューブを毎日飲みこむことで嚥下の訓練にもなるし、間はフリーなのでQOLも向上する・・・とか言いますが、在宅ではいろいろなハードルがあると思うのです。
だいたい、、毎日誰が入れに行くのか、単位は絶対足りないし、休日祭日はどうするのか、看護師一人で行うリスクはないのか、第一本人の気持ちはどうなんだろうか・・と。
そして、足りない分の水分を結局末梢から補うのなら、再度ポートの造設をして、嚥下訓練を安全に進めた方が良いのではないか・・・などなど・・。

うーん。
在宅に新たに何かを導入するのは、本当に大変な事なんです。
根まわしやら、環境調整やら、一番問題なのは「マンパワー」と「お金」。

これからどうなっていくのか、冷静に対応しないとね。

午後になってMさんの訪問から帰ってきたヘルパーサ責。
今日もオムツの中に手を入れていたとか・・。
さらに、褥瘡を手で掻いちゃう・・。

何度も手袋をしましたが、上手にきれいさっぱり取ってくれちゃいます。

褥瘡の周辺は、またも血が・・。

オムツ外しもあるので、なんとか抑制はせずにオムツの中と創に手が行くのを阻止したいのですが・・

で、今日は再び創作タイムです。

特製二十ミトンとミニ腰巻。

水曜日には実際装着してもらって、効果をみたいと思います。
写真はその時にお見せしますね。

さて、今週もはじまったばかりです。
明日に向けて消灯です。

おやすみなさい!。

認知心理学最終日!

2011-08-07 20:38:09 | 大学の事
初めてのスクーリングも今日で3日目です。

昨夜もときわ台泊でしたが、たぶんもうここに泊まることはないと思います。

たぶん安普請のためだと思うのですが(そう思いたい・・)昨夜も、ピシッ!パキッ!、カタン・・、ミシッって・・
隣の音とは別に、室内で聞こえるんですよ~
なんだか、電気がついていてもどこか薄暗いような、どこか怪しい気配と言うか・・。
私は、今はあちらの方を見ることはできませんが、ずっと昔は何回かお会いしたことがあり、出来ることならあまり関わりたくはないので、ゾクッとする場所には長居したくはありません。

それに、やっぱり家族がいないと寂しい・・。

おバカな話もちょっかいもなく、静かにお勉強に専念できると思ったら、大きな勘違いでした。
結局、テレビ見てブログ書いたら、何にもする気にはなれず、そのまま寝ちゃいました。
ただし、怖いのでデパス0.5㎎を半分に割って飲みましたが・・。

3日目ともなると、教室のメンバーとも打ち解けて、結構和気あいあいと授業も進みます。
しかし、そうなると気持ちがたるむのか眠い・・。

眠い・・眠くて、眠くて、何を話されてるのかさっぱりわからなくなり・・。

でも、今日は最後に期末テストがあります。

それでも何とか午前を乗り切り、午後はまた頭をひねり、期末テストとなりました。

今回も記述で冷や汗をかきましたが、とりあえずは合格点を頂きました。

次回のスクーリングは、21日から3日間「臨床心理学」です。
これは本命中の本命な講義なので、結構楽しみでもあります。

とはいえ、いまだに履修方法が今一つ良くわかっていない私です。
これからの履修や試験のうけかたなど、もう一度よく考えないと、置いてきぼりになりそう・・。


まあ、とにかく今回は無事終了。
明日の午後からはしっかり切り替えをして、お仕事ですね。
先週までの騒動はどうなったことやら・・。
また目の回る毎日が始まります。

せっかく学んだ「認知心理学」お仕事に活かせられるように頑張りましょう!!

スクーリング2日目

2011-08-06 21:54:00 | 大学の事
今日も一日朝から18時過ぎまで、ずっとお勉強です。

今回の認知心理学のクラスは10名。
年齢は20代後半?くらいから60代までで、うち男性は2名です。

職業は全部はわかりませんが、専業主婦の人からOL、自営業などいろいろでした。

男性は一人は九州から、一人はなんと香港から1か月の泊りがけで来ているそうです。

香港から来ている男性は奥様と一緒に来ていて、幼児教育関係のお仕事のようです。
奥様は幼児教育、夫は臨床心理の勉強のため、友人宅にステイしての受講だそうです。

みんなパワフルです。


学生が少ないので、先生との距離が短くて、質問やら道草やらも入り、とっつきにくかった講義が結構おもしろくなってきました。

授業中ちょっと目を盗んで、先生の顔を描きました。
           こんな顔でした~

ひょうひょとして、ホンワカムードですが、中間試験は結構難しかったです・・。

そうなんです。
通信のスクーリングは一つの教科を3日間で全部やるので、めっちゃ詰め込みのうえ、その間に中間テストがあり、最終日の最後には期末テストがあるのです。
恐ろしいことです・・

生徒の嘆願により、レジメ持ち込みが許可されましたが、問題読んで理解するのも難解で、それを履修したレジメから探し出して、正解をみつけるのも大変でした。
焦ってしまって、ちょっとした言い回しで間違えたり、記述問題では、360字から440字で書かなきゃいけないのに、タイムアウトで字数が足りず減点・・。
とほほ・・て感じです。


そうそう、今日おもしろかったのが「想起のメカニズム」のなかで先生がちょっとお楽しみに教えてくれた漢字の覚え方。

漢検ブームで結構有名になった「つがわ式記憶法」というものです。

「薔薇」という漢字を覚えるときに、やみくもに繰り返し書いて覚えたりせず、覚えにくいところだけ丸を付けるのだそうです。

薔は、草カンムリと回の間にある土の両側に人・人ってところ、「人+人+土」に丸。

薇は、草カンムリに微笑の微に似ているけど、真ん中に「一」が入ってるのがポイント。

その二つの場所に丸を描いて覚えます。

さて、一度書いてみてください。書けたでしょう?
何時間か後にまた書いてみて、もう一回くらいやると記憶の痕跡といて残せます。
(この方法は、処理水準アプローチというよりは二重貯蔵庫モデルなんでしょうか。)

こんな感じで、知っている部分と覚えにくい部分を分けて記憶することで、連合といわれる想起のシステムが稼働して書けるようになるみたいです。

そこで、さっき「黴」っていう字でやってみました。
あの黒みたいに見えるけど黒じゃない部分を丸つけてみたら、なんだかすっきりしました。
どうぞお試しくださいね。

そうそう、この「想起」のメカニズムに関しては、二つの説があるそうです。

一つは、膨大な量の長期記憶のなかの、複雑な知識のネットワークに、外部からの刺激が加わって活性化し、連合と呼ばれるリンクを介して想起されるという活性拡散説。

もう一つは、「構成的活動としての想起」
連合によって符号化された記憶の一部が再現されるのではなくて、手掛かりと記憶情報を材料として、新たな情報を構成的、もしくは再構成して作り出す活動。(なんのこっちゃ・・・
ようするに、いろんな情報から新たに自分の中で再構築して思い出すってことです。

そうか!これだなー。
と思った私。

高齢の方などで、時々いろんなことがごっっちゃになって、さらにありもしないことまでまぜこぜになって、まったく違うストーリーを、さも事実のように話すかたがいます。

あいまいな記憶がどこかでくっついたり、削除されてたり・・・、間違った情報や思い込みも入って「なんじゃとて??」みたいな話を真面目にされることがあって、あっけにとられたりしますよね


まあ、そんなこんなの日常的にわたしたちが当たり前のようにやっている認知作業を、細かく分解してお勉強しています。
だからって、3日でわかるわけもなく、とりあえずそういうお勉強があって、そんなことを真剣に研究している人がいることが、わかっただけでも良しとしましょう。
なーんちゃって。言い訳ですみません。

あと一日ですが、頑張ってでも楽しくお勉強をしてきます。
それでは、おやすみなさい

今日からスクーリング・「認知心理学」って?

2011-08-05 22:30:06 | 大学の事
いよいよ今日からスクーリングです。
朝6時起床。
お泊りセットをガラガラと引っ張って、横浜から新宿ライナーで池袋へ、そこから東武東上線でときわ台まで約2時間でした。
東武東上線に乗るのは初めてでしたが、東京のど真ん中から川越方面に向かって、走り出した途端「ん?」突然景色が変わりました。

乗車する人も少ないのですが、いきなりローカルな感じで、古い民家の軒先を走る感じにびっくり。

東京の下町なのかな?
駅舎もホームもなかなか古き良き日本的な感じで、なんだかほっこりしました。

で、ときわ台は大きな学校があるので、そこそこお店もあり、時間があったので大好きなドトールコーヒーのミラノサンドで朝食をとりました。

そこからスクーリングの会場までは15分くらいでしょうか。

スクーリングには、臨床心理コースと実践心理コース、こども教育コースから、いろんな選択の講義に参加する人たちが集まってきて、私は「認知心理学」を選択しました。

「認知心理学」って聞くと「認知症の心理学のお勉強」かと思うかもしれませんが、そうではありません。

人間の認知機能に関する科学であり、「知情意」の「知」のついて科学的に研究する学問です。

・・って、私も今年勉強を始めるまで、心理学ってもっと抽象的で「こころ」の研究をするものかと思っていました。
実際は、心理学は理系の学問で、実験や検証を積み重ね、統計処理してデーターを分析することが中心のようです。

また心理学のなかでも、さらに細かく分類されていて、今はやりの犯罪心理学なんていうのもあり、それはそれは範囲が広いもののようです。

そんなわけで、今日は朝から6時半くらいまで、どっぷり人間の知覚やイメージや、記憶の貯蔵方法や処理の仕方などなどを、クラクラしながら聞いていました。

もう一つ勘違いしていたのは、よく「短期記憶がだめで、5分もすると忘れちゃうのよー」なんて話をしていましたが「短期記憶」というのは、15秒から30秒程度で誰でもその後は消失しちゃう記憶のことなのです。

ですから、5分も覚えられていたらそれは、短期記憶ではないのです。
よく、昨日行ったところも忘れちゃって・・というのはエピソード記憶ですし、自転車の乗り方を忘れちゃったのは手続き記憶ですね。
ほかにも、作動記憶、意味記憶、展望的記憶などがあり、それぞれ加齢により影響が出やすいものと出にくいものがあります。

この記憶ですが、脳生理学とともに研究されてきました。

ものを覚えるときに、「何度も声に出して繰り返す」ことをリハーサルといいますが、脳生理学者はこのリハーサルを70回繰り返せば、必ず脳に痕跡として残ると言うそうです。

じゃあ認知心理学者はというと「意味を理解すること。あなたの知識に関連ずけること。」だそうです。

この過程にもいろいろな説(二重貯蔵庫モデルと処理水準アプローチ)がありますが、とりあえず暗記物は70回繰り返せば覚えるっいうのは、記憶力の悪い私には朗報です。

そんなわけで、なにやらややこしい話を一日中聞いて、駅近くのウィークリーマンションに7時半ごろチェックインしたわけです。

狭くて何にもない、うすぼんやりといた寒々しい部屋です。

一気に家が恋しくなりました。
散らかっていても、うるさくてもやっぱり家がいいです。
さみしくて娘にメールしまくりでした。
夕飯は近所のスーパーで焼きそばとか買いましたが、なんだかまずくてやめちゃいました。

今はこんな感じで、ブログを更新中です。


ちなみに安普請のせいか、微妙にいろんな音がします。
なんか気持ちも悪いんですが・・。

さて、せっかく近くに泊まったんだし、だれの邪魔もないのでもう寝ます。

は―。さみしいです~。おやすみなさい。


今日もバタバタ。

2011-08-04 23:59:10 | 訪問看護、緩和ケア
このところ、毎日いろんなアクシデントに見舞われ、患者さんの変化もすごくて、主治医との意思の疎通が図れなかったり・・・

そんなこんなで、朝から電話やらなんやらで、しゃべりっぱなしで疲れてしまいました。

昨日、ポート部の感染の患者さんがポートを除去してもらい一泊入院から帰宅しました。

担当者が訪問して、ガーゼ交換をしようとしてびっくり。

横が5センチ縦が2.5センチくらいの、まるで『トモダチ』マーク(目の形)のような解放創に、バラガーゼが込めてある、なんとも生生しい状態だったからです。

わーお。

こんなこと聞いていないし、これだけの解放創で、初めてのガーゼ交換なんだから、本当はドクターでしょうに・・。

まあ、それからはなんだかんだとクリニックともやりとりをし、すったもんだの結果は、また明日と言う事になりました。

で、私は横浜市訪問看護連絡協議会の役員会で5時にはステーションを飛び出し、10時に帰宅。

そして、明日は早朝から(もう今日ですけど)初めてのスクーリングに都内まで行かなければなりません。
スクーリングは3日間。
片道ドアツードアで2時間半は、時間と体力の無駄です。
なので、ウィークリーマンションに2泊することにしました。

明日から「認知心理学」の短期集中講義です。

その間は、トモダチマークの解放創の件も、代行のスタッフにお願いします。

そんなわけで、明日またご報告いたします。

それでは、おやすみなさ~い。

不思議な人

2011-08-02 23:48:06 | 訪問看護、緩和ケア
世の中には、不思議な人がいます。

彼に出会ったのは今年の初めでした。

余命1年の宣告を受けて、これからの生活を出来るだけ自由に暮らしたいと希望して、退院前の面談を行ったのです。

退院後は、新しく借りたアパートで一人で暮らすことになっていて、そのためのケアマネ、訪問看護、ヘルパーをまとめてのお願いします、とのことでした。

連携室看護師も含め、今までの経過や家庭環境、なぜ今独居なのかなどを、順を追ってそれは滑らかにお話ししてくれました。
その過去の経歴は華々しく、医療知識もかなりあり、どれほど今まで期待されてきた人間かということも端々にちりばめての話でした。
ただその割に嫌味な感じはなく、とくに別れて暮らすわが子への思いを語る姿には、胸が熱くなるような思いもいだきました。
病院のナースも、彼の言動には一目置くようなそぶりもあり、連携室ナースも私もそれほど彼の話を疑いませんでした。

実際訪問が始まると、訪問した看護師やヘルパーにも、手を止めさせて自分の話をしました。
外交官だった父の赴任先での誕生やそのルーツ、その幼いころの体験のために食事の好き嫌いがあること、そして成績優秀で一流大学を出て一流企業で研究者として世界を股にかけ活躍した話。

高級外車や高級マンション、アルマーニのスーツや貴金属の話・・。

けれど、その話のどれもが今の現実からかけ離れていました。

今は病気のために職も失い、収入も途絶え、家族も去ったのだと彼言い、その彼のために何人かの友人(または部下と彼言っていた。)は、毎日彼の面倒を見に来ていました。(本当に面倒を見ていたのかは不明。)

緩和の薬のもうんちくがあって、主治医も彼の希望をなるべく尊重していましたし、私たちは彼の話を否定することはしませんでした。

ただ、どう考えてもつじつまの合わない話が多くて、そのうち彼の話は「大ぼら」であることが周知されました。
なによりもご兄弟からの実話を聴いてしまいましたので、荒唐無稽な彼の話はどちらかというと物語のように聞こえました。
けれど彼は決して嘘をついているようには見えませんでしたし、確かにその事実があったように話していました。

そんな生活を2か月ほど過ごしたある日、彼は激しい痛みと軽度の意識障害をおこし入院となったのです。

それから8か月・・。

今日、連携室看護師から、彼の訃報を聴きました。

ああ・・。
彼が、死んだ・・。

彼の顔がはっきりと思い出されました。
大ぼらを吹きながら、真面目に人生論を唱える顔。

ヘルパーさんにも伝えました。

いつも明るく身の回りのことをやってくれたAヘルパーは、目を潤ませて「私、もう一度会いたかった。彼の事、嫌いじゃなかったですよ。」と言いました。

みんな同じ気持ちでした。

虚構の経歴をいつも繰り返したかれは、きっと嘘をついているつもりはなかったのだと思います。

もしかしたら、本当に違う次元でその世界にいたのかもしれない。

虚構は虚構でなく、彼にとって自分の人生そのものだったような気がします。

なにかそういう障害があったのかもしれませんが、やっぱり彼ともう一度話がしたかったと思います。

どう表現していいのかわかりませんが、壮大な人生を送った一人の学者が死んだのです。

痛みが取れない!?

2011-08-01 23:18:44 | 訪問看護、緩和ケア
ターミナルの患者さんで、痛みに関しては「我慢しない、させない」ことをみんなで目指しています。

今までは、予測指示内でほとんんど問題はなかったのですが、いろいろな悪条件が重なって、今日は朝から痛みが取れないでいる患者さんがいます。

もともと、疼痛コントロールの薬を使うのが嫌で嫌で仕方なかった患者さん。

何度も説明をして、必要量を決めて処方しても、ちょっと痛みがないと自分でベースの薬を減らしてしまいます。
レスキューだって、なかなか手を出しませんでした。

「ぼーっとしちゃうから・・」「うとうとしちゃうから」「体に悪いでしょう?」「少ない方がいいよね。」
でも、結局は痛みで飲まざる得なくなる。

医師も看護師も薬剤師も、何回説明しても同じことの繰り返しでした。
べつに理解力が悪いわけでも、認知があるわけでもなく、それは彼の精いっぱいの病気への抵抗なのだと思います。

ですから、今までの主治医は、ぎりぎり量を減らして、処方をしていました。
それでも、痛みのコントロールは比較的良好で、痛くてもレスキューで何とかなってもいました。

ただ、痛みというものは突然激しくなることもあります。
そこには、癌性疼痛以前の不安や恐怖も影響してきます。

たまたま主治医が変更になったばかりで、たまたま家族が入院して今夜は一人。
気がやさしくて、でもとても怖がりで、誰かがいないと不安でしょうがない患者さんです。

今日は、きっと不安だろうねとみんなで話していました。

やはり緊急電話に連絡があったそうです。

「痛い!何をしても痛い!レスキューも効かない!ビリビリする!」

昼からリリカが増量になり、夜からベースも増えました。
明日には、全部処方をし直すから、今夜だけなんとか痛みを乗り越えてほしい。

でも痛い。
次はこれ。
じゃあこの次は?
今夜の緊急当番も心配でしょうがないようです。


自宅にあるものでやりくりしながら、これで今夜は眠れますように。
そう願いながら、一緒に祈るしかないのです。

私たちは、やっぱり無力なのだと、こんな夜は思い知らされます。