『リップヴァンウィンクルの花嫁』を観てきた。
『花とアリス殺人事件』のエンドロール後にティザーを観てからずっと気になっていた作品。
悲しいではない。
辛いではない。
でも、胸を締め付けられるような、そう、恋の絶頂にいるような気持ち。
涙が出た。
全てはリップヴァンウィンクルに出会うため。
そのために、カムパネルラはSNSで恋人と出会い、なんでも屋に出会い、なんでも屋に嵌められ、離婚させられ、全てを失った。
それは彼女に必要なこと。外の人間に触れ、人の優しさ、汚さ、弱さを身をもって知るため。
全てはリップヴァンウィンクルに出会うため。
そう。運命。
でも、カムパネルラを選んだのはリップヴァンウィンクルではない。
なんでも屋なのだ。
「あなたなら友達になれると思ったからです」と彼は言う。
なんでも屋とカムパネルラ、そしてリップヴァンウィンクルは本質的には良く似ていると思う。
寂しがり屋。見栄っ張り。そして臆病。
「あなたなら友達になれると思ったからです」それはカムパネルラを知り、リップヴァンウィンクルを知っていたからだ。とても、とてもよく分かっていた。
いや、運命であることが、自分を含めて出会うことが運命であることが分かっていたから。
リップヴァンウィンクルとカムパネルラは恋をする。
真っ白なウェディングドレスを身にまとい、2人だけの最高の結婚式。見えない結婚指輪。だから絶対に外せない指輪。
最高の披露宴。そして、最高の初夜。
「私はね、幸せがすぐに溢れちゃうの。私にはこの世界は優しすぎるの」とリップヴァンウィンクルが言う。まるで自分に価値が無いとでも言うように。
「愛してるよ」とリップヴァンウィンクルが言う。溢れる幸せにおぼれながら。
「私も、愛してる」とカムパネルラが答える。その溢れる幸せに一緒に身を投じながら。
そしてリップヴァンウィンクルは遠い、本当に遠いところに行ってしまう。
銀河鉄道でも辿りつけるかどうか分からないぐらい遠くに。
カムパネルラは、ホームに置いていかれてしまう。
なんでも屋はリップヴァンウィンクルの残した仕事を進める。
努めて、ビジネスライクに。
努めて、なんでも屋として。
なんでも屋はリップヴァンウィンクルが大好きだった。どうしようもないぐらい大好きだった。
だから、なんでも屋はリップヴァンウィンクルがいなくなった世界を受け止めきれなくなった。リップヴァンウィンクルのため狂ったように涙を流す。狂ったように全裸になり、狂ったように酒を飲む。それはリップヴァンウィンクルがここにいないようにするため。
カムパネルラの結婚を手伝い、離婚に仕向け、全てを奪う。
全てはリップヴァンウィンクルに出会わせるため。
大好きなリップヴァンウィンクルの願いを叶えるため。
全てを失ったカムパネルラは、ただのカムパネルラになる。
なんでも屋が持ってきた、粗大ごみの家具の中にカムパネルラがいると、彼女も粗大ごみに見える。
「こんなに人がいるんならさ、1人ぐらいいなくなっても分からないよね」とリップヴァンウィンクルは言った。
その通りだ。沢山の中から1つが無くなったって何の問題もない。それは沢山の粗大ごみの1つが無くなるのと同じこと。
それが新しいカムパネルラ。
なんでも屋との別れは、握手で終わる。
「また何かありましたら、いつでも」となんでも屋は言う。
「ありがとうございました」とカムパネルラは言う。
きっと、カムパネルラはSNSで会話することがあっても、二度となんでも屋を使うことはない。なんでも屋の仕事を受けることもない。
それは恨みとかじゃなく、区切りとして。
リップヴァンウィンクルの花嫁になった、ありがとうの区切りとして。
今日もカムパネルラの左手の薬指には、見えない結婚指輪が輝いている。
『花とアリス殺人事件』のエンドロール後にティザーを観てからずっと気になっていた作品。
悲しいではない。
辛いではない。
でも、胸を締め付けられるような、そう、恋の絶頂にいるような気持ち。
涙が出た。
全てはリップヴァンウィンクルに出会うため。
そのために、カムパネルラはSNSで恋人と出会い、なんでも屋に出会い、なんでも屋に嵌められ、離婚させられ、全てを失った。
それは彼女に必要なこと。外の人間に触れ、人の優しさ、汚さ、弱さを身をもって知るため。
全てはリップヴァンウィンクルに出会うため。
そう。運命。
でも、カムパネルラを選んだのはリップヴァンウィンクルではない。
なんでも屋なのだ。
「あなたなら友達になれると思ったからです」と彼は言う。
なんでも屋とカムパネルラ、そしてリップヴァンウィンクルは本質的には良く似ていると思う。
寂しがり屋。見栄っ張り。そして臆病。
「あなたなら友達になれると思ったからです」それはカムパネルラを知り、リップヴァンウィンクルを知っていたからだ。とても、とてもよく分かっていた。
いや、運命であることが、自分を含めて出会うことが運命であることが分かっていたから。
リップヴァンウィンクルとカムパネルラは恋をする。
真っ白なウェディングドレスを身にまとい、2人だけの最高の結婚式。見えない結婚指輪。だから絶対に外せない指輪。
最高の披露宴。そして、最高の初夜。
「私はね、幸せがすぐに溢れちゃうの。私にはこの世界は優しすぎるの」とリップヴァンウィンクルが言う。まるで自分に価値が無いとでも言うように。
「愛してるよ」とリップヴァンウィンクルが言う。溢れる幸せにおぼれながら。
「私も、愛してる」とカムパネルラが答える。その溢れる幸せに一緒に身を投じながら。
そしてリップヴァンウィンクルは遠い、本当に遠いところに行ってしまう。
銀河鉄道でも辿りつけるかどうか分からないぐらい遠くに。
カムパネルラは、ホームに置いていかれてしまう。
なんでも屋はリップヴァンウィンクルの残した仕事を進める。
努めて、ビジネスライクに。
努めて、なんでも屋として。
なんでも屋はリップヴァンウィンクルが大好きだった。どうしようもないぐらい大好きだった。
だから、なんでも屋はリップヴァンウィンクルがいなくなった世界を受け止めきれなくなった。リップヴァンウィンクルのため狂ったように涙を流す。狂ったように全裸になり、狂ったように酒を飲む。それはリップヴァンウィンクルがここにいないようにするため。
カムパネルラの結婚を手伝い、離婚に仕向け、全てを奪う。
全てはリップヴァンウィンクルに出会わせるため。
大好きなリップヴァンウィンクルの願いを叶えるため。
全てを失ったカムパネルラは、ただのカムパネルラになる。
なんでも屋が持ってきた、粗大ごみの家具の中にカムパネルラがいると、彼女も粗大ごみに見える。
「こんなに人がいるんならさ、1人ぐらいいなくなっても分からないよね」とリップヴァンウィンクルは言った。
その通りだ。沢山の中から1つが無くなったって何の問題もない。それは沢山の粗大ごみの1つが無くなるのと同じこと。
それが新しいカムパネルラ。
なんでも屋との別れは、握手で終わる。
「また何かありましたら、いつでも」となんでも屋は言う。
「ありがとうございました」とカムパネルラは言う。
きっと、カムパネルラはSNSで会話することがあっても、二度となんでも屋を使うことはない。なんでも屋の仕事を受けることもない。
それは恨みとかじゃなく、区切りとして。
リップヴァンウィンクルの花嫁になった、ありがとうの区切りとして。
今日もカムパネルラの左手の薬指には、見えない結婚指輪が輝いている。