秋季近畿大会 1回戦 大阪桐蔭戦
6回表の貴重な追加点は「必然」な1点だった・・・
2010年 秋季近畿大会 1回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9
加古川北 0 1 0 0 0 1 0 0 0 2
大阪桐蔭 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
~加古川北 運命の一戦 Ⅲ~
6回表、加古川北は無死三塁の絶好機をつぶしかけていた。
強攻が裏目に出て、内野ゴロで突っ込んだ三塁走者が憤死。
局面は2死一塁となり、長打でもなければ追加点は望めなくなっていた。
だが、相手がすきを見せた。
大阪桐蔭の2番手投手の4球目がワンバウンドし、捕手のミットをかすめて後方へそれた。
「自分は投手だし。相手も油断しているはず」
加古川北の一塁走者、井上真伊人は全速力で二塁をけり、迷わず三塁をねらった。
捕手がバックネット前でボールをつかんだ時、井上は既に三塁ベース手前に達していた。
果敢な走塁が動揺を誘い、続く5球目も暴投。
2点目のホームを踏んだ井上は、沸き上がるベンチに向かって拳を握った。
連続暴投で転がり込んだ2点目。
周囲の多くは幸運と受け止めた。
だが、加古川北にすれば 「必然」 の攻めだった。
近畿大会を直前に控えた10月中旬、福村順一監督は紀三井寺球場を1人で訪れた。
球場の形状やベンチの様子、風向きなどを自らの目や肌で確かめておきたかった。
目についたのはファールゾーンの広さだった。
特に本塁からバックネットまで距離があった。
フェンスの跳ね返りも小さそうだった。
「捕手が後ろにそらせば二つ(先の塁を)狙えるな」
加古川北は普段から走塁にこだわってきた。
「普通にやっていたら私学に勝てない。ただ、走ることは誰にでもできる」と福村監督。
神戸国際大付などの強豪私学がひしめく激戦区。
絶対的な能力の差を機動力で埋めてきた。
毎日の練習は、キャッチボールやランニングではなく、ベースへの滑り込みから始まる。
試合でも、攻撃的なミスなら指揮官は責めない。
秋の公式戦の盗塁数は1試合平均2.92個
左方向への安打で一塁から三塁を陥れる走者も珍しくない。
「足」で拡大する姿勢が。大阪桐蔭を追い込む1点をもぎとった。
神戸新聞スポーツ記事より