隊長が、これまでに鑑賞した「映画」を紹介するシリーズの第235作品目は、『慕情(ぼじょう)』をお送りします。
『慕情』(原題: Love Is a Many-Splendored Thing)は、1955年8月に公開(日本公開:同年11月)されたアメリカ映画。製作・配給会社は、20世紀フォックス。上映時間:102分。
原作は、ベルギー人と中国人の血を引く女性医師 ハン・スーイン(Han Suyin)<本名:Elizabeth Comber> の同名の自伝的小説。
脚本:ジョン・パトリック(John Patrick)
監督は、ヘンリー・キング(Henry King)。
主演:ジェニファー・ジョーンズ(Jennifer Jones)と、ウィリアム・ホールデン(William Holden)。
共演者は、マーレイ・マシソン(Murray Matheson)、イソベル・エルソム(Isobel Elsom)、トリン・サッチャー(Torin Thatcher)、リチャード・ロー(Richard Loo)、キャンディス・リー(Candace Lee)、ほか。
音楽:アルフレッド・ニューマン(Alfred Newman)。
アルフレッド・ニューマンが音楽を担当した作品は、1970年公開の『大空港』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/4ef4d3694a07eb12707a6a119c497e44 を、取り上げています。
主題歌「慕情」の作曲は、サミー・フェイン(Sammy Fain)。
あらすじ:物語の舞台は、1949年、第二次大戦直後のイギリス領・香港。中国国民党と共産党の内戦で中国大陸から続々と難民が香港へ押し寄せていました。
中国人の父とイギリス人の母をもつ、女医のハン・スーイン(ジェニファー・ジョーンズ)の気持ちは、中国人でした。病院勤めを続けながら、祖国である中国に帰る機会を伺っていました。スーインの夫は、国民党の将校でしたが戦死していました。
病院は人手不足で仕事が厳しいため、気分転換も必要ということで、ジョン・キース医師(マーレイ・マシソン)に誘われて、スーインは病院理事(トリン・サッチャー)の家のカクテルパーティーに出かけます。理事夫人アデリーン(イソベル・エルソム)の中国人へのステレオタイプに悩まされますが、その場でアメリカ人記者マーク・エリオット(ウィリアム・ホールデン)と知り合います。
二人はいつか恋に落ち、結婚を意識し始めました。しかし、マークには別居中の妻がいて、恋人たちの関係は、香港の白人社会や病院上層部にスキャンダル視されてしまいます。
離婚の話し合いが難航する中、マークは朝鮮戦争の取材を命じられ戦地に赴きます。スーインは、居づらくなった病院を辞め、友人宅でマークの帰りを待ち続けました。けれども、そこに届いたのは、マークの戦死の知らせでした。。。
感想:1955年公開の映画ということで、内容を知らない方でも、日本語タイトルの「慕情」と、コニー・フランシスやフランク・シナトラなど、そうそうたる歌手にカバーされた主題歌を殆どの方が耳にしたことがあると思います。
随所に登場する、撮影当時の香港の街並みや景色。今、この映画を観ると、歴史的価値のある映像にもなっています。
主人公ハン・スーインの勤める病院の裏手から、「ビクトリア灣」をパノラマで俯瞰するシーンが何度も登場しますが、これは観光名所「ヴィクトリア・ピーク」ではないそうです。隊長は、仕事と観光で計16回、香港を訪れていますが、初めての出張時、接待での宴会を終え、ヴィクトリア・ピークに行きました。酔っ払っていて、目の前の広がる“100万ドルの夜景”にテンションが高くなり、手を広げて崖から飛ぼうとして、慌てて同行者に止められた苦い記憶があります。
度々登場する「旧・啓徳空港」の光景も必見ですね。1998年に、新空港となる「チェクラップコク国際空港」が開港するまで、市街地に面した啓徳空港が香港の国際空港機能とイギリス空軍の機能を果たしていました。隊長自身も、啓徳空港に着陸しようとする飛行機の窓から見た、まるでビル群を避けながら飛んでいる光景が目に浮かびます。
結婚の承諾を受けるため、中国人親族の住む重慶へ行くスーインが、啓徳空港から乗ったの飛行機の尾翼に中華民国の国旗が描かれているのも、歴史の教科書を読むかの如くに思えました。撮影当時の重慶は、既に中国共産党の統治下ですので、重慶空港は別の場所でロケしたに違いありません。
ンガポールから香港に戻るために、マークが乗っていたのが、今は存在しない「パンアメリカン航空(Pan American Airways)」です。これも、飛行機マニアには垂涎の映像でしょう。
最後になりますが、これまでに、「映画」の記事の中で、外国映画の邦題(日本語タイトル)の付け方の良い作品と、悪い作品を挙げていて、それを一覧にしています https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/5ea8aa4c56656e55bbdb8cfa491773aa が、本作は良い例だと思います。
原題の「Love Is a Many-Splendored Thing」を直訳すると、「恋は多くの光り輝く出来事」でしょうか。タイトルとしては、長すぎで意味が分かりません。
それを、『慕情』という立った二文字で、主人公の愛惜の気持ちを現わしている素敵な邦題だと思います。同時に『慕情』の主題歌のヒットにも繋がっているのでしょうね。
隊長が副題を付けるとしたら、「戦争に引き裂かれた悲恋物語」とでもしましようか。
==「映画」バックナンバー ==
http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/c/226e9f0193a60e6a012384176360666f
Film1~220 省略
Film221 2021/3/4 『花のあと』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/fe69be2ee008e2d2b944addabba4e456
Film222 2021/3/11 『運び屋』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/cd22b4af80f787dcc0e5194fa5a1b5f4
Film223 2021/3/29 『ラヴソング』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/176b734afd085edf4aaf9b17b7402706
番外編 2021/4/3 『訃報:田中邦衛さん』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/73b0d70119548332b84b8d17e642ae33
Film224 2021/4/6 『ラ・ラ・ランド』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/84b88c17f4e245519021e30abd3926fd
Film225 2021/4/13 『万引き家族』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/e2a466602a7c4fcb375265b8d371102a
Film226 2021/4/18 『少林サッカー』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/3d7cadbe8320324f6f76c92f3055fdb9
Film227 2021/5/3 『ダーティーハリー2』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/8f9b1e1d7c73831ed6bd802308f3e633
Film228 2021/5/11 『記憶にございません!』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/dbe589226c7d8c59c68739e909441512
Film229 2021/5/19 『海洋天堂』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/417011bf38b8475d306a2c9e9165963a
Film230 2021/5/29 『最高の人生の見つけ方 (2019年)』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/fc657982359bb0e626957648a10d485f
Film231 2021/6/12 『ザッツ★マジックアワー ダメ男ハワードのステキな人生』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/b7dd45c3e2988a5e10f89396b56cab86
Film232 2021/7/16 『ターンレフト ターンライト』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/f9107d043155b78160b2e3673bf00b18
Film233 2021/7/28 『蝉しぐれ』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/5b0180e3be682d458ac6d319e4c7b448
Film234 2021/8/12 『キネマの神様』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/1430ea47c71a6a1da4a662ebe7aa8f26
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