我が家からサド湾を挟んでトロイア半島が見える。
大西洋に面して白い砂浜がどこまでも続く美しいビーチ。
サド湾に住み着いているイルカたちも、時々姿を見せる。
ビーチの側には低層や高層のマンションやホテルが建ち、夏の間はイギリスやフランス、ドイツやスウェーデンからのリゾート客が滞在したり、周辺の町や村から人々がフェリーに乗って海水浴に集まって来る。
たくさんの人たちでいっぱいになるが、それでもビーチが広いので、隣の人と鼻を付き合わせることもなく、気持ち良くリラックスできる、とても良い海水浴場だ。
しかもセトゥーバルからフェリーに乗って20分。
ほんのちょっとの船旅を楽しんで、運が良ければイルカウォッチングだって可能だ。
トロイアにいくつか建つアパ―トメントホテルの間に、最近まで3棟の傾いたビルがあった。
地盤のゆるい砂地に高層ビルを建てた結果、建設途中で少しずつ傾いて、まるでピサの斜塔のようになり、そのまま打ち捨てられて廃虚になっていたのだ。
それが2005年9月、3棟のうち二つのビルは全体に爆薬を仕掛けられて、一瞬のうちに粉みじんにされるという、大々的なイベントが催された。
ソクラテス首相がリスボンからヘリコプターで駆けつけ、爆破の様子はTV中継されたほど。
こんなにセトゥーバルが全国的な話題に上ったのは、私が知る限り初めてだった。
傾いたビルのもう一つは、そのまま残されている。
トロイアはカジノを中心にしたリゾート施設に作り変えられる計画だという。
我が家のキッチンと居間からはトロイア半島が自然に目に入ってくるのだが、その後目立った動きはないように思えた。
ところが去年の夏の終わり頃から、傾いたビルの周りにいっぺんに10数本の巨大なクレーンがニョキニョキと出現した。
いよいよ工事が本格的に始まったようだ。
傾いているビルは、私たちが住み始めた頃にはもうそこにあったので、それからでもすでに16年間も放置されていたことになる。
傾きを根本から修正して、しかも長年の傷みが激しいはずの全体をリメイクするのは大変な手間がかかるだろう。
毎日、真っ暗になってもショベルカーなどのヘッドライトがあちこちと砂浜を忙しく動きまわる様子が見えた。
どんな工事をしているのか、なにしろサド湾が間に横たわっているので、遠目にしか判らない。
ビーチの先端がうず高く盛り上がり、数台のショベルカーがひっきりなしに行ったり来たりして整地をしているようだ。
ニョキニョキとクレーンが立ち並ぶトロイア
ついこの間、久しぶりにフェリーに乗ってトロイアに渡った。
船が船着場に近づくにつれ、工事の様子が目の前に現れた。
船着場の周辺にあった広大な砂浜はどこに行ったのか…掻き消えていた。
船着場の前には数階建てのターミナルが出来つつある。
あの残された傾いたビルが船着場のすぐ横にあるのには驚いた。
船着場と傾きビルの間には以前は2百メートル以上の幅のある砂浜があったのに。
以前は、フェリーを降りて桟橋を渡り、右横に入ってしばらく歩くと、傾きビルの前に出た。
そこから砂浜に入り、深い砂に足をとられそうになりながら波打ぎわまで行った。
そのあたりでも海水浴客がたくさんいたのだが、そこはサド川の河口なので、私たちはそこからずんずんと歩いて20分以上かけて、大西洋に面したビーチにたどり着いたものだ。
そのサド川の河口の砂浜はごっそりと取り除かれて、水がたっぷり張ったドックに変身!
すごい工事が進んでいる。
フェリーから降りて、工事真最中のターミナルビルをくぐると、かつて真っ直ぐだった道路は大きく曲り、右も左も掘りくり返されて、あたりはホコリもうもう。
前方からはダンプが次々とやってくる。
突然、私たちのクルマがガッターンとバウンドした。
びっくりして後ろを振り返ると、道路に穴があいていたのだ。
穴はあちこちにできている。
たぶんひっきりなしのダンプの往来で、道路がかなり傷んでいるようだ。
しばらく走るとゴルフ場があり、その先に高級別荘地が以前からあるのだが、ここもどんどん家が建っていて、今も建設中があちこちに見られる。
トロイア半島は近いうちに、大リゾート地帯になりそうだ。
MUZ
2007/02/28
©2007,Mutsuko Takemoto
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(この文は2007年3月号『ポルトガルのえんとつ』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルのえんとつ』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)