今年はどうしたことかセトゥーバルはまったくと言ってよいほど雨が降らない。
元旦に曇っただけで、それ以来毎日の様に晴天が続いている。
ニュースを見ると、リスボン以北では時々雨が降っているそうだが…。
少し前にはスコットランドやデンマークなどで大雨が降り洪水が出た。
大雨をもたらす低気圧が今年はヨーロッパの北の方ばかりを通過しているのがどうも原因らしい。
ポルトガルでも普通は11月ごろから1月ごろまで雨が多く、毎年のようにどこかで洪水の被害が出ていたが、今年は幸いにもそうした話は聞かない。
冬の日々は洗濯物を干しても油断ができないので困る。
朝、良い天気だからと思っていっせいに干すと、いつのまにか真っ黒い雲が現われる。
そうなると私はピーンと緊張の糸を張り、ベランダの床のタイルを一心に見つめている。
雨雲の流れはとても早いので、いつ降り出すか分らないし、いったん降り始めるとバシャーとたたきつけるような雨になる。
やがて、ポツリ、ポツリと大粒の雨が落ちてくる。
一滴、二滴とベランダのレンガタイルに雨粒の大きな染みが現われた!
「それーっ、降り出した~」
一目散に窓に駆け寄り、さっき干したばかりの洗濯物を取り入れるのに必死。
近所のセニョーラたちも「シューバ、シューバ~」(雨、雨だよ~)と隣近所に大声で知らせながら、大慌てで取り込んでいる。
でも雨雲は強風に煽られて散りじりになり、しばらくすると青空が顔を出す。
するとあちこちの家の窓がガラガラと開く音がして、キー、キーッとロープをきしませながらまた洗濯物を干し始める。
そんなことを一日に何度も繰り返し、洗濯物は2日がかりでなんとか乾く。
部屋の隅や風呂場にはうっかりするとカビまで生えてくるので、ひと冬で2回ほどはカビ取りをする必要がある。
冬の日々はなかなか気が抜けない。
ところが今年は雨が降らない!
おかげで洗濯物はカラリと乾くし、私はのんびり日なたぼっこの毎日。
でもポルトガルの北の方では普段は降らない所まで雪が降り、しかもかなり積もったという。
全国的に記録的な低温で、このところ毎日のニュースでトップあつかいである。
セトゥーバルでも、日なたは快適だが、一歩陰に入るとまるで冷蔵庫の中。
リスボンの町を行く人々も厚着をして、首にマフラーを深々と巻いている。
まるで冬のパリの街を歩く服装のようだ。
アレンテージョ地方ではダムの水が減少し、低温と水不足のせいで、子牛や羊に被害が出ている。
去年の夏の猛暑と山火事で、山は丸裸になり、保水力が無くなったのも水不足の原因らしい。
ところがこんなに低温が続いているのに、1月22日のこと、遠くに見える景色の中に薄っすらとピンクの淡い雲を発見した。
昔セトゥーバルの町を取り囲んでいた城壁の一部が今も残っていて、そこがかなり広大なアーモンド畑になっている。
この寒さにめげず、アーモンドの花がいっせいに咲き始めたのだ。
「あっ、プリマヴイラ!春が来た!」
2005/01/25 アーモンドの花 Lagoinhaにて
これは少しピンクが濃い
まるで桜が咲いた様 Palmelaのお城の下
ピラカンサの生垣の向うに咲き誇るアーモンドの大木 Volta da Pedra
アーモンド酒
[Amêndoa]
アーモンドの種から作ったリキュール。そのまま飲むにはちょっと甘すぎるけれど、「ボーロ・デ・レイ」(ドライフルーツやナッツなどがたっぷり入ったお菓子)などに沁みこませて食べるといくらでも入る。アーモンドの香りが溶け込んで豊かな風味、なのに安価なのが嬉しい。眠れない時はそのままグラスでグイグイと。それで私は太る。そういう意味では恐いお酒だ。
2005/01/29 Azeitão 立派な大木が何本もあるアーモンド畑。でも宅地造成中。
アーモンドの花は真っ盛りなのに、毎日空気が冷たい。
モロッコ沖のポルトガル領「マデイラ島」は常夏の島のはずなのに、山にかなりの雪が積もったという。
地元の人は「こんなことは初めて!」と戸惑い、観光客たちは海やプールで使うはずのプラスティックのサーフボードをかかえて、積もった雪の上をスノーボード遊びで大喜び。
奇妙なプリマベイラ(春)がやって来た…。
MUZ
©2005,Mutsuko Takemoto
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(この文は2005年2月号『ポルトガルのえんとつ』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルのえんとつ』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)