風と僕の歩調

釣りが好きで、台所に立つ事が好きで、音楽が好きで、毎日の暮らしの中で感じたことを僕の言葉で綴ります

『柿』の思い出

2011年12月14日 | 回想録
柿の美味しい季節になりまた。軒先では、鳥達の餌になっていますが果物屋さんには見事な柿が今でも並んでいます。
でもね、昔は買うのでなく、もいで食べる果物でした。他にもイチジクとか、ザクロとか、ビワとかね。自然の中、季節と共に豊かに実っていたのです。
広島に住んでた家にはさくらんぼの成る桜の木もありました。話しは脱線するけどさくらんぼを食べるのに二度ほど木から落ちた記憶があります。
危険なおやつの時間だった訳です。

話は戻りますが、久しぶりに早く帰れた本日、中学生の頃の思い出を語ります。
聞いてやってくださいな。

秋の夕焼けに染まった帰り道、友達のTと、軒先や道端になっている柿をおやつ代わりによく食べていました。
しかし、なっている柿すべてが甘い訳ではありません。そこには、とてもとても危険な、そして恐怖のロシアンルーレットのような掟があったのです。つまり、校門を出て柿の実を見つけるたびに公平性を保つ為、順番に毒味をするのです。
渋柿だと正直に口から吐き出してアピールする訳です。
甘い柿に出くわすと、満面の笑顔でピースサインを送り、やっとおやつにありつくのです。その後、犬のマーキングのように記憶しておくわけョ。
まさにフロンティア精神、「柿の実調査」実行部隊なのでした。

ある日の帰り道、その柿の木は、武蔵野線の脇に大きな実をたわわに実らせておりました。形も過去の経験から渋くはなさそう!順番は僕の番でした。

ジャンプして小枝をつかみ色付いた一つをもぎ取ります。見守るTもそいつは旨そうだな~と呟きました。
僕は、学ランの袖で拭きながら、笑顔でがぶりとやりました。
すると、想像していた甘い感覚とは違い、今まで経験した事のない位の強烈な渋みが口いっぱいに広がり舌が麻痺していきました。

その間約一秒、僕は思わずTに背を向け背中を丸めこの地獄の痛みと渋みに耐えたのです。

「オイ、どうなんだょ」と聞いてくるT。

まだ気がついていないようです。
まるで閻魔様に舌を抜かれるほど地獄級の渋みに襲われているのです。
閻魔様に抜かれた舌・・・。
僕は吐き出すのを我慢して、振り向きざま
「今までで超最高」笑顔で叫びました!

Tがもぎ取ってがぶり付くまでの時間がとても長く感じました。
口から吐き出した量は彼のほうが多かったようです。

麻痺した口調で、「だましたな~」に答えて、
「超最高に渋かったって言おうと思ったんだけど舌が麻痺しててさっ~」と言い訳しました。

二人は、しびれの効いた口で罵り合いながら長い影を引いて仲良く帰りました。

追伸:
次の日から二人は一人ずつ「渋柿の木閻魔様」へ仲間を連れていき人身御供としましたとさ

おしまい

コメント (2)
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