朝6時頃に
屋根を打つ大きな雨音で目覚めたが…
今日は土曜日だから早く起きる必要もなく
薄暗い廊下の壁を伝いながらヨロヨロ歩いて
トイレを済ませると再びベッドの中へ…
ほんの少しだけ二度寝をしただろうか?
初孫くんもやって来ないし
雨ならどうせ休足日になるんだと思って
7時過ぎにゆっくり起床
郵便受けの朝刊を取るついでに
玄関を開けて前庭を見渡すと
何と!アラレの降った跡が何ヶ所も…
今シーズン初めて目にした白いモノに
いよいよ本格的に寒い季節が
我が地にもやって来たのだと…
朝刊を手にしながら改めて思い出してみると
6時頃の屋根を叩きつけるあの大きな雨音は
雨じゃなくてアラレだったのかと…
実際に体感気温も思った以上に寒くて
今日こそ休足日にしようと思ったものの…
雨雲レーダーの示す予報は
まるでジジイを走らせるための計らいなのか
ちょうど走る時間帯だけは降らない見込み
何とか走れそうだと分かってて走らないのは
アラ古希ジジイのポリシーに反すると…
あと何年走れるのかわからないけど
走れるうちは何が何でも走っておかないと
必ず後悔することになるから…
何しろ
いつ走れなくなるのかわからない
そんな年頃なんだから…
そう思いながらジョグの準備を…
今日はこの子をお供にして…
今日の勤労感謝の日はとある事情があって
いつもとは違うコースを走ろうと…
長らく走ってなかった
いつものコースと反対側のコース
以前は抱き合う子の実家があったから
走りたい気持ちもあったけれど…
もういまは彼女も結婚しちまっていないし
何より小刻みなアップダウンが多いのと
街中なので曲がってばかりのコースで…
それでも懐かしい想いを感じながら
そのコースを走ってみようと…
だけど
走り出してからちょうど1キロあたりで
何と!アラレが降って来て…
やむを得ずどこかの軒下を借りて
しばしの休憩
アラレって痛いんだよなぁ
休みながらスマホの雨雲レーダーを覗くと
すぐにでも止みそうな気配だったので
意を決してジョグ続行…
アラレなんかに負けてられない
そう思いながら走り出したものの
長らく走ってなかったので
どこの地点で折り返せば
10キロくらいになるのかわからないまま…
5キロ手前の大きな交差点に辿り着き
ここで折り返した方が良いのか
もう少し走った方が良いのか思い当たらず…
しょうがなく
もう少しだけ走ろうと思って
青信号になる直前に横断歩道を渡ったとき…
対向車線に停まってた車の助手席窓が開き
目鼻立ちの整った美人?ドライバーが
大きく手を振って来た
え?だれ?と思いながら
スピードを緩め覗き込んだものの
目の悪いジジイにはハッキリ確認できず…
だけどそれなりに見当はついて…
おそらく
40代後半の派手女子の彼女だと…
今は割とおとなしくなったけど
若い頃は派手なファッションで
なおかつ美人系だったからかなり目立ってて
何かと僕と因縁めいたこともいろいろと…
といっても
僕と付き合うことはなかったけど…
というのも
10年以上も前に別れた彼女の
友人だったこともあり…
いつだったか
まったく別の女性知人から聞いたのだが
別れた彼女が僕と付き合ってることを
その派手女子彼女が言っているよと
あるとき忠言され…
忠言された女性知人には
そんなことはないとすぐさま否定したけど…
現場を見たこともないのに
別れた彼女と僕の関係を見抜いた
派手女子彼女の心眼には
心から感服したものだ
おそらく僕からじゃなくて
別れた彼女の態度から感じ取ったものだとは
思うけれど…
わかる人には
どんな些細なことでもピンと来るのだろう
美人系だし
いろいろと経験も積んでるだろうから
男女のことに関しては
何かと人よりも詳しいんだろうなぁきっと…
そんな派手女子彼女も最初の結婚に破れ
相談に乗ったこともあったけど
誰かと再婚した後からは子どもの影響なのか
いつの間にか僕の知らないうちに
ランナー女子になっちまってて…
何度か大会で顔を合わせることもあって…
もちろん顔を合わせたところで
そんな昔の話なんかするわけじゃないけど…
派手女子彼女に会ったり顔を見るたびに
僕がそんな昔の過去を思い出すように
彼女もまた別れた彼女と僕との不埒な間柄に
思いを馳せてるのかもしれない
まぁ確証は掴まれてないはずだから
想像の世界の話でしかないだろうけど…
でも
女のカンって鋭いからなぁ
確信してるのかもしれないなぁ
そんな派手女子彼女は
ずっと僕に手を振り続けたまま
交差点を曲がって走り去っていった
結局今日はいつもと違うコース
迷いながら右往左往の11キロ
雨宿りもあったから…
こんなもんだろう?
ジョグのコースを変えただけで
派手女子彼女とすれ違うという
思いもかけなかった出来事
自分の犯した過去のアヤマチ
もう免罪符は貰えたと思ってても
心の中にずっと燻っていて…
あらためて
過去は消えないんだとつくづく…
まぁ仕方ないさ
そんな過去のアヤマチの一つや二つ
誰にだって…
それもみんな
死んじまえば何事もなかったように
全て忘れ去られて行くんだろうから…
取るに足らない
つまらないジジイのアヤマチを悔やむより
今はこの歳になってもまだ走れることに
心から感謝しながら走り続けていくだけさ
それが正しいのか正しくないのか
わかるはずもないけど…
たとえ正しくなかったとしても
今の自分にできることはそれだけだと…
今の自分には…
だから…