35.
逆に、放射線治療に関して「目からウロコ」の情報に触れることもあった。2007年2月に開催された「医療革命を目指して ~免疫研究の最前線~」というシンポジウムの中で、パネリストの一人である鎌田實氏*が自分の知り合いである放射線医の言葉を引用したくだりだ。「がん細胞に放射線を当てるのは、自己の細胞のようにだましながら増殖するがん細胞が非自己だと、リンパ球などに認識させるため。放射線治療はがん細胞にダメージを与えるのではなく、がん細胞が非自己だと標識している」 非自己である異物を攻撃するというリンパ球の性質を利用した治療だ、ということだろう。また、普通の細胞より増殖が速いというがん細胞の性質を逆手にとった治療だ、とも言えるかもしれない。
こんなふうにあちこちから情報を得るうちに浮かんだ疑問は、放射線治療以外についても挙げられる。
手術前、乳頭を残すか否かという選択に迫られたとき、命に代えられないから怪しい場合はさっさと取ってしまってほしいと思っていたものだが、それは、乳房を温存するか否か、リンパ節を切除するか否かが術後のQOLを左右するという事実を、書物の通り一遍の記述でしか知らなかったからだ。まるで実感が伴っていなかったし、Y先生からはそんな説明はなかったのだ。でも、温存できて本当によかったと実感できたのは、やはり術後何ヶ月もしてから読んだ新聞記事によってだった。リンパ節を切除することによって起こるリンパ浮腫(:むくみ)が術後のQOLを著しく下げることが、そこではいろいろな実例をもとに説明されていた。あのとき温存できていなかったら…今考えるとぞっとしてしまう。これについても、Y先生はもっと丁寧に説明すべきだったのではないだろうか?
専門医制度の問題点にも、私の入会している生協の発行物の中でぶつかった。学会ごとに認定の基準が違うという事実は、手術前に「日本専門医制認定機構」のHP*を読んで知っていたが、「基準が違うため、科によっては、学会に入会することで、ほとんどの学会員が専門医の資格を取得している場合もある」という事実は知らなかった。根拠のない邪推は控えるべきだが、放射線科などマイナーな科は、ひょっとするとこの例に洩れないのかもしれない。「専門医資格を持っていた医師が医療ミスを犯したというニュースも報告されている」ともある。専門医だからといって、安易に安心できるわけではなさそうだ。
最後に、私が脳天をかち割られたようになった記述を紹介する。免疫学の本にあったこの言葉には、息を飲むしかなかった。「がんの三大治療(手術・放射線療法・化学療法)はしない方がよい」
この記述の主は、免疫学についての著書が大量にある安保徹氏であり、奇遇にも、私の友人のD君がそのもとで研修した経験があるという師でもあった。―ガビーーーーーーーン! なんだって~~? 手術も放射線療法もやっちゃったよ~~~………―
そして、術後何ヶ月も経ったその頃、入院中から始まった夜中に2度も3度もトイレに起きる体調は、頑固にそのまま続いていた…。
* http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8E%8C%E7%94%B0%E5%AF%A6 ちなみに、鎌田氏は私の高校の先輩でもあります。
* http://www.japan-senmon-i.jp/
参考(過去記事):http://blog.goo.ne.jp/takuetsu1958/e/8b3a4fe798f12a09739f2442492eb402
-------------- notice --------------
これにて「第5章 放射線治療」が終わりです。ご愛読に心から感謝しております。
次回より「第6章 ホルモン療法」をお届けします。
引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
逆に、放射線治療に関して「目からウロコ」の情報に触れることもあった。2007年2月に開催された「医療革命を目指して ~免疫研究の最前線~」というシンポジウムの中で、パネリストの一人である鎌田實氏*が自分の知り合いである放射線医の言葉を引用したくだりだ。「がん細胞に放射線を当てるのは、自己の細胞のようにだましながら増殖するがん細胞が非自己だと、リンパ球などに認識させるため。放射線治療はがん細胞にダメージを与えるのではなく、がん細胞が非自己だと標識している」 非自己である異物を攻撃するというリンパ球の性質を利用した治療だ、ということだろう。また、普通の細胞より増殖が速いというがん細胞の性質を逆手にとった治療だ、とも言えるかもしれない。
こんなふうにあちこちから情報を得るうちに浮かんだ疑問は、放射線治療以外についても挙げられる。
手術前、乳頭を残すか否かという選択に迫られたとき、命に代えられないから怪しい場合はさっさと取ってしまってほしいと思っていたものだが、それは、乳房を温存するか否か、リンパ節を切除するか否かが術後のQOLを左右するという事実を、書物の通り一遍の記述でしか知らなかったからだ。まるで実感が伴っていなかったし、Y先生からはそんな説明はなかったのだ。でも、温存できて本当によかったと実感できたのは、やはり術後何ヶ月もしてから読んだ新聞記事によってだった。リンパ節を切除することによって起こるリンパ浮腫(:むくみ)が術後のQOLを著しく下げることが、そこではいろいろな実例をもとに説明されていた。あのとき温存できていなかったら…今考えるとぞっとしてしまう。これについても、Y先生はもっと丁寧に説明すべきだったのではないだろうか?
専門医制度の問題点にも、私の入会している生協の発行物の中でぶつかった。学会ごとに認定の基準が違うという事実は、手術前に「日本専門医制認定機構」のHP*を読んで知っていたが、「基準が違うため、科によっては、学会に入会することで、ほとんどの学会員が専門医の資格を取得している場合もある」という事実は知らなかった。根拠のない邪推は控えるべきだが、放射線科などマイナーな科は、ひょっとするとこの例に洩れないのかもしれない。「専門医資格を持っていた医師が医療ミスを犯したというニュースも報告されている」ともある。専門医だからといって、安易に安心できるわけではなさそうだ。
最後に、私が脳天をかち割られたようになった記述を紹介する。免疫学の本にあったこの言葉には、息を飲むしかなかった。「がんの三大治療(手術・放射線療法・化学療法)はしない方がよい」
この記述の主は、免疫学についての著書が大量にある安保徹氏であり、奇遇にも、私の友人のD君がそのもとで研修した経験があるという師でもあった。―ガビーーーーーーーン! なんだって~~? 手術も放射線療法もやっちゃったよ~~~………―
そして、術後何ヶ月も経ったその頃、入院中から始まった夜中に2度も3度もトイレに起きる体調は、頑固にそのまま続いていた…。
* http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8E%8C%E7%94%B0%E5%AF%A6 ちなみに、鎌田氏は私の高校の先輩でもあります。
* http://www.japan-senmon-i.jp/
参考(過去記事):http://blog.goo.ne.jp/takuetsu1958/e/8b3a4fe798f12a09739f2442492eb402
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これにて「第5章 放射線治療」が終わりです。ご愛読に心から感謝しております。
次回より「第6章 ホルモン療法」をお届けします。
引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。