「不審者だ」
ゴミ箱で指され、その礼儀のなさにスワンは肚を立てた。が、それどころではないことにスワンは気付いた。
騒ぎを見咎めた者、聞きつけた者がスワンたちを遠巻きに取り囲み、そのうちの何人かがカメラ機能搭載の携帯電話を手にし、自身に向けシャッターを切っているのを目にし、スワンは泣きたくなった。
「キグナス、お前…」
スワンは氷河を睨み据えた。
スワンは白鳥星座の聖闘士に何度も窮地に陥れられ、小バカにされてきた。
新たに生を受けた氷河は失った力の分、性格の悪さに磨きがかかっていた。
「ねー、ねぇー、大丈夫? 警察呼んじゃう?」
新月の闇の中、小動物の微かな動きさえ聞き分ける鍛え抜かれた暗黒聖闘士の聴覚は『警察』と言う言葉を、確かに捕らえていた。
『警察』などに通報されたら氷河の『イタズラ』が知れ渡る。
名門校なだけに警察沙汰は御法度(ごはっと)なはずだ。
そこまで考え、自身を窮地に落とし込んだ諸悪の根源を、なおも案じねばならない己の立場がスワンには悲しくなった。
「なんの騒ぎだ」
生徒たちの背後から現れた一輝に氷河は眉を寄せた。
一輝は氷河のボディ・ガードとして顔が知れ渡っている。
「授業が終わったらすぐに来るよう言っておいたはずだな」
一輝が氷河の目の前に立った。
「オレは、用事があると言ったはずだ」
氷河は拳を握り締めた。力では、一輝には適わない。
一輝が姿を現した以上、スワンを不審者に仕立て上げることは不可能だ。
「カラオケは、用事とはいわんぞ」
「うるさい、オレは行くからな」
有無を言わさぬ口調に、氷河の反感に火がついた。
「それで、スワンを困らせているのか」
一輝が一歩踏み出し、その気に圧されるよう、氷河は一歩退いた。
だが一輝の踏み込みのほうが深く、氷河は難なく両脇に掌を入られ持ち上げられていた。
「バカッ! なにを――」
浮遊感に、氷河はもがいた。
「ほら、氷河ー高いたかいだ」
幼児をあやすように身体を揺すられ、氷河の頬に朱が射していた。
「続く」
ゴミ箱で指され、その礼儀のなさにスワンは肚を立てた。が、それどころではないことにスワンは気付いた。
騒ぎを見咎めた者、聞きつけた者がスワンたちを遠巻きに取り囲み、そのうちの何人かがカメラ機能搭載の携帯電話を手にし、自身に向けシャッターを切っているのを目にし、スワンは泣きたくなった。
「キグナス、お前…」
スワンは氷河を睨み据えた。
スワンは白鳥星座の聖闘士に何度も窮地に陥れられ、小バカにされてきた。
新たに生を受けた氷河は失った力の分、性格の悪さに磨きがかかっていた。
「ねー、ねぇー、大丈夫? 警察呼んじゃう?」
新月の闇の中、小動物の微かな動きさえ聞き分ける鍛え抜かれた暗黒聖闘士の聴覚は『警察』と言う言葉を、確かに捕らえていた。
『警察』などに通報されたら氷河の『イタズラ』が知れ渡る。
名門校なだけに警察沙汰は御法度(ごはっと)なはずだ。
そこまで考え、自身を窮地に落とし込んだ諸悪の根源を、なおも案じねばならない己の立場がスワンには悲しくなった。
「なんの騒ぎだ」
生徒たちの背後から現れた一輝に氷河は眉を寄せた。
一輝は氷河のボディ・ガードとして顔が知れ渡っている。
「授業が終わったらすぐに来るよう言っておいたはずだな」
一輝が氷河の目の前に立った。
「オレは、用事があると言ったはずだ」
氷河は拳を握り締めた。力では、一輝には適わない。
一輝が姿を現した以上、スワンを不審者に仕立て上げることは不可能だ。
「カラオケは、用事とはいわんぞ」
「うるさい、オレは行くからな」
有無を言わさぬ口調に、氷河の反感に火がついた。
「それで、スワンを困らせているのか」
一輝が一歩踏み出し、その気に圧されるよう、氷河は一歩退いた。
だが一輝の踏み込みのほうが深く、氷河は難なく両脇に掌を入られ持ち上げられていた。
「バカッ! なにを――」
浮遊感に、氷河はもがいた。
「ほら、氷河ー高いたかいだ」
幼児をあやすように身体を揺すられ、氷河の頬に朱が射していた。
「続く」
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